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この世界を壊します〜魔王に転生したので配下を揃えて国作りをします〜  作者: JUJU


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19/50

ネザリア、国として動き出す

第19話です。

宜しくお願い致します。

塔が崩れ落ちてから、まだ多くの日数は経っていない。


 だというのに――ネザリアの谷には、見慣れぬ魔族の姿が増え続けていた。


 


「おい……あれが、塔をぶっ壊した魔王だってよ」


「本当にいたんだな、“世界を壊す”って言うイカれた魔王が」


「イカれてるが……悪くねぇ。

 塔が壊れてから、体が軽い軽い……久しぶりに“血が巡ってる”感じがするぜ」


 


 岩肌に耳を立てた獣人系の魔族、

 皮膚に紋様が浮かぶ魔族、

 角の形状も瞳の色もバラバラな者たち。


 本来なら互いに距離を取り、群れることを嫌うはずの魔族たちが――

 一つの谷に集まり、ざわめき、期待と警戒の入り混じった視線を、中央に立つ男へ向けていた。


 


 マラン=タン=リース。


 異世界から来た“エラー”の魔王。


 


 かつて十数人だったネザリアの民は、

 いまや百名近くにまで膨れ上がっている。


 谷の中央、即席の広場のような場所に、魔族たちがぐるりと円を描いて集まっていた。


 その視線を一身に受け、マランは少しだけ肩を回す。


 


(……人前で長々喋るのは、正直あまり好きじゃないんだがな)


 


 心の中でぼやきつつも、目は真剣だった。


 隣にはザナド、少し後方にはフェロー、マニア、シェリー、そしてアークレイドが控えている。


 アークレイドはまだ、どこか落ち着かない表情で、周囲の魔族の視線を受け止めきれていない。


 


「静かにしろー!」


 


 先に声を張り上げたのはフェローだった。


 バカでかい胸板から放たれる声はよく通る。

 一声でざわざわが半分ほど収まり、もう一声で完全に静まり返った。


 


「マラン様がお話なさる! 耳かっぽじって聞きやがれ!」


「お父さん、言い方!」


 


 マニアが横から小声でツッコむが、もう遅い。


 注目は完全にマランへ向けられていた。


 


 マランはひとつ息を吐き、口を開く。


 


「……さて」


 


 紅と黒の光を宿した瞳が、集まった魔族たちをゆっくりと見渡した。


 


「まずは一つ。

 よく来たな、“ネザリア”へ」


 


 その一言で、場の空気がわずかに和らぐ。


 誰も歓迎されるとは思っていなかったのだ。


 


「勘違いするな。

 俺はお前たちを“救いに来た英雄”じゃない」


 その続きに、数人の魔族が顔をしかめる。


 


「この世界が気に入らないから、壊しに来ただけだ。

 その過程で、お前たちが“利用価値のある仲間”になりそうだから、呼んだだけだ」


 


 あくまで淡々と、魔王らしい台詞。


 だが、その声には嘘は一切含まれていない。


 


 むしろその誠実さに、魔族たちは逆に安心していた。


 


「ただ――俺には、世界を壊したその先に、作りたいものがある」


 


 マランの声音が、少しだけ熱を帯びる。


 


「誰も奴隷にならない世界。

 “種族”で上下が決まらない世界。

 それを作るために、“国”ってやつが必要になった」


 


 ネザリアの名が、霧のように広場に染み渡っていく。


 


「だから、ここを一つの国として動かす。

 名前は――すでに決めてある」


 


 静かに告げる。


 


「魔族の国ネザリア。

 ここにいるやつらは、その“最初の民”だ」


 


 魔族たちは互いの顔を見合わせた。


 誇らしさ、照れ臭さ、半信半疑……色々混じった表情。


 そのざわめきが落ち着くのを待って、マランは続けた。


 


「国として動く以上、好き勝手に暴れられると困る。

 だから――いくつか“約束事”を作る」


 


 ざわ、と一瞬緊張が走る。


 マランは指を三本、立てた。


 


「一つ。仲間内で争わないこと」


 


 ざわ……。


 魔族の性質上、喧嘩や小競り合いは日常茶飯事だ。

 思わず何人かの眉がぴくりと跳ねる。


 


「もちろん、口喧嘩や軽い殴り合いまで禁止する気はない。

 ただ、“仲間を殺す”のは論外だ」


 


 何人かの魔族が、ほっとした顔になる。


 


「二つ。ネザリアの外で、他種族を無闇に襲わないこと」


 


 ここで、露骨に顔をしかめる者もいた。


 


「……ただし、例外が一つある」


 マランは口の端を、ほんの少しだけ吊り上げる。


 


「“先に襲ってくる人族”は、例外だ」


 


 魔族たちの口元に、同じような笑みが浮かんだ。


 


「あいつらは自分から喧嘩を売ってくる。

 なら、買えばいい。

 ただし、“ネザリアの名”を汚すような真似だけはするな」


 


