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この世界を壊します〜魔王に転生したので配下を揃えて国作りをします〜  作者: JUJU


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10/50

魔族抑制塔・侵入開始

第10話です。

宜しくお願い致します。

夜明け前の空は、まだ深い青さを残していた。

 風が弱まり、森全体が呼吸をひそめるように静まり返っている。


 その静寂を切り裂くように、五つの影が並んで歩いていた。


 



 


「……ここから先が、塔の領域だな」


 マランが歩みを止め、前方を見据える。


 薄い霧の奥――

 山の稜線の切れ目に、黒い巨大な塔の影がかすかに浮かんでいた。

 まだ遠い。だが、その存在感は圧倒的だった。


 塔が放つ“見えない力”が、空気を重くする。


 その波動は、魔族なら本来、膝が砕け、魔力が締め付けられるほどの圧だ。


 だが――


「……何ともないな」


 フェローが拳を握り、ゆっくりと息を吐いた。


「何百年も、この場所に近づくだけで苦しかったというのに……

 今の俺は、塔の抑制をまるで感じん」


 フェローの声は震えていた。

 恐怖ではない。

 “封じられ続けた誇り”が目を覚ます震えだった。


 マニアも胸の前で両手をぎゅっと握りしめる。


「……なんか、嬉しい。

 ずっと重たかったのが、全部なくなったみたい」


 ザナドが頷く。


「家臣共鳴の効果でしょう。

 マラン様が私たちを“従属ではなく仲間”として見ている証です」


 シェリーがくすっと笑う。


「ふふ……素敵ですわね、マラン様。

 あなたの魂は他者を押しつぶすのではなく、救い上げる力があるのですもの」


「……褒めすぎだ、シェリー」


 軽く返すマランだが、その表情はどこか柔らかかった。


 



 


「索敵は――私が行くね」


 マニアが一歩前に出る。


「でも、塔の近くまでは行かないよ。

 森の境界まで、匂いと風の動きだけ見る」


「私がついていきますわ」


 シェリーが妖艶な笑みを浮かべる。


「護衛なら任せて? 瞬間的な攻撃なら、誰よりも早く反応できますもの」


 ザナドは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに冷静に頷いた。


「なら、私とフェローが後ろから警戒します。

 マラン様は中央で周囲を見てください」


 マランは短く答えた。


「ああ――瘴気圏の内側に入るのは五人全員だ。

 それより奥へは、絶対に単独で踏み込むな」


「了解!」「心得た」「了解」「ふふ、もちろん」


 




 


 森の外縁まで進むと、空気が明らかに変わった。


 ざわり、と肌に冷たい何かが触れる。


 マランが立ち止まる。


「……この先だ。“瘴気圏”に入る」


 ほんの一歩踏み込むだけで、空気が揺れるような圧があった。

 通常の魔族なら、ここで膝をつき、呼吸が荒くなる。


 しかし――


「……大丈夫だ。行ける」


 フェローがゆっくりと拳を握った。


「抑えつけられる感覚が、まったくない。

 俺の筋肉が――俺のままだ……!」


 魔族としての誇りが、胸の奥から吹き上がってくるのが分かる。


 マニアも震える声で言った。


「フェロー……すごいね……。

 私も、足が軽い……!」


 ザナドは冷静に周囲を観察しながら呟く。


「ここから先――魔力センサーが強まるはずです」


 マニアが空気を嗅ぎ、風の流れを指で感じ取る。


「大丈夫。

 “揺れ方”が違うところがある……そこがセンサーの場所。

 私とシェリーで見つけるね」


「助かる」


 マランは短く言い、目を閉じて一度深呼吸した。


 ――塔を折れば、この世界の“最初の鎖”が外れる。


 前世で救えなかった自分。

 守れなかった弱者。

 変えられなかった世界。


 そのすべてに、終止符を打つために。


 拳を握り、目を開ける。


「行くぞ」


 




 


 瘴気圏の中を慎重に進み、森の縁を抜けた瞬間――


 マニアが低く声を出した。


「来た……!」


 次の瞬間、木々の影から数十の足音が響いた。


「魔族だ!!」「塔に近づけるな!!」


 人族の狩猟隊が、武器を構えて飛び出してきた。

 顔つきは狂気じみており、塔の波動により、魔力が異常に膨れ上がっている。


 フェローが前に出る。


「やりやがったな、塔め……!

