7:ゆるぎないモノ
…………………。
…そう。
届かせればいい…。
ただ腕を伸ばせばいいんだ。
…躊躇うことなんか無い。
宇宙彼方に届くわけがないだろう?
…わかっている。
それでも俺は届かせて見せる…。
いま俺と世界は…感じている。
俺は世界の遠い存在を。
世界は俺の無力さを。
…でも俺は超える。
背伸びをして、歯を食いしばって、顔を赤くして…。
馬鹿だって何だっていい…。
俺には、俺たちには世界に無いものを持っている。
世界が知らない…ゆるぎないモノを。
「今まで俺たちは希望にすがりつき、世界を受けいれていなかった。
傷ついた自分を見るのが恐くて、悲しんだ互いの姿を見るのが嫌だった…。」
「…、………。」
「でも、傷ついて悲しまないと超えられないんだよ…。
本当のアイツに会うには…な。」
「…、…。」
「間違ってたんだ。
デタラメな希望よりも、ふざけた世界よりも、…大切なモノがある。」
「…………………。」
「俺たちとアイツの『約束』…。
これだけはどんなものより…大切だ。」
「…君主………。」
「…だから、もう俺は進むぞ。」
「…、どこに行くの………。」
「…病室だ。」
「…………………。」
「…最後に一ついいか?長原…。」
「…ええ。」
「園歌ちゃんに、アイツの首飾りを渡したんだよな…?」
「………、…ええ。」
「…やっぱり、長原も俺と同じ事を想っていたんだな…。」
「…私も……、そうかも知れない…わね…。」
「…綺麗だな。
夜風はもう消えたな…。」
「…そうね。」
「…っ、あぁ~~~っ!!!」
「そんなに背骨が鳴るなんてよっぽど緊張してたのね…。」
「…かも…な。
じゃ、俺は行くぞ…。」
「…待って!
私も伸ばしてみるわ………。」
親友も届きもしない月に向けて腕を伸ばしていた
いっぱいに伸ばされたその両腕の間から
輝く月にいつまでも瞳を預ける彼女が見えた