第21章「ヤタガラス、目覚める」
《六脚城砲・ヤタガラス》が咆哮した。
ズガァァァンッ!!
背部に装備された三門の火薬砲が一斉に火を吹き、《鋼ノ浮城》へと向けて膨大な火炎を放つ。炸裂した砲弾は浮城の装甲をかすめ、金属の悲鳴を上げさせた。
「クッ……補助スラスター、右舷損傷!」
浮城中央制御室に緊張が走る。
「だが浮城は墜ちねえ……! こっちは空の王だ!」
氏治は叫び、《飛竜・改》のコックピット内で加速装置を全開にする。スラスターが怒涛の推力を噴き出し、炎の中を切り裂いて《ヤタガラス》へ急襲。
「こいつが俺の――鉄拳制裁だ!」
アームブレードを前方に突き出し、ヤタガラスの外装に斬撃を叩き込む。
ギィィン!
厚い装甲に亀裂が走る。だが、ヤタガラスは怯まない。六本の機械脚が地を這い、巨大な質量で《飛竜・改》を押し潰さんと迫る。
「大将、下がれッ!」
信長の本隊が援護射撃を開始。小型火薬弾がヤタガラスの脚部に集中砲火を浴びせ、ひとつ、またひとつと機能が鈍る。
「くそっ……動きが読めねえ……!」
《ヤタガラス》の動きはまるで生き物だった。六脚による有機的な挙動、連動した砲塔制御、そしてなにより――人智を超えた反応速度。
「まさか……人工知能か!?」
氏治の脳裏に閃くのは、前世で見た軍用AI搭載兵器の構造。だが、それはこの時代の技術では説明がつかない。
「家康、お前……どこまで先を読んでやがる……!」
上空、浮城の副司令官・由比が指示を叫ぶ。
「高高度火薬弾、ヤタガラスに向け投下準備!」
「――いや、待て!」
氏治は制止した。
「下手に撃てば、奴は自動防御で反撃してくる。俺が近接戦でセンサーを潰す!」
その瞬間、《飛竜・改》は突撃を開始。ヤタガラスの肩部へと接近し、外装を切り裂いてコアセンサーを探る。
「ここか……!」
斬撃!
ブシィッ――煙が吹き出し、ヤタガラスの砲塔が一瞬、動きを止めた。
「今だ! 一斉砲撃、撃てぇえええ!!」
《鋼ノ浮城》からの高高度火薬弾が次々と落下。《ヤタガラス》の甲冑に着弾し、爆炎がそれを包み込む。
――ドオォォォン!!!
爆煙の中、ヤタガラスの姿が揺らぎ、ついに――地に膝をついた。
「やったか……?」
氏治が低く呟いたそのとき、無線が鳴る。
「まだ終わってねえ! ヤタガラス、自己修復モードに移行!」
装甲の隙間から無数の小型機械――ナノ補修装置が展開され、破損部を急速に修復し始めていた。
「マジかよ……」
しかし、氏治は笑った。
「なら、修復が追いつかねえほど叩けばいい。なあ、信長?」
「承知!」
《紅蓮》の名を冠する信長の機体が、燃えるような残光を引いて飛来した。
二人の魔王が、鋼の巨兵へと突撃を開始する。
戦国最後の戦場が、火と鉄の咆哮に包まれていく――。




