塔攻略会議 ― 精霊宮殿にて ―
第32話です。
宜しくお願いします。
――セイレーン宮殿・会議室。
精霊樹の葉が淡く光を灯し、柔らかな風がそっと揺れる。
けれど、そこに集う者たちの表情は、張り詰めた緊張で満ちていた。
マラン、ザナド、シェリー、マニア、キラ、メリーナ。
そして、アークレイド。
精霊族側はエルフィリア女王、側近ガラル、エミリアを中心に、重鎮と騎士たちが並んでいる。
エルフィリア女王が、柔らかな表情で口を開いた。
「まずは……ネザリアの皆さま。ご無事で何よりでした」
その声には、心からの安堵が滲んでいる。
「アークレイド殿より、事情はすでに伺っています。
あの惨劇……あなた方がどれほどの悲しみの中にいたか……胸が締め付けられました」
マランの拳がわずかに震える。
「……お気遣い、痛み入ります」
短くそう返したが、その声の奥には鋭く冷たい怒りが潜んでいた。
エミリアが、泣きそうな顔で身を乗り出す。
「マラン様……あの……ほんとに、ほんとに、大丈夫……?」
「……ああ。ありがとう、エミリア」
マランは優しく微笑み返す。
しかし、瞳の底には“消えない闇”がある。
空気が切り替わり、アークレイドが一歩前へ出る。
「前回、魔族を弱体化していた塔を破壊したことで……人族側が危機感を覚えたのは確実です」
重鎮たちは息を呑んだ。
「恐らく――すべての塔の警備は数倍に強化されています。
さらに、純血騎士団《十傑》のメンバーが、いずれかの塔に配置されていても不思議ではありません」
その言葉に、マニアの瞳が憎悪で真っ赤に染まる。
「……カレン……。
あいつがいたら――絶対、絶対に倒す……!!」
ザナドが隣でそっとマニアの肩に手を置いた。
しかし、マニアの震えは収まらない。
エルフィリアが静かに、穏やかに言葉を続ける。
「純血騎士団十傑……彼らは人族の中でも最強の戦士たち。
塔の加護を受けた彼らは、脅威となるでしょう」
アークレイドがさらに言いにくそうに告げる。
「……もう一つ、問題があります」
「?」
「ガザリア王国には……“非常に外道で優秀”な研究者が一人います。
前回のキメラ――魔族と魔物を無理やり混ぜ合わせた存在は、彼の作品です」
重鎮たちがざわつく。
「前回の個体は“試作品”。
しかし――今回は研究が進み、前より強力なキメラが投入されている可能性が高い」
マニアが口元を押さえて震えた。
「そんな……あんな酷い存在を……また……?」
「ええ。奴らなら、確実に作っているでしょう」
アークレイドの声は冷たく、そして怒りに満ちていた。
エルフィリア女王は静かにエミリアとガラルに目を向ける。
「マラン殿。前回の約束通り――
精霊女王直属の騎士団を、今回の塔攻略に派遣します」
会議室が再びざわめく。
「ガラル、エミリア。
そして選りすぐりの精霊騎士たち数名が同行します」
ガラルが胸に手を当てた。
「……僭越ながら、我ら精霊族も、次の塔は必ず破壊しなければならぬと考えております」
エミリアもこくこくと力強く頷く。
「……マラン様のためにも……フェローさんや、ネザリアのみんなのためにも……絶対に、成功させるの!」
会議の終盤、
エルフィリア女王はゆっくり席を立った。
透き通るような風が彼女の周囲に集まり、まるで世界そのものが彼女を称えているようだ。
「――今日、私は改めて確信しました」
「……?」
「ネザリアの方々は、他種族のために命を懸けて戦う“本物の勇者”です」
マランの瞳が揺れる。
「人族に何百年も虐げられ、
塔に縛られ苦しんだ私たち精霊族に――
あなた方は“初めての希望”を見せてくれました」
風がやさしく会議室を満たす。
「塔が破壊されることなど、歴史上ただの一度もなかった。
それを成し遂げたのが、他ならぬあなた方――ネザリアです」
女王の言葉に、重鎮たちは深く首を垂れた。
エルフィリアが右手を差し出す。
「マラン殿。この戦い、共に歩ませてください」
マランは一瞬だけ目を閉じ――静かにその手を握る。
「……必ず成し遂げます。
精霊族のためにも……魔族のためにも……フェローや、失った仲間のためにも。
この世界を――変えてみせる」
女王は深く頷いた。
「運命は、いま動き出しました」
こうして、第二の塔を破壊するための新たな同盟と戦略が整った。
ネザリアと精霊族――
世界を変える二つの勢力が、ついに肩を並べた瞬間だった。
そして、この後。
マランたちは出陣の準備を整え、
新たなる“塔”へ向けて動き始めることになる。
やっと2つ目の塔破壊が始まりますね!
ちょっとここまで長くなりすぎましたかね?
クドかったらすみません。




