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この世界を壊します〜魔王に転生したので配下を揃えて国作りをします〜  作者: JUJU


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癒しの涙と、揺れる魔族の誇り

第7話です。宜しくお願いします。

荒れ地を越えた先、黒い岩壁を削り出すようにして作られた洞窟群が見えてきた。

 燻った松明の光が岩肌を照らし、武骨でありながらどこか整然とした雰囲気を帯びている。


 ここが――魔族の住処。


 ザナドが懐かしそうに呟く。


「……変わってませんね。

 誇り高い魔族らしい、厳しくも温かい場所です」


 住処の入口には数名の魔族が立っており、マランとザナドを見るや警戒の眼差しを向けてくる。

 しかし攻撃してくる様子はない。魔族特有の“まず筋を通す”気質ゆえだ。


 ザナドがかすかに頭を下げて挨拶しながら奥へ進んでいく。


「無礼を承知で、通らせていただきます。急ぎの用件がありまして」


 住人たちは目を細めながらも、道を開いた。


 


 


 


 奥へ進むと、ひとつの部屋の前に魔族たちが集まり、沈痛な空気を漂わせていた。

 その中心――若い少女が布の上に寝かされている。


 黒髪のポニーテール。

 可愛らしい顔立ちだが、表情は苦しみに歪み、呼吸も荒い。


 ザナドが駆け寄って膝をついた。


「――これは……!」


 少女の腕から胸にかけて、黒紫色の斑点が広がっている。


 ザナドは眼を細め、右目を光らせる。


「《右眼診断アナライズ・オクルス》」


 光が少女の身体の状態を読み取り、ザナドの脳に情報が流れ込む。


「……《腐蝕胞子毒》……!

