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第9章「白鳳、翔る」

戦場に、風が吹いていた。

焼けた土の匂い、鉄と血の残り香。そして、空を裂くような轟音。


その中心を駆けるのは、理――小田氏治が自ら纏う、新型バトルスーツ《白鳳》。

全身を白銀の装甲が覆い、両肩には可動式の小型推進翼、腕部には磁気ブレードと火薬ランチャーが搭載されている。


「敵は地上を囮にし、こちらの空爆戦術を無効化しようとしている。ならば、“空から降りて”やるさ」


空と地の狭間に立つ新たな兵――それが《白鳳》だった。



上杉謙信の軍は、谷間の平地に巧妙な偽装陣を築いていた。

敵兵がいるように見せかけた人形、わざと炎を焚いた野営地。空からの偵察では、まるで本陣がそこにあるかのように見える。


「空は欺けても、俺の目は欺けない」


理は高度を落とし、谷の淵に着地する。推進機が砂埃を巻き上げた。


「突入班、展開開始! 由布、左翼から回り込め! 勘助、偵察機で背後を押さえろ!」


鉄甲兵たちは、新装備《半機動型戦術ユニット》を装備して続々と谷へ突入する。軽装の機動脚、携帯火薬ランチャー、視界強化ゴーグル――戦国の常識から完全に逸脱した“未来の兵士”が、土煙を上げて突撃する。


対する上杉軍も、ただではない。


「敵、飛び道具あり! 木弓隊、交差射撃!」


バシュッバシュッと矢の雨が降る。


だが、《白鳳》の前ではその全てが無力だった。


「誘導回避システム、起動――反射機構、展開!」


装甲表面の磁気幕が矢を弾き、理は推進力で一気に前線へ突っ込んだ。


ズガァン!!


拳一発で盾兵の列が吹き飛び、火薬ランチャーの一撃が投石車を爆発させる。


「止めろッ、止めるんだ! あれが本陣に来るぞ!!」


混乱する上杉軍の指揮系統を狙い、理は一直線に突き進む。途中で由布の隊が左右から挟撃し、勘助の操るツルギ壱式が空から警告弾を撃ち込む。


「連携成立――地上支配、完了」


理がつぶやくと、まるで時代そのものが変わったかのように、戦場の音が止まった。


敵は壊走し、上杉謙信は退路へと引いていた。


だが、彼は最後まで理に背を向けなかった。


「……これが、貴様の“信仰”か、小田氏治」


「違う。これは“理”だ。積み重ねた知識と技術で、時代を変える。それが俺の戦い方だ」


「ならばいずれ、我もまたその“理”を越えん。次に会うとき、我が軍はさらに研ぎ澄まされていようぞ」


そう言い残し、謙信は去った。



戦後、小田領は一気に拡大し、北関東の要衝を制した。


「理様、小田家の“最弱”など、もはや過去の話ですね!」


由布が笑う。


だが理は、空を見上げながら言った。


「まだだ。次に来るのは“火”と“鉄”の化物――織田信長だ」


戦国の空は、ますます騒がしくなる。

そして、理の科学もまた、さらなる進化を求められていた。


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