第20章「鋼の咆哮、地に轟く」
「総力戦――か」
《飛竜・改》のコックピットで、氏治は唇を噛んだ。空に掲げられた信号筒の赤光は、徳川軍が総動員体制に入ったことを意味していた。
眼下、浜松城の外郭から続々と姿を現すのは――蒸気駆動の重装兵、巨大な火薬砲塔、そして装輪式の鋼鉄戦車。
「こいつは……まるで要塞都市だな」
鉄と火薬が築いた牙城――徳川は、科学技術でも小田の軍勢に劣っていなかった。
《鋼ノ浮城》からの通信が入る。
「大将、こちら砲撃部隊。火薬投射機、全門装填完了!」
「よし……空から一斉射撃で道を開け。突撃部隊はその隙に進軍しろ!」
氏治は《飛竜・改》を翻し、《鋼ノ浮城》の先陣を切るように降下を開始した。
その背後、浮城の側面から展開するのは――翼を持たぬ、飛翔補助装備を装着した空挺部隊《隼》。軽量化された甲冑にスラスターを背負い、まさに空を跳ぶ歩兵だ。
「空中からの強襲、行くぞ!」
氏治が叫ぶと同時に、城下の大地を砲火が舐めた。
《ドガァァァァン!!》
空からの一斉射撃が浜松城の外郭を砕き、火の手が上がる。戦車が応戦し、空を裂くような砲撃を見せるが、宙を駆ける《隼》たちは回避しつつ地上へ着地。
「突破口を開け!」
氏治は降下中にアームブレードを展開、正面の鋼鉄戦車に一撃を加える。
《ガギィィィン!》
車体が裂け、火花が散る。その隙を突いて、地上部隊が突入を開始した。
「小田軍、地上部隊が城門へ到達!」
「《飛竜》隊は上空制圧を継続! 信長本隊は右翼から支援に回れ!」
戦場はまさに混沌。だが――氏治の中には、一点の静謐があった。
(ここを落とせば、関東全域が射程に入る……。次は江戸、そして……天下だ)
そのときだった。
浜松城の天守が振動し、屋根が裂けるように開いた。
「……あれは――!?」
姿を現したのは、かつて見たこともない巨大兵器。
六本の足を持ち、甲冑のような外装を纏い、背には火薬投射機を複数搭載した鋼鉄の怪物。
《六脚城砲・ヤタガラス》
「我が徳川の秘匿兵器にして、最終防衛装置よ……!」
家康の声が、拡声機を通じて響く。
「小田氏治! この浜松で貴様を討ち、科学の暴走に終止符を打つ!」
「――はっ、どの口が言う!」
氏治は《飛竜・改》のスラスターを全開にし、再び空へと舞い上がった。
「いいぜ……お前の“最後の切り札”、真正面から叩き潰してやる!」
空と地、鉄と炎の激突が、最終局面へと向かっていく。




