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第8章「空爆、戦場を覆す」

夜の静寂を切り裂くように、ツルギ壱式が空を滑空していく。

搭乗するのは若き鉄甲兵、梶原勘助。小柄で臆病だったが、理の言葉に心を動かされ、空への一歩を踏み出した。


「この投下機構、ほんとに作動するのか……いや、信じろ。理様を」


機体の下部には、**投下式火薬樽爆弾(カゴ型衝撃起爆装置付き)**が設置されている。目標は、上杉謙信軍の指揮本陣――兵糧庫を兼ねた大天幕だ。


地上では、由布や理が無線の代用として開発した**光信号機(閃光パターン通信)**を通じて進路を調整していた。


「風向き良し、角度修正――今だ、勘助!!」


合図を受け、梶原はスイッチを引いた。


「落ちろおおおッ!!」


ゴォォッ!!


火薬樽が唸りを上げて落下する。落下地点は、ちょうど天幕と火薬庫の接点。


――そして、


ドオオォォンッ!!


夜空が真昼のように輝き、轟音が山を揺るがす。巨大な火柱が謙信軍の中央を吹き飛ばした。

燃える兵糧、倒れる兵、混乱する伝令――。


「な……なんだ、あの火の矢は!?」


「天が、天が怒っている……!」


兵たちが恐慌状態に陥る中、上杉謙信だけが静かに立っていた。


「……神罰、ではない。あれは“理”の武器だ」


彼は天を睨みつける。


「空を制する術を持ったか、小田氏治。ならば、こちらは“地”で迎え撃つ」



爆撃成功の報に、理の陣営は沸き立った。


「やりました、やりましたよ! 一撃で兵糧ごと吹っ飛びました!」


「信玄も強敵だったが……謙信は違う。あいつは“信仰”と“精神”で兵をまとめてる。普通の損耗じゃ止まらない」


理はすぐに冷静になっていた。


「空爆だけでは不十分だ。“空”と“地”を繋ぐ新戦術が必要だな……よし、“戦術連携機甲兵”の配備だ」


「え?」


「空中から爆撃した直後、地上部隊が即座に突入し制圧する。これが現代の“空地一体戦”の前身だ」


理は設計図を広げると、そこにはすでに新型の指揮管制型スーツが描かれていた。


「名を、“白鳳”としよう。空の支配者――って意味だ」



そのころ、謙信軍の残兵は森の奥へ撤退していた。


「くっ……小田氏治、あの男の軍はもはや軍ではない。まるで、未来そのものだ……」


謙信は剣を抜き、夜空に掲げた。


「されど……我もまた、戦の化身。武神の名に懸けて、“地上”を死守する」


翌日。再編成を終えた謙信軍は、奇策を講じる。


ツルギ壱式を引き込むために、わざと地上に“囮陣”を築き、偽装の炎と偽兵でツルギを誘い込むのだ。


「なるほど。そうくるか……」


空から見た偵察写真を分析した理は気づいた。


「敵は“空を読んできた”な。ならば、俺たちの答えは――」


彼は白鳳スーツを装着し、地上部隊の最前線へ立つ。


「“空”と“地”を繋げば、戦場は俺の盤上になる」


鋼鉄の装甲が月光を反射し、理は叫んだ。


「進め! 空の騎士とともに、地を制せ!!」


戦国の常識は、さらに一歩壊された。


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