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この世界を壊します〜魔王に転生したので配下を揃えて国作りをします〜  作者: JUJU


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8/50

新たな力と、ネザリアの第一陣

第8話です。

宜しくお願いします。

夜明け前の冷たい空気が、住処の中にもじわりと染み込んでいた。


 黒い岩壁をくり抜いた洞窟の天井からは、焚き火の煙が細い筋となって昇っている。

 魔族たちはそれぞれの持ち場で動き始め、武具を整え、鍛錬の準備をしていた。


 その一角で、マランはひとり静かに目を閉じていた。


(……胸の奥が、やけにうるさいな)


 心核のあたりが、昨夜からずっとざわついている。


 嫌な感覚ではない。むしろ逆だ。

 何かが“増えている”、あるいは“育っている”ような、不思議な充足感。


(ザナドが毒を治して、魔物も倒した。

 あいつが得た経験と力が、こっちにも流れ込んでる感じがする……)


 マランは自分のスキルを思い返す。


魂響共鳴ソウル・レゾナンス


 ――自分に“繋がった”仲間が得た経験値やスキルの一部を、二倍の量で共有する能力。


 これまでは、ぼんやりとした“手応え”程度だった。

 だが昨夜、ザナドが命懸けで治療を行った時――胸の奥で、確かに何かが弾けた感覚があった。


(あれが引き金か……)


 心核が強く脈打つ。


 次の瞬間、マランの視界に、黒い紋様のような“文字”が浮かび上がった。


 ――新たなスキルが覚醒しました。

 ――スキル名:《家臣共鳴ファミリア


「……ほう」


 マランは目を開け、小さく息を吐いた。


「新しい力、ってわけか」


 


 洞窟の外、鍛錬場のような広場では、ザナドがマニアに囲まれていた。


「ねぇねぇ、もう本当に大丈夫だから! 見てて、ほら!」


 マニアが軽やかに跳び上がり、岩壁を蹴ってくるりと一回転する。

 脚に魔力を纏わせ、空中で軌道を変えるその動きは、本人が言う通り“元気そのもの”だった。


「《魔式・双影脚》ってこうやって使うの! えいっ!」


 最後に地面へ着地し、軽く砂埃が舞う。


「……動きは問題なさそうですね。無茶はしなければ、ですが」


 ザナドが苦笑すると、マニアは満足そうに胸を張った。


「ザナドが治してくれたんだから平気だよ!」


 その様子を少し離れたところから見ていたマランに、ザナドが気づいて歩み寄る。


「おはようございます、マラン様」


「ああ。調子はどうだ?」


「少し魔力が抜けた感じはありますが、問題ありません」


「そうか」


 短く答えたあと、マランはザナドをじっと見つめる。


「……ひとつ、確かめたいことがある」


「はい?」


 


 少し人目を避けて、岩陰に移動する。


 マランは腕を組み、低い声で言った。


「ザナド。お前、自分の“力の出方”に違和感はないか?」


「違和感、ですか?」


「この世界には塔があり、魔族や他種族を弱らせている。

 ……それにしては、お前の力の通りが良すぎる」


 ザナドは目を瞬いた。


「それは……」


 言われてみれば、と、ザナドも内心で思い返す。


 人族の狩猟隊に囲まれ、瀕死の状態で倒れていたとき――

 確かに“力が抜ける感覚”があった。


 だが、悪魔として再生成されてからはどうか。


(……塔の波動を感じていない?)


「マラン様は……?」


「俺もだ。

 この世界に生まれ落ちてから、力が抑えつけられている感じがまるでない」


 塔の存在は視認している。

 魔族たちも、その影響で苦しんでいると語った。


 それなのに――


「俺もお前も、塔の弱体化をほとんど受けていない。

 ……そう考えるのが自然だな」


「つまり……」


 ザナドは息を呑む。


「“塔にとって想定外の存在”である、ということでしょうか」


「かもしれない」


 マランは曖昧に笑う。


「前の世界のこともあるしな。

 俺は“こちらの世界が最初から持っていたコマ”じゃない。

 転生者だ。システムの外側から降ってきた異物……」


 そこまで言って、首を振る。


「とはいえ、今は推測の域を出ない。

 重要なのは――“弱体化されない力を、どう使うか”だ」


 マランの視界に、再び黒い紋様が浮かぶ。


家臣共鳴ファミリア


「……そのためのスキルが、ひとつ増えた」


 