 少し間を置き――最後の一本の指を立てる。


 


「三つ。――常に考えること」


 


 魔族たちが首を傾げる。


 


「力に頼るのは悪くない。

 だが、力だけでどうにかなる時代は、もうとっくに終わってる」


 マランは、自分がいた世界を思い出す。


 AI、塔、システム、人間を家畜にする構造。


 


「何も考えずに暴れれば、そのうちまた“塔”みたいなものを誰かが作る。

 そういうものを壊し続けるのは、正直面倒だ」


 


 くす、とマニアが笑った。

 シェリーは口元に手を当てて、色っぽく肩を震わせる。


 


「だから、お前らには考えてほしい。

 自分の行動が、ネザリアにとって得か損か。

 この世界を“よりマシに壊す”ために必要かどうか」


 


 マランは、静かに結ぶ。


 


「この三つを守れるなら――ネザリアの一員だ。

 守れないなら、出ていけ」


 


 一瞬の静寂。


 次の瞬間、ガハハ、と誰かが笑い、あちこちから賛同の声が上がった。


 


「上等だ!」


「おもしれぇ! いいじゃねぇか!」


「私、元々群れるの好きじゃなかったけど……

 この程度の縛りなら、悪くないかもね」


 


 ざわめきは、いつしか高揚へと変わっていく。


 


 ネザリアという名の下に、バラバラだった魔族たちが、少しずつ一つの方向を向き始めていた。


 


◆ ◇ ◆


 


「……さて。約束事も決めたところで」


 


 マランは少し姿勢を崩し、今度は近くに控えていた仲間たちへ視線を向けた。


 


「次は“役割”だな」


 


 ザナドが一歩前に出る。


 


「マラン様。役職を?」


「国として動く以上、俺一人で全部見るわけにもいかない。

 信頼できる手が必要だ」


 


 マランは、まずザナドを見た。


 


「ザナド=リース」


「はい」


「お前を、俺の“側近”の一人とする」


 


 広場が一瞬、ざわめいた。


 ザナドは少し目を見開き、すぐに片膝をついた。


 


「……過分なお言葉。

 この身、この心、この魂――すべて、マラン様にお預けいたします」


「固いな」


 マランは苦笑する。


 


「お前は考えるのが得意だ。

 それに……回復と分析の能力は、国を運営する上でも重要になる」


 


 ザナドは深く一礼した。


 


 次に、マランの視線はシェリーへ向かう。


 


「シェリー」


「あら、やっと私の番?」


 


 シェリーは腰に手を当て、色っぽく笑う。


 白銀の甲殻が光を反射し、そのギャップが妙に目を引いた。


 


「お前も側近だ。

 戦力としても、情報収集や裏の仕事にも向いている」


「ふふっ。

 マラン様の“側”にいられるなら、役職なんて何でもいいですけれど――」


 シェリーはわざとらしくウインクする。


 


「側近、承りました。

 命じられれば、どこへでも、誰とでも踊ってきますわ」


 


 マランは軽く肩をすくめた。


 


「マニア」


「は、はいっ!」


 突然名前を呼ばれ、マニアはビクッと肩を跳ねさせる。


 


「お前は――ネザリアの料理長だ」


「えっ」


 


 一拍置いて、マニアの目がぱぁっと輝いた。


 


「ほ、本当に!? 私が……!?」


「お前の料理はうまい。

 それに――」


 マランはちらりと周囲の魔族たちを見る。


 


「この人数を養うには、相当な工夫がいる。

 食は、国の基盤だからな」


 


「……っ、が、頑張る!!」


 


 マニアは拳を握りしめる。


 


「みんなが“今日も生きてて良かった”って思えるご飯、いっぱい作るから!!」


 


 フェローが、感極まったように鼻の奥を鳴らした。


 


「ああ……うちの娘、最高だろ……?」


「はいはい、お父さん落ち着いて」


 


 マランは、そんな親バカを軽くスルーしつつ、フェローへ視線を向ける。


 


「フェロー」


「おう!」


 


 フェローは胸を張って一歩前へ出た。


 


「お前は――ネザリアの警備長だ」


「……!」


 


 一瞬の沈黙の後、フェローの顔に大きな笑みが浮かんだ。


 


「その任、確かに預かった!!

