第28章「黒雷、墜つ」
空が裂けた。
《黒雷丸》が吐き出す濃密な雷雲が《鋼ノ浮城》を包み込み、視界を奪う。
雷鳴と共に、巨大なエネルギー砲《天破砲》が空を割った。
「全艦、回避機動!《浮城》の心臓を狙ってきてやがる!」
管制士官の怒号とともに、浮城が急旋回を開始する。
だが次の瞬間、黒雷丸の背から放たれた影が風を裂き、突撃してきた。
――《天破・ミカヅチ》。
「全方位に警戒を!あれは……!」
ブースターの爆音とともに、ミカヅチが鋼ノ浮城の甲板に着地する。
その重さに装甲が軋み、センサーが悲鳴を上げる。
「俺が行く……!」
氏治はすでに動き出していた。スーツを装着し、ドックのゲートを開く。
「信長、艦を頼んだ!アイツは、俺が叩き潰す!」
「……ならば任せよう。戦国の空は、お前に預ける」
氏治の機動強化スーツが起動し、彼は単身でミカヅチの前に降り立つ。
「よう小田氏治……人と機械の融合体に、勝てると思うか?」
「機械に心はねぇだろ? それじゃあ、この空は守れねぇんだよ!」
鋼の拳が火花を散らす。
氏治の突撃がミカヅチの装甲をかすめ、反撃の刃が背後から襲う。スーツの補助アームがその一撃を弾き、爆音が響いた。
ミカヅチはその身に、徳川の技術と家康の意志を宿していた。
並の攻撃では傷一つつかぬ――それでも氏治は引かなかった。
「俺は、小田氏治だ。この空を、仲間を、未来を守るために立ってんだよ!」
蒸気ブースターが悲鳴を上げ、氏治は加速する。
彼の拳が突き出され、ミカヅチの頭部センサーに命中――!
だが直後、腹部に蹴りを受け、浮城の甲板が崩れた。
二人は共に吹っ飛ぶが
そのまま、空の中で格闘戦を展開する二体。
「貴様の拳に、信念はあるのか?」
「あるさ! 俺がこの時代に生きてる理由、そのすべてがここにある!」
氏治は最後のエネルギーを胸部コアに集中させた。
「《爆芯突》――ッ!!」
突撃と共に、彼の右腕が炸裂。装甲を貫き、ミカヅチのコアへと突き刺さる。
「ぐぅおおおおおおおおおおお!!」
爆発。黒い雷が空を裂き、ミカヅチの駆動が停止した。
その破片が、空に煌めいて降り注ぐ。
――《黒雷丸》、制御不能。急速降下。
艦橋にて、信長が静かに目を閉じた。
「……勝ったな、小田氏治」
氏治はぼろぼろになりながら、パラシュートで《鋼ノ浮城》に戻ってくる。
「ふぅ……雷神は、地に墜ちたぜ」
士官たちが歓声を上げ、通信士が叫ぶ。
「徳川軍、撤退を開始!幕府の空中艦隊が離脱しています!」
空の戦いは、氏治の勝利に終わった。
しかしその空の彼方、家康はまだ生きていた――。
「なるほど……これが空の拳か」
冷たい眼差しで空を見上げ、家康は呟いた。