 雑兵のくせに魔族の俺より魔力が膨れてやがる……!」


 マランが短く命じる。


「全員、構えろ!」


 衝突――。


 だが、これはまだ序章にすぎなかった。


 




 


 数分もしないうちに、狩猟隊の動きに異変が出た。


「や、やめろ……!出すな……!!」

「まだ檻の修理が……!」

「こっちに向かって――くる……!」


 ザナドが目を細める。


「檻……?」


 フェローが振り返った。


「おい……まさか……」


 その言葉の直後――


 森の奥から、

 肉と金属が擦れ合う、嫌な音が響いた。


 ズ……ズズ……


 ドスッ……


 ドスッ……


 地面が震える。

 鳥たちが一斉に逃げ、森がざわめいた。


 次の瞬間――

 霧の向こうに“それ”が姿を現した。


 




 


 長い四肢は黒い刃のような骨へ変質し、

 背中には魔族の筋肉を思わせる膨張した肉塊。

 顔は魔犬そのものだが、目の奥には“魔族の赤”が微かに残っている。


 本来人があってはならない、生きていてはならない――

 そんな存在が、ゆっくりと姿を現した。


「――ッ……!」


 マニアが息を呑み、後ずさる。


 ザナドの目にも震えが走る。


「なんという……!

 魔族と魔物を……無理やり、混ぜた……?」


 フェローは拳を握り、歯を食いしばる。


「この外道どもがッ……!!

 仲間を……こんな姿にしやがって……!」


 塔の波動がその身体を刺激し、

 魔物部分が膨れあがり、赤い血走った瞳がさらに狂暴さを増す。


「グルルルルル……ッ!!」


 喉の奥で、獣とも魔族ともつかぬ絶叫が震えた。


 マニアは耐えられず叫んだ。


「ひどい……!

 こんな……こんなの、生き物じゃないよ!」


 ザナドは静かに震えていた。


「魂が……泣いている……

 これは、生きたまま“破壊された魂”の形だ……!」


 フェローの肩が震える。


「人族は……ここまで堕ちたか……!

 弱った魔族を捕らえ、身体を削ぎ落とし……魔物の核を埋め込み……!」


 その拳には、憤怒と悲哀と悔しさが混ざっていた。


 マランは、静かに息を吐いた。


(まただ……

 前の世界と同じ、“支配するためなら何をしても構わない”という理屈)


 そして――塔の波動を受けたキメラは、

 魔族の血の匂いに反応し、狂ったように吠えた。


「ァアアアアアアアアアッ!!」


 大地が震え、霧が裂ける。


 その瞬間、マランは右手をゆっくり挙げた。


「全員――下がれ」


 声は冷静だったが、瞳の奥には燃えるような怒りが宿っていた。


「これはただの敵じゃない。

 “この世界の腐り切った象徴”だ」


 シェリーが一歩前に出る。


 艶やかな笑みではなく、

 怒りと哀しみと静かな殺意が混ざった眼差し。


「……マラン様。

 こんな地獄を生み出す世界――壊して当然ですわね」


 マランは頷いた。


「シェリー――行け」


 シェリーの唇が美しく吊り上がる。


「――喜んで」


 そして、ドレッドハウンドが地を蹴った。


 霧を裂き、魔族たちの悲憤を切り裂き、

 最初の大戦が幕を開ける――。


とうとう激しい闘い始まりますね。

またここからいい描写出来るように頑張っていきます。

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