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この世界を壊します〜魔王に転生したので配下を揃えて国作りをします〜  作者: JUJU


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24/50

残酷なる烈火 ――フェロー最期の戦い

第24話です。宜しくお願い致します。


※これは、マランたちが惨状を目にする“少し前の出来事”である。



---


 ――その日、ネザリアの空はやけに静かだった。


 普段なら風に揺れる木々のざわめきや、遠くで鳴く魔鳥の声が彩るはずの小さな集落は、不自然なまでに静寂に包まれていた。


 フェローはその違和感を、真っ先に感じ取っていた。


「……妙だな」


 胸騒ぎがする。

 背筋を氷の爪で撫でられたような感覚。


 マラン様たちは精霊族との交渉へ向かった。

 今、ネザリアを守る責務は――自分にある。


 鍛え上げた腕を組みながら、フェローは住処全体に視線を巡らせた。


 子どもたちの遊ぶ声がない。

 大人たちの話し声もない。


 ――静かすぎる。


(……嫌な予感がする)


 その瞬間。


 ――ズシャァン。


 遠くで、大木が“根本から切り倒されたような”轟音とともに倒れた。


 フェローの目が細められた。


「誰だ……?」


 息を呑む間もなく、異様な冷気が背後から迫ってきた。


 振り返る。


 そこに立っていたのは。


 月光を封じ込めたような冷たい美貌。

 血のように紅い瞳。

 銀糸の髪を靡かせた、氷の刃のような女。


 ――《第5席》 カレン=ミュゼル。


「……ネザリアね。ここが」


 美しい声。だが、その微笑みには色がない。

 感情が欠落した氷の殺戮者のそれ。


「あなた……人族か」


「ええ。純血騎士団第5席、カレン=ミュゼル。

 魔王を探しに来たのだけれど……不在のようね?」


 フェローは沈黙した。


 その沈黙を、カレンは勝手な解釈で受け取った。


「……あら。やっぱりいないのね」


 その瞳が、血に飢えた獣のように細まる。


「ならば、“メッセージ”だけ残していくことにしましょうか」


 その言葉の次の瞬間。


 風すら反応できなかった。


 カレンの姿が――消えた。


 フェローが反応した時、すでに複数の魔族が背中を裂かれ悲鳴を上げていた。


「っ……やめろ!!」


 フェローの叫びを、冷笑が切り裂く。


「どきなさい。弱者の悲鳴は嫌いじゃないの」


「テメェ……!」


 怒りで目が赤く染まる。

 だが、フェローは覚悟した。


(……マラン様は、遠い。

 ザナドもシェリーもいない。

 守れるのは――俺しかいない)


 拳を構える。


「来いよ……第5席だか何だか知らねぇが……

 ここは、俺が守る……!!」


 カレンは肩をすくめた。


「本気で、私と戦えると思っているの?」


 その瞬間――大地が裂けた。


 カレンの剣が、光そのものになって降りそそぐ。

 斬撃は一本ではない。

 一本に見えるが、実際には無数の線が重なっている。


 鋭い氷の真空刃。


 フェローは両腕を交差させ、防御の構えを取る。


 ゴッ――!!


 凄まじい衝撃が腕を砕く。


「ぐッ……!!」


 折れた。

 だが、折れた瞬間フェローは踏みとどまった。

 後ろには仲間がいる。

 一歩も下がれない。


「……ほう。まだ立つの?」


 カレンが薄笑いを浮かべる。


「当たり前だッ……!!」


 フェローは体勢を整え、地面を踏み砕いて跳んだ。


「《魔鋼筋レイジ・アーマー》!!!」


 全身が鉄のように硬化し、筋肉が膨れ上がる。


 その拳は、城壁すら砕く威力。


「おおおおおお!!!!!」


 拳がカレンへと迫る――


 が、当たらない。


 掠りもしない。


「遅いわ」


 次の瞬間、フェローの腹に鋭い痛み。


 斬られたと気づくより先に、血が噴き出した。


 膝が落ちかける。


(く……そ……! まだだ……!!)


 フェローは地面を殴って無理やり立つ。


 腕は折れ、腹は裂け、呼吸もままならない。


 だが。


 その背後に、恐怖で震えて逃げ惑う民の影が見えた。


(――守らなきゃ、誰が守るんだよ……!

 俺は……“長”なんだよ……!!)


 フェローは、再度構える。


「行くぞ……!!」


「しつこいわね」


 カレンがため息をついた、その瞬間――


 氷の剣が光の軌跡を描き、フェローの左肩を切断した。


「ぐああああああああッ!!」


 血が噴き出す。

 視界が揺れる。

 体が傾く。


 それでも。


 フェローは倒れない。


 残った片腕で、大地を叩いて体を支える。


 その姿に、カレンの目だけが細められた。


「……そこまでして、何を守りたいの?」


「決まってんだろ……!」


 フェローの全身から血と汗が滴り落ちる。


「俺たちの居場所を……!

 マラン様の国を……!

 仲間を……!!」


 その言葉は、胸から搾り出した叫びだった。


 だが――


「価値のないものばかりね」


 その吐き捨てるような一言が、フェローの何よりも深いところを切り裂いた。


「黙れッ!!!!」


 フェローは最後の力を振り絞った。


「《魔鋼筋・超限界破りオーバーブラスト》!!!!!」


 筋肉が裂け、骨が軋む。

 本来なら死に直結する“禁じ手”。


 身体能力が一時的に爆発的に跳ね上がるが、使用すれば確実に寿命を削る。


 フェローは自分の寿命など気にしない。


 守れれば――それでいい。


 巨拳が、神速でカレンに迫る。


 風圧で周囲の木々が吹き飛ぶ。


 しかし――


「そう。そんなものね」


 カレンは一歩、足を動かした。


 たったそれだけで、フェローの拳は空を切った。


 そして。


「――終わりよ」


 音すらなかった。


 フェローの身体が、胴から斜めに裂かれた。


「……あ……?」


 自分の身体が崩れていくのを、フェローは一瞬理解できなかった。


 地に膝をつく。


 血が溢れ、視界が赤く染まる。


 それでも。


 フェローは顔を上げた。


 目の前には仲間たち。

 守ろうとした住処。

 マランの作った国。


(……マラン様……すまねぇ……

 俺……守れなかった……)


 その目から、涙が落ちた。


 それは痛みではない。

 無念でもない。


 ――仲間を守れなかった、自分への悔し涙だ。


「……娘……」


 フェローの頭に、やんちゃでいつも笑っていたマニアの顔が浮かんだ。


 最後の力で、震える唇が動く。


「マニア……すまねぇ……守れなくて……」


 その声は、風の音にかき消されるほど小さかった。


 カレンは興味を失ったように剣を下ろした。


「……魔王への“警告”には十分かしら。

 では、これで」


 そして、冷酷な足取りで――血に濡れた地を去っていった。


 フェローの大きな体は、ゆっくりと地面に倒れた。


 その瞳が閉じる直前――


 遠くで、幼い魔族の子が泣き叫ぶ声が聞こえた。


(……泣くな……大丈夫だ……

 マラン様が……きっと……)


 その想いを最後に――


 フェローの意識は、静かに途絶えた。







マランたちが見たのは、この“地獄の結果”である。




フェロー……

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