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この世界を壊します〜魔王に転生したので配下を揃えて国作りをします〜  作者: JUJU


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37/50

影魔王と純血の猟犬

第37話です。

宜しくお願いします。

塔の足元で、空気が軋んでいた。


 精霊族と衛兵たちの激突。


 純血騎士団とネザリアの仲間たちのぶつかり合い。


 その全ての中心で――


 マラン=タン=リースと、《第九席》ルークス=ハーデンが、真正面から対峙していた。


 塔から放たれる圧は、魔族にとっては鉛の鎖。


 だが、人族にとっては“加護”であり、力を底上げする祝福。


 その恩恵を、ルークスは全身で浴びていた。


「いやぁ~~、最高の気分だよねぇ」


 ルークスは、心底楽しそうに肩を回した。


 細身の鎧に、血飛沫のこびりついた純白のマント。


 その手には、黒鉄の長剣が一本。


 だが――その瞳だけが、異様だった。


 血走った瞳孔がひくひくと震え、頬が不自然な笑みに釣り上がっている。


「塔の真下で、“実験”し放題だなんてさぁ。


 力も、感覚も、全部が気持ちよくてさぁ。


 ――ここでお前らを、どこまでバラせるかなって」


 マランは無言でルークスを見据える。


 その背後で、ネザリアの仲間たちと精霊族が、各々の戦場で戦い始めていた。


(……空気が違うな)


 塔の圧が濃い。


 それだけではない。


 ルークスの周囲だけ、空気が歪んで見える。


 塔から供給される魔力と、彼の狂気が混ざり合い、“異様な高揚”を生んでいた。


「いやぁ、それにしても――」


 ルークスは、マランの頭の先から足の先までを、舐め回すように眺める。


「お前が“魔王”ってやつ?


 マラン=タン=リース?」


「そうだが」


「ははっ、名前だけはカッコいいよねぇ。


 見た目もまぁ、魔族にしては整ってるし?


 ……でもさぁ」


 ルークスは、にちゃりと笑った。


「“魔族の国”なんて作っちゃうバカが、本当にこの塔を壊せると思ってるわけ?」


 その言葉を聞いた瞬間――


 マランの胸の奥で、何かが静かに熱を帯びる。


 ネザリア。


 フェロー。



 そして、あの襲撃の日の光景――焼け焦げた住処、血だまり、倒れた仲間たち。



「お前たち純血騎士団がやったことを、俺は絶対に忘れない」


 マランの声は低く、静かだった。


「……へぇ?」


「塔に縋って、他種族を弱らせて、それで“強い”と勘違いしているお前たちを――


 俺は、心底くだらないと思っている」


 一瞬、ルークスの笑みが引きつる。


 だが、すぐに肩をすくめて、ケラケラと笑い出した。


「うっわぁ、説教くさっ。


 ねぇねぇ、もしかしてさぁ」


 わざとらしく顔を寄せてくる。


「――あの“魔族の巣”を襲った件、まだ根に持ってる?」


 マランの目が細まる。


「……ネザリアのことか」


「そうそう。


 俺は行ってないけどさぁ?


 “カレン”が、嬉しそうに報告してくれてさぁ」


 ルークスは、わざと大げさに手を広げた。


「『魔王の国を名乗る巣を一つ、良い感じに“しつけておきました”よ』ってさぁ。


 いやぁ、さすがカレン。仕事が早いよねぇ?」


 胸の奥で、ドロリとした何かが沸騰する。


(カレン……!)


 燃え上がる憎悪のイメージが脳裏をよぎる。


 だが――マランは、その黒い感情を、ぎゅっと握り潰した。


(今は目の前のこいつだ。順番を間違えるな)


 マランは、静かに一歩前へ出る。


「……お前たちが何をどう嘲笑おうが関係ない」


「は?」


「塔に守られた“安全圏”から他種族を痛めつけて、笑っていられる世界を――


 俺は必ず、壊す」


 ルークスの笑みが消えた。


 代わりに――露骨な殺意がその瞳に宿る。


「……ああ、ムカついた」


 低く呟いた次の瞬間。


「調子に乗るなよ、“劣等種族の王様ごっこ”がッ!」


 ルークスが、地を蹴った。


 空気が爆ぜる。


 塔の加護によって強化された脚力が、大地をえぐった。


 視界から、ルークスの姿が消えた。


「――」


 マランは一歩、横へ。


 次の瞬間、風が裂ける音。


 ルークスの剣が、先ほどまでマランが立っていた場所を薙ぎ払っていた。


「ほぉ……避けるんだ?」


 ルークスが口の端を持ち上げる。


「この“塔の圧”の中でさぁ?」


 塔の真下。


 魔族であるマランにとっては、本来立っているだけで苦しいはずの場所。


 それなのに――


 マランは微動だにせず、呼吸も乱れていない。


(やはり……この男、塔の弱体化を受けていない……?)


