第22章「鋼の魔王、討ち入る」
《ヤタガラス》の修復が始まった。
鋼鉄の装甲が再び閉じ、千切れた砲塔さえもゆっくりと起き上がる。自動制御による冷徹な動きは、もはや人の意志を超えた怪物そのものだった。
「こいつ……生きてやがる……」
氏治は《飛竜・改》のスラスターを吹かせ、距離を取りながら信長へ通信を繋ぐ。
「織田! あの機体、核となる制御中枢が別にある。外装をいくら削っても無駄だ!」
「ならば、核を狙えばよいだけの話よ。場所は?」
「中心じゃねえ。左肩――あの巨大砲塔の根元、そこに独立思考炉がある。俺の推測だが……」
「推測で十分。貴様がそう言うなら、俺はそれを信じよう」
信長の《紅蓮》が赤熱の焔を噴き上げ、《ヤタガラス》の左肩へ突進する。だが、ヤタガラスも黙ってはいない。全砲塔が自動追尾し、レーザー式照準が信長を捉える。
「避けろ、信長!!」
ズガァァァン!!
地響きと共に砲撃が炸裂し、山肌が崩れ、浮城にまで衝撃が届く。だが――
「……惜しいな」
爆煙の中から現れた《紅蓮》は、僅かに焼け焦げただけで、なお突き進んでいた。
「武士の名にかけて――その核、断ち切らせてもらう!」
刃が閃く。《鬼喰い》が、鋼鉄の砲塔の根元を正確に切り裂く。
――ガギン!!
爆発音と共に、ヤタガラスの動きが一瞬停止する。
「今だ!!」
氏治が《飛竜・改》で駆け込む。右腕のアームキャノンに蓄積した高密度火薬を込め、一点集中で砲塔の破損部へ叩き込んだ。
「鉄の時代は――俺が制するッ!!」
――ズドォン!!
爆裂と同時に、ヤタガラスの左肩が吹き飛び、装甲の下から精密な歯車と細線が露出する。制御中枢は破壊され、全身を覆っていた駆動機構が急停止した。
「やった……!」
だが、その瞬間、地面が大きく揺れた。
「なに……!? 地下から反応!?」
制御を失ったヤタガラスが、まるで自爆装置を起動したかのように、体内から膨大な熱源を放ち始める。
「しまった……!」
氏治と信長が反射的に後退する。《鋼ノ浮城》からも緊急離脱命令が発せられ、味方部隊が撤退を始める。
直後――
ドオオオオオン!!!
ヤタガラスは大爆発を起こし、周囲の山林を焼き尽くした。地表に巨大なクレーターを残し、煙と破片だけが空を舞う。
その中央に、立ち尽くす二つの機影。
「終わったな……」
氏治が呟く。
「いや――戦の始まりにすぎん」
信長が静かに告げた。
「徳川家康、その本体はまだ姿を見せていない」
「……わかってる。だが、その時は、俺たちが必ず叩く」
《鋼ノ浮城》の影が、再び空を覆った。
天下統一の旗は、まだ掲げられていない。




