救出の灯火、地下帝国に届く
第50話です。宜しくお願い致します。
純血騎士団第八席・バルド=カイゼルは、最後の悪あがきのように《脱出の魔石》を砕き、闇の向こうへと消え去った。
残されたのは――地鳴りのような静寂。
血と土と焦げた匂いが漂う、地中族の国サブマリアの廃墟。
だが、その静寂の奥にあるのは“絶望”ではなかった。
ゆっくりと、沸き上がるような安堵だった。
「や……やった……のか……?」
「まさか……あの純血騎士団を……!」
「助かった……俺たち……本当に……助かったのか……!」
倒れていた地中族たちが、涙をこぼしながら顔を上げる。
その中心で、ジバンは震える声で呟いた。
「マラン様……ありがとうございます……! あなた方が来なければ……サブマリアは、本当に……」
ジバンの瞳には涙が浮かび、声は震え、土の上に落ちた滴がじんわりと広がる。
――ザナド、地中族を救う
「大丈夫だ……今、治療を施す……!」
ザナドはひざまずき、次々と倒れている地中族たちへ《影涙鞭》を展開する。
黒い鞭が触れた傷口はみるみるうちに塞がり、ひび割れた皮膚に生気が戻っていく。
「う、動ける……!?」
「ザナド殿……! 本当に……ありがとう……!」
「礼はいい……今は生きることだけを考えろ……」
ザナドは懸命だ。
戦闘後にも関わらず、痛みに顔を歪める者へ、泣く子供へ、全てへ手を差し伸べ続けている。
マランはその姿を見つめながら、小さく呟いた。
「……頼もしいな、ザナド。」
――数分前
「ジヌシ王を探せ!」
「アークレイド、任せたぞ……!」
「承知しました、マラン様。」
アークレイドは懐から一つの魔石を取り出す。
エラルドが調整した【探知の魔石】だ。
本来は半径100メートルしか反応しないはずのそれは、エラルドのスキル「魔晶極解」により極限まで能力を引き上げられた魔石。
「……10キロ先まで探知可能。やはり、エラルド殿は天才ですね。」
魔石が淡く光を放ち、サブマリア全域の地形が脳内に流れ込む。
廃墟。
崩れた住居。
瓦礫の山。
そして――
暗く深い反応。
「……見つけました。地下深く……牢獄ですね。」
アークレイドは迷いなく飛び出した。
――サブマリアの牢獄
崩れた通路を進み、幾つもの廃屋を越え、深く深く潜る。
やがてたどり着いたのは、鋼の扉が無残に歪んだ牢獄だった。
「……ここか。」
扉を押し開けると、闇の中に二つの影があった。
一人は、縄で拘束されながらも背筋を伸ばした大柄な男。
地中族の王――ジヌシ。
その隣には、弱り切りながらもなお王を庇うように立つ側近、ジンバルの姿。
「……誰だ。」
ジヌシの声は低く、しかしまだ折れていなかった。
アークレイドは膝をつき、頭を下げる。
「初めまして。私は魔族国ネザリアの外交官、アークレイドと申します。 あなたを救うため、我々が参りました。」
「ネザリア……? マランとやらは――?」
「彼は上で戦局を収めたところです。
あなたを連れ戻すために、私が先に来ました。」
ジヌシの瞳が揺れる。
怒りでも苦悩でもない。
ずっと拒んできた“助け”を、ついに受け入れざるを得ない葛藤。
「……情けない王だな、俺は。」
アークレイドは静かに首を振る。
「誰でも、助けが必要な時があります。
勝つべき戦いと、任せるべき戦いがあるだけです。」
「…………」
沈黙。
だが、ジヌシ王はゆっくりと頷いた。
「……行こう。サブマリアは……まだ死んではおらん。」
「はい。では――」
アークレイドは手を差し伸べた。
ジヌシはその手を、強く掴んだ。
そして———
「アークレイドが戻った!!」
キラの声が響き、メリーナも振り返る。
崩れかけた大洞窟の向こうから――
ジヌシ王とジンバルを連れたアークレイドが姿を現す。
「ジ、ジヌシ王!!」
「王が……王が帰ってきたぞ!!」
地中族たちが涙を流しながら集まってくる。
その中心で、ジバンは声を震わせながら叫んだ。
「王様ァァァーーーッ!!」
「おお……ジバンか……よく……無事だったな……!」
ボロボロの王と、涙に濡れる部下。
その姿に、マランは静かに頷いた。
「――これで、第一段階は終わったな。」
ジヌシはマランへ向き直り、深々と頭を下げた。
「……魔王マランよ。
サブマリアを救ってくれて、感謝する。」
マランは首を振った。
「救うのはこれからだ。
サブマリアはまだ……人族の暴虐に蝕まれている。」
ジヌシの瞳に再び炎が灯る。
さあ、50話にきました!
ただ、皆さんにお知らせです。
現在、平日3話、土日祝1話投稿をしていますが、
こちらの都合で1日1話に変更させて頂きます。
誠に勝手でですが、宜しくお願い致します。




