戦端、裂ける大地
第34話です。
宜しくお願いします。
――塔の目前。
大地を裂くようなルークスの咆哮が、ついに戦端を開いた。
「……さぁ、始めようか。地獄の門を開けてやるよ、“劣等種族”どもッ!!」
背後で巨大な魔導砲がチャージ音を響かせ、周囲の空気が震えた。
人族の兵たちの怒号、魔力のうねり、そして塔から漂う不気味な鼓動――
すべてが“総力戦”の幕開けを告げていた。
マランは静かに歩を進め、ルークスと真正面で対峙する。
「マラン様……!」
アークレイドが一歩踏み出そうとするが、マランは手で制した。
「アークレイド。お前はあっちだ。
――キメラ3体の殲滅、任せた。」
アークレイドの瞳が静かに揺れ、やがて深い決意が宿る。
「……御意。」
その言葉を合図に、7つの戦場が同時に動き始めた。
● 第一戦場:魔導砲兵100名 vs ガラル・エミリア・精霊女王直属騎士団
塔周辺には、魔導砲を構えた人族衛兵がずらりと並んでいた。
空気に魔力が満ち、光線の奔流がいつでも撃ち出される。
ガラルが風の結界を張りながら言う。
「エミリア! 決して前に出すぎるな!
魔導砲は一撃で致命傷だ!」
「わ、分かってるよ兄さんっ……あっ!」
バシュッ! という軽い音と共に、エミリアの足元の地面が沈み――
「うわっ!? え、また罠……!? なんで私だけ!?」
「……お前は本当に……どうして毎回……!」
ガラルが額を押さえながら必死に風で引き寄せ、落下を防ぐ。
精霊騎士団が一斉に剣を抜いた。
「ガラル隊長! 援護いたします!」
「撃てッ!!」
衛兵が叫んだ瞬間――
100発の魔導光線が一斉に放たれた。
ガラルが叫ぶ。
「《風盾陣ウォール・オブ・ゲイル》!!」
暴風の盾が三重に展開し、光線を反射し始める。
エミリアも必死に魔力を練り、
「《風加速ブリーズ・ランス》!!」
高速の風槍が、魔導砲の陣形へ突き刺さる。
光と風が交差し、第一戦場は激しい魔力戦の幕を開けた。
● 第二戦場:純血騎士団下位50名 vs キラ・メリーナ
「へぇ……50人かぁ。丁度いい運動だね♪」
キラが軽く笑いながら無数のナイフを指先に出現させる。
メリーナは拳を握り、露骨に嬉しそうだ。
「アタシはもっと来いよって感じだけどなぁ!
じゃあ、いっちょぶちのめすかッ!!」
「胸を揺らしながら突っ込んでくるな!!」
「うっせぇ! 気にしてねぇ!!」
純血騎士たちが陣形を組み、殺気が飛び交う。
「行くよ、メリーナ!」
「任せろ!!」
2人の突撃と共に、第二戦場は爆発した。
● 第三戦場:高位騎士カルロ vs シェリー
カルロは黒い甲冑をまとい、青白い魔力を纏っていた。
「ほう……毒持ちの魔族か。
俺は耐性が高いぞ?」
シェリーは妖艶に微笑む。
「ふふ……耐性がある“程度”で安心していいのかしら?」
「試してみるといい」
「言われなくても♥」
蛇のようにうねる毒針が地を這い、カルロの足元へ迫る。
彼は地を踏み鳴らし、衝撃波で毒を吹き飛ばした。
「小手調べだ。来い、魔族。」
「望むところよ♥」
第三戦場も火花を散らす。
● 第四戦場:高位騎士メリッサ vs ザナド
メリッサは長い赤髪を揺らし、双剣を構えていた。
「あなた、影使いね。噂に聞く実力……見せてもらうわ。」
ザナドは無言で鞭を揺らし、冷静に構える。
「……死に急ぐなよ。」
「言うじゃない。」
金属音と影の軋みが重なり、両者が瞬時に飛び出した。
● 第五戦場:高位騎士トニー vs マニア
筋肉の塊のような人族の男――トニー。
「おまえ、弱そうだなァ? 子供かよ?」
マニアの目が吊り上がる。
「……フェローを、殺した種族に言われたくない……!」
トニーが笑う。
「あぁ〜、カレン様が1体しつこいのが居たって言ってたなぁ。アイツのことかなー? 良かったなぁ〜!カレン様が直々に殺したなんて名誉な事だぞぉ〜!」
怒りが弾け、マニアの足元の影が揺らぐ。
「……絶対に許さない!」
二人の拳が衝突し、地面が割れた。
● 第六戦場:完成形キメラ3体 vs アークレイド
――ボゥッ……。
異様な魔力を纏った影から、3体のキメラが姿を現す。
獅子の頭を持つ巨躯。
翼を持つ蛇の巨体。
鋼鉄の脚を持つ蜘蛛の異形。
いずれも前回の“未完成体”とは比べ物にならない迫力だった。
アークレイドは静かに呟く。
「……研究が、進んでいる……。」
3体が同時咆哮。
アークレイドは一歩、前へ出た。
「――ならばこちらも進まなければならない。」
彼の周囲に、異空間の揺らぎが広がる。
「《次元領域ディメンション・フィールド》 起動。」
六戦場が同時に激突する中、
アークレイドの戦いも始まった。
● 第七戦場:ルークス vs マラン
ルークスが舌打ちをしながら笑った。
「おいおい……部下どもが必死に戦ってんのに、
テメェは余裕の顔だなぁ、“魔王”?」
マランは静かに一歩踏み出す。
「言っただろ。
塔に頼らないと俺たちに勝てないのは――
お前たちだ。」
「……いい度胸だなァ?」
ルークスの周囲に凶悪な魔力が集まり始める。
「マラン殿、行かれるのですか!」
ガラルの声が背後から聞こえるが、マランは振り返らない。
「ここは俺がやる。他は任せる。」
全戦場が動き出し、
塔周辺は熱と魔力が渦巻く“戦争”の様相となった。
ルークスの顔から笑顔が消える。
「劣等種族の王が……調子に乗るなよ。」
「――お前を倒し、塔を壊す。」
「なら……死ねッ!!」
二人が同時に跳んだ瞬間――
塔を揺らすほどの衝撃が走った。
久々にいつもよりも少しボリューミーな文字数になりましたので、ゆっくり読んで頂いたら幸いです。