 “黒斑キノコ”の胞子が体内に……このままでは内臓が腐り始めます!」


 その言葉に、周囲の魔族たちがざわついた。


「黒斑キノコの毒だと!?」

「そんな……あれは致死毒の中でも最悪の部類……!」

「もう助からん……!」


 ザナドは迷わない。すぐに少女の手を取り、魔力を集めようとする。


「マラン様、治療します!」


 だが――


「待てッ!!」


 数名の魔族が前に立ちふさがった。


「外の者に触らせるな!」

「毒の種類すら知らぬ者が勝手に治療など――!」

「まして悪魔の力など信用できん!」


 ザナドは黙って少女の状態を見続ける。焦りを隠しながら。


 そのとき――


「……どけ」


 低く、地を揺らすような声が響いた。


 人垣が割れるようにして、ひときわ大柄な魔族の男が歩み出る。


 肩幅は岩のように広く、腕は丸太のように太く、筋肉の密度が常識外れ。

 険しい顔をしているが、娘を見つめる眼は痛々しいほどに揺れている。


 族長――フェロー。


「……お前。娘を……治せるのか?」


 声は震えていた。


 ザナドは真っすぐにフェローの目を見る。


「……はい。治せます。

 ですが、急がなければ、本当に手遅れになります」


 フェローはしばらくザナドの瞳を睨みつけた。

 何度も喉が上下する。族長としての誇りと、父としての焦りがせめぎ合っている。


 やがて――


「…………通れ」


 その一言で、魔族たちは驚き、道を開く。


 ザナドはすぐに少女――マニアのそばに膝をついた。


「はじめます」


 左目から、一粒の涙がこぼれ落ちる。


「《左涙浄化クリアズ・ティア》」


 涙が白い光を帯び、マニアの肌に染み込んでいく。

 黒紫の斑点が、ゆっくりと薄れていった。


「……毒が……消えていく……?」


「こんな治療、見たことが……!」


 しかし、毒が消えても体内の損傷は深い。


 ザナドは次の術を使うために息を整え、腕の紋章を光らせた。


「《再生奇跡リジェネ・ミラージュ》!」


 赤黒い魔力がマニアの体に染み込み、

 傷ついた臓器や細胞が再生していく。


 汗を垂らしながら、ザナドは全力で魔力を送り続ける。


 やがて――


 マニアの呼吸が穏やかに戻った。


 ザナドは力尽きるように床へ手をついた。


「……終わりました。もう、安心です」


 その瞬間。


 フェローが娘の体を抱きしめ、喉を震わせながら呟いた。


「……息が……戻った……!」


 住処中が驚きと感動に包まれる。


「……本当に治った……!」

「す、すごい……悪魔の涙が……癒しに……?」

「ザナドという青年、只者ではない……!」


 フェローは静かに立ち上がり、マランとザナドの前に膝をつく。


「……娘の命を救ってくれた。

 族長として……いや、父として……礼を言う」


 住民たちも頭を下げる。


「ありがとう……ありがとう……!」


 空気が一気に和んだ。


 



 


 簡単な食事が振る舞われ、マランとザナドは自己紹介を済ませた。

 フェローや数名の魔族も名乗り、場は和やかに進む。


 だが――その和やかさを破るように、マランは口を開いた。


「……一つ、話がある」


 住処の魔族たちが静まり返る。


「俺は――この世界を壊す」


 フェローがゆっくりと顔を上げた。


「……どういう意味だ、魔王よ」


 マランは瞳を細める。


「人族が塔を使って他種族を弱体化し、奴隷のように扱っている。

 この世界の構造そのものが気に入らない」


 一息置き――


「だから国を興す。

 ネザリアという国を作り、

 ――八本の塔を全部ぶっ壊す」


 住処が凍りついた。


「……塔を? 正気か?」

「人族への反乱など自殺行為だ!」

「魔族は……今や本来の半分の力すら出せん!」

「不可能だ……!」


 フェローも低く唸った。


「……魔王よ。

 お前の気持ちは分かる。

 だが現実を見ろ。我らは“翼を折られた鳥”だ。

 今の魔族に、人族へ刃向かう力など……ない」


 マランは表情ひとつ動かさない。


「……そうか」


「本来なら……ここで帰ってもらうべきだ。

 だが、娘を救ってくれた恩は偽れない。

 今日は泊まっていってくれ」


 住民たちもうつむき、重い空気が場を包む。


 




 


 夜。

 静けさの中で、マニアがふらりと目を覚ました。


「……ん……? あれ……?」


 フェローが抱きしめる。


「マニア……よかった……!」


「お父さん……苦しかったけど……今は大丈夫……」


 ザナドを見る。


「……助けてくれたんだよね……? ありがとう!」


 ザナドが照れながら頷く。


 そのとき、マニアは住処全体を見回し、フェローに向き直った。


「ねぇお父さん。

 私……この人たちの“国”、いいと思う」


 静まり返る住処。


「魔族はいつも隠れて逃げて……

 塔に力を奪われて……

 そんなの、もう嫌だよ」


「……マニア……」


「もっと強くなりたい。

 もっと広い世界を見たい。

 そのためなら――国だって作っていい!」


 フェローは娘を見つめる。

 族長としての責任と、父としての愛が胸でぶつかり合う。


 そして――


「…………わかった」


 深く息を吸い、拳を握りしめ、マランの前に立つ。


「魔王よ。

 ……族長としては悩む。

 だが、父としては……娘の願いを無視できん。


 ――ネザリアの民となろう」


 住処の魔族たちも次々と膝をつく。


「族長が従うなら……!」

「我らも共に立とう!」

「塔を壊す……その夢、賭けてみたい!」


 マランは静かに頷き、口角を上げた。


「――歓迎する。

 ここからが……ネザリアの始まりだ」


 ザナドの胸にも熱いものが込み上げる。


 マニアが嬉しそうに笑った。


「これからよろしくね、マラン様! ザナド!」


 フェローは腕を組み、低く唸る。


「……言っておくが、娘を泣かせたら許さんぞ、魔王」


「気をつけるよ」


 マランは肩をすくめて笑った。


 


 こうして――

 ネザリアの第一の民が誕生した。


 魔王マランの世界征服は、静かに、しかし確実にその歩みを始めた。



---


この7話意外と考えるのに時間かかりました…

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