 住処の中央広場。


 フェローが腕を組んで立ち、他の魔族たちが輪になって集まっていた。


「それで……何だ、その“話”というのは」


 昨日とはまた違う空気がそこにあった。

 娘を救われた恩義ゆえの敬意と、族長としての慎重さが混ざった、複雑な空気。


 マランは一歩前へ進み出る。


「単刀直入に言う。

 ――俺とザナドは、おそらく塔の弱体化をほとんど受けていない」


 ざわ、と周囲が揺れる。


「馬鹿な……」

「塔の波動は世界中に満ちているんだぞ……?」

「いくら魔王でも、それは……」


 フェローも目を細めた。


「根拠はあるのか?」


「体感だがな。

 この世界に来てから、俺は一度も力が抑えられた感覚を覚えたことがない。

 ザナドも同じだ」


 ザナドも頷く。


「私が魔族だった頃、塔の近くでは身体が重く感じました。

 ですが……悪魔として再び生まれてからは、その感覚がありません」


「…………」


 フェローは黙り込み、しばらく考え込んだ。


 やがて、低く呟く。


「……もしそれが本当なら――」


 その声に、住処の魔族たちの視線が集まる。


「塔による枷を受けない“核”がある、ということだ。

 魔族が再び世界へ牙を剥く可能性が……わずかだが、見える」


 マニアがぱっと顔を輝かせた。


「それって……塔を壊せるってこと……!?」


「まだ断言はできない」


 マランは肩をすくめる。


「だが、希望はある。

 それをさらに現実的なものにするための力が――これだ」


 マランの心核が静かに輝く。


「《家臣共鳴ファミリア》。

 ――俺が“登録”した者は、塔の弱体化や呪いの影響を受けなくなる」


「……なんだと?」


 フェローの声が低く、重く響く。


「そんなバカな能力が……」


「正式な仕様はこんなところだ」


 マランは指を立て、淡々と説明する。


「対象者は、塔からの魔力抑制・弱体化・呪詛系統の影響を受けなくなる。

 今のところ登録できる人数は二人までだが、俺が成長すれば増える可能性がある」


 住処の魔族たちは言葉を失っていた。


 それは“夢物語”に近い話だ。

 だが、目の前の男は実際に悪魔を生み、娘の命を救う力を持ち、塔の影響を感じていないと自ら言う魔王だ。


 すぐに、完全な否定はできない。


 マニアが一歩前へ出る。


「それって……もしかして、私たちにも――?」


「そのつもりだ」


 マランは即答した。


「ネザリアの第一の民として、塔を壊す最初の戦力になってもらう。

 フェロー。マニア。

 お前たちを、《家臣共鳴ファミリア》に登録する」


 フェローはしばし沈黙した後、静かに頷いた。


「……娘の命を預けた相手だ。

 今さら怖じ気づく理由はない。

 やってみろ、魔王」


「はいっ! 私もお願いします!」


 マニアは満面の笑みで胸を張る。


 マランは二人に向き直り、右手を差し出した。


「――契約だ」


 マニアが最初にその手を取り、フェローもためらいなく重ねる。


 次の瞬間、黒い魔法陣が足元に展開した。


「《家臣共鳴ファミリア》」


 


 黒い紋様が、フェローとマニアの胸元に浮かび上がる。


 それは一瞬だけ燃えるように輝き――すぐに皮膚の内側へ沈んだ。


「っ……!」


 フェローが歯を食いしばる。


 身体の奥底から、ドクン、と心核が強く脈打つ。


 塔によって長年押さえつけられていた何かが、外れていく感覚。

 抑圧された魔力が、堰を切ったように解き放たれていく。


「……ぬおおおお……!」


 フェローが拳を握りしめると、岩のような筋肉がさらに膨れ上がった。

 地面に軽く足を踏み込むだけで、周囲の小石が跳ねる。


「この感覚……! 力が……戻ってくる……!

 いや、あの頃よりも――さらに……!」


 マニアも息を呑み、両手を握り開きする。


「な、何これ……! 身体が軽い……!

 魔力が全身を巡ってる感じがする……!」


 脚に意識を集中すると、自然と魔力が集まる。

 《魔式・双影脚》を使わずとも、走り出したくなるような高揚感。


 周囲の魔族たちは息を呑むことしかできなかった。


「塔の呪縛が……消えた……?」

「本当に……弱体化を受けていないのか……!?」

「これが……魔王の力……!」


 マランは静かに様子を見てから、短く言った。


「どうやら、成功だな」


 ザナドが隣で感嘆の息を漏らす。


「塔の弱体化を受けない、“本来の魔族の力”……。

 これなら――」


「ああ」


 マランは遠く、地平線の向こうにそびえる塔の幻影を思い浮かべる。


「このメンバーなら――最初の一本くらいは、折れるかもしれない」


 だが、と続ける。


「念には念を、だな」


「……と、言いますと?」


 ザナドが首をかしげる。


 マランは懐から、小さな黒い球体を取り出した。


 それは、どこか脈打っているように見える。


「覚えているか、ザナド。

 お前が初めて新しい力を見せた時に倒した、あの魔物だ」


「ガル・クローラーの……心核……」


 ザナドは息を呑む。


 住処の魔族たちも、ただならぬ気配を感じ取り、ざわめいた。


 マランは球体を軽く放り上げ、掌で受け止める。


「仲間は多い方がいい。

 塔を壊す初陣だ。派手に行こうじゃないか」


 心核を地面へ置き、ゆっくりと手をかざす。


「――《悪魔生成デモン・ジェネシス》」


 黒と紅の魔力が、地面を走った。


 洞窟の床一面に魔法陣が広がり、

 住処全体が低く唸るように震え始める。


「……っ、これは……!」


「また、あの時の……!」


 ザナドは、かつて自らが“贄”となって悪魔として生まれ変わった瞬間を思い出す。


 だが今回は違う。


 贄になるのは自分ではない。

 魔王の手によって、新たな“同胞”が産み落とされようとしていた。


 暗い光が、魔法陣の中心に集束していく。


意外と進むの速い感じしますね。

テンポ感的に皆さまはどう思いますか?

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