 この腕、この筋肉、この拳で――ネザリアに手ぇ出すバカは全部ぶっ飛ばしてやる!!」


「やめときなさいよ、筋肉自慢」


 


 シェリーがくすくす笑う。


 


「でも、頼もしいわ。

 ネザリアの門番がひょろひょろじゃ、絵にならないものね」


「門番じゃねぇ! 警備長だ!」


「はいはい」


 


 周囲からも笑いが漏れる。


 


 最後に、マランは少し間をおいてから、視線をアークレイドに向けた。


 


「アークレイド」


「……はい」


 


 かつては人族側の騎士。

 今は、塔の戦いで命を落とし、マランによって悪魔として再構築された男。


 だが――その立ち位置は、まだ曖昧だ。


 


「お前の役職は――保留だ」


 


 アークレイドの眉が、かすかに動いた。


 


「……当然かと」


 


 その声には、納得と、わずかな悔しさが混ざっていた。


 


「お前がやってきたことは重い。

 いきなり“仲間だ!”と言って受け入れられるほど、この世界もネザリアも甘くはない」


 


 フェローが腕を組み、じっとアークレイドを見つめている。

 マニアも、きゅっと唇を噛みしめていた。


 


「だが、お前には“償う機会”を与える。

 それをどう使うかは、お前次第だ」


 


 アークレイドは、ゆっくりと膝をついた。


 


「……マラン殿。

 この命、すでに一度失ったものです。

 今度こそ、正しく使い切ると誓いましょう」


 


 マランは頷いた。


 


「――さて」


 


 役割の割り振りが一通り終わったところで、マランは改めて空を見上げる。


 ネザリアの上空は、以前よりも明るくなっていた。

 塔の瘴気が薄れた分、陽光が降り注ぐ時間も増えている。


 


(……だが、このままじゃ、その陽の下で飢えるだけだな)


 


 百名近い魔族。

 この人数を、今までの狩りの感覚だけで養っていくのは、もはや不可能だ。


 


「――どうしたものか」


 


 マランが小さく呟くと、すぐ隣でザナドが口を開いた。


 


「……もしよろしければ、提案が一つ」


「聞こう」


 


 ザナドは、谷の周囲の森を見やりながら言う。


 


「この谷は自然に恵まれています。

 しかし、私たちは“魔族”であって、“農民”ではありません。

 ここから大規模な畑を作り、継続的に運営していくには――」


「専門家が要る、ってことだな」


 


 マランはすぐに続きを言い当てた。


 


「はい。

 精霊族です」


 


 ざわり、と周囲の空気が揺れた。


 


「精霊族は、自然と共に生きる種族。

 土と水と風、あらゆる生命と対話し、

 大地を育てることにかけては、世界で最も優れています」


 


 ザナドの視線が、マランへと戻る。


 


「彼らと手を結び、“農作物の技術と供給”を得る代わりに――

 精霊族を弱体化させている塔を、我々が破壊する」


 


 周りの魔族たちが息を呑む。


 


「……一石二鳥ってやつか」


 


 マランは口元だけで笑った。


 


「精霊族にとっては、自分たちを縛る塔が壊れ、

 こちらは食料と知識を得られる。

 悪くない取引だ」


 


「もちろん、外交でこじれる可能性もありますが……

 少なくとも交渉の余地はあるはずです」


 


 ザナドは深く頷く。


 


「魔族が“正面から頼みに行く”というのは、前例がほぼありません。

 だからこそ、意味があると思います」


 


 マランは少しだけ空を見上げ、すぐに皆へ向き直った。


 


「――よし。精霊族の元へ行く」


 


 短く、しかし力強い宣言。


 


「メンバーは俺、ザナド、シェリー、マニア……」


 


 そこでマランは一瞬だけ視線を横へ流し、アークレイドを見る。


 


「それと、アークレイド」


「……私も、ですか」


「お前には、“人族側の事情”を知る者として同行してもらう」


 


 あちこちで小さなどよめきが上がる。


 


「精霊族が最も嫌っているのは、“人族のやり方”だ。

 その象徴であるお前を連れていくのは、リスクでもあり――カードでもある」


 


 アークレイドは、しばし黙考した後、静かに頷いた。


 


「……お好きに使ってください」


 


 マランは満足気に頷き、その視線をフェローへと移す。


 


「フェロー」


「おう!」


 


「お前には、ネザリアの留守を任せる」


 


 フェローの表情が、ピシッと真面目なものに変わった。


 


「……任された」


 


「塔を壊したことで、ここが標的になる可能性もある。

 その間、ここを守れるのは――お前しかいない」


 


 フェローは拳を握り締め、胸に当てた。


 


「この命にかけて。

 マラン様が帰ってくる場所、ネザリアを絶対に守り通す」


 


 マニアが横から、にっと笑う。


 


「じゃあお父さん、ちゃんと野菜も食べて待っててね」


「お、おぉ……!」


「変なやつ入れないでよ?」


「い、今ここにいるのもだいぶ変なやつばっかだと思うんだが……」


 


 笑いが起こる。


 


「準備が整い次第、出発する。

 ネザリアはここから、“世界”と関わり始める」


 


 マランの宣言に――

 ネザリアの魔族たちは、それぞれの胸に期待と不安を混ぜ合わせながら、新しい国の“動き出し”を感じていた。

ここに来てすいません、

サブタイトル入れさせて頂きました。

宜しくお願い致します。

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