 ルークスの脳裏に、嫌な予感がよぎる。


 だが同時に、その予感は“興奮”にも繋がっていた。


「……いいよ。


 そうじゃなきゃ、面白くない」


 ルークスは舌なめずりをし、剣を構え直す。


 塔の魔力が、その身を更に包み込む。


 血管が浮き出し、筋肉が膨れ上がる。


「《痛覚遮断ノーペイン・モード》――起動」


 ぼそりと呟いた瞬間、


 ルークスの目の色が変わった。


「さぁ、“試そう”か」


 再び、爆発的な踏み込み。


 今度は――真正面から。


 マランは影を滑らせるように後退し、剣閃を紙一重で避ける。


 しかし、振り抜かれた剣が、背後の岩をまとめて切り裂いた。


 バギィィィン!!


 塔の圧と、ルークスの筋力強化。


 常人では扱えないほどの負荷が剣に乗っている。


「もっと避けろよぉ、魔王ぉ!」


 左右、上段、下段――


 ルークスの剣が乱舞する。


 ひと振りごとに、大地が抉れ、石片が飛び散った。


 だが。


 その全てを、マランはほんの紙一重の差で躱し続けた。


「なっ……」


 ルークスの笑みが薄れる。


(おかしい……塔のブーストを受けた俺の速度に、目で追いついてやがる……?!)


「――そろそろ、こちらも始めるか」


 マランが静かに右手を掲げた。


「《影牙刃シャドウ・ファング》」


 足元から伸びる影が、黒い牙となって一斉に立ち上がる。


 扇状に広がる黒刃の群れが、ルークスへと襲いかかった。


「甘ぇんだよ!!」


 ルークスは笑いながら、正面から突っ込んでいく。


 影の刃が腕や脚を掠め、鎧を刻む。


 肉まで切り裂かれたはずだ。


 ――だが、ルークスの表情は、一切変わらない。


「ほら見て、血ィ出てんのに、痛くも痒くもな~い♪」


 薄く裂かれた腕をぶんぶん振りながら、ケラケラ笑う。


「痛覚なんて、戦いには邪魔なだけなんだよねぇ!


 だからさぁ――」


 ものすごい勢いで踏み込んでくる。


 影刃がルークスの身体をさらに刻む。


 しかし、それでも一切怯まない。


「お前の攻撃、“止める力”が足りないんだよッ!!」


 真正面からの一撃。


 塔の加護と《ノーペイン・モード》で無理やり限界を超えた一撃が、マランへと振り下ろされる。


「――っ」


 マランは即座に影へと沈んだ。


「《影潜行シャドウ・ダイブ》」


 剣が地面を叩き割る。


 石が砕け、塔の足場がえぐれた。


 直後、ルークスの背後から、黒い影が立ち上がる。


「《影縫拘束シャドウ・バインド》」


 ルークスの足元から伸びた影が、一瞬で両脚を絡め取った。


「おっと?」


 ルークスは即座に剣を振り下ろし、拘束を断ち切ろうとする。


 だが――その瞬間を、


 マランは待っていた。


「隙だらけだ」


「っ……!」


 マランの足が、ルークスの顎を鋭く蹴り上げる。


 脳が揺れ、視界が一瞬白く染まった。


 だが。


「――ははっ!」


 ルークスは、蹴り飛ばされながらも笑っていた。


 空中で体勢を立て直し、そのまま地面に着地する。


「いいねぇ、いいねぇ!


 やっぱりお前、“普通の魔族”じゃねえや!」


 血をだらだらと垂らしながら、心底楽しそうに笑う。


「気に入った。


 だから――」


 剣を斜めに構えた。


「本気で、ぶっ壊してやるよ」


 塔の魔力が、さらにルークスの身体に注ぎ込まれる。


 血管が紫色に染まり、肌がじわりと黒ずむ。


 周囲の空気がビリビリと震えた。


「《狂戦解放バーサーカー・ドライブ》」


 その瞬間、ルークスの気配が一変する。


 ただのサディストではない。


 “戦闘そのもの”だけを愉しむ、純粋な狂気。


(……まだ、上があるのか)


 マランは、ルークスの気配を読み取る。


 塔と能力に依存した、歪んだ強化。


 だが――力そのものは、本物だ。


「なぁ、魔王さぁ」


 ルークスが歪んだ笑みを浮かべる。


「お前さえ殺せば、“ネザリア”なんて簡単に潰せんだよ。


 五席様がやったみたいにさぁ。


 あの時の魔族共の顔、想像すると、すっっげぇ楽しいよなぁ?」


 マランの影が、ぐにゃりと揺れた。


 胸の奥に渦巻くものが、再び沸騰する。


 フェロー。


 仲間たち。


 血に塗れた住処。


 泣き叫ぶマニア。


 ――だが。


「……そうだな」


 マランは、ゆっくりと息を吐いた。


「お前のような連中が、この世界を踏みにじってきた。


 だから俺は――」


 影が広がる。


 塔の足元一帯の地面が、黒く塗りつぶされていく。


「この世界を壊す。


 その最初の一欠片として――」


 マランは、ルークスを真っ直ぐに見据えた。


「お前を、叩き潰す」


「上等ォォォォ!!」


 ルークスが咆哮とともに地を蹴る。


 狂気と塔の加護を纏った刃が、黒い影へと突っ込んでいく。


 黒と白。


 影と光。


 魔王と純血の猟犬。


 二つの存在が、塔の足元で激突する。

この話もまた執筆量多くなりましたが宜しくお願いします。

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