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第二章「信長、鋼鉄に興味を持つ」

「……あれは本当に小田氏治か?」


尾張・清州城の一室。織田信長は、鷹のような目で巻物に描かれた図を見つめていた。そこには――鉄の装甲を纏い、炎と雷をまき散らす“鋼鉄の鬼”の姿があった。


「一夜にして北条の斥候を壊滅、兵を一人も失わず……まるで化け物よ」


「ただの流言かと存じますが……」


「いや、面白い。実に面白い」


信長の口元が、猛禽のように吊り上がる。


「会ってみたいな。鉄の武将、小田氏治とやらに――」



一方その頃、小田領・大垣の鍛冶場では、氏治――もとい九条理が次なる改良を進めていた。


「出力は悪くないが、火薬式ブースターじゃ連続使用できない……」


彼は鍛冶娘の由布とともに、新しい推進装置の開発に没頭していた。


「おい由布、ふいごをもっと強く踏んでくれ! 鉄をもっと軟らかく!」


「ちょっと御屋形様、私は鍛冶屋じゃなくて女子です!」


「うるさい、これは未来のための試作だ!」


怒鳴り合いながらも、二人はまるで現代の研究室のように息を合わせて作業を進めていく。


理の目的は明確だった。


(まずは、“一騎当千”の力を確立する。次に、量産化可能な軽量装甲を開発し、小田家を科学の軍団に変える……)


だがそこに、一人の男が訪れる。


「……初めまして、小田氏治殿。突然の訪問、失礼する」


その声は――


「織田……信長?」


馬に乗って現れたその男は、まだ若いながらも鋭い眼光と異質な気配を放っていた。小田の家臣たちは緊張で言葉も出ない。


「この時代にしては珍しい。鉄と火をここまで使いこなすとは。あれは……いくさの道具ではなく、“思想”だな?」


理の背筋がぞくりとする。この男、只者ではない。


「ふん、貴殿が何者であろうと興味はない。だが――その鉄の魔法、俺に見せてみせよ」


信長はにやりと笑い、言った。


「もしそれが“夢”と呼べる代物なら――俺は喜んで、それに賭けよう」



その夜。鍛冶場に設置された試験場で、理は信長の前に立った。


「アーマー零式、展開――起動!」


鉄の装甲が身体を覆い、ブースターが火を噴く。


火花が舞い、地響きが鳴る。信長の目が見開かれる。


「これは……」


理は片腕を突き出し、手のひらのレバーを引いた。


ドォン! 火薬弾が射出され、木の標的が粉砕される。


「織田信長。お前は歴史で“第六天魔王”と呼ばれる男だ。だが……この時代で一番の“悪魔”は、俺だ」


鉄の面越しに、理は告げる。


「俺は、科学でこの戦国をぶっ壊す」


信長は一瞬沈黙し、そして――


「……いいな、それ。気に入った!」


朗らかに笑い、手を叩いた。


「ならば、同盟といこう! 小田氏治、貴殿の“夢”を、俺の兵で叶えようではないか!」


こうして――

戦国最弱と呼ばれた男、小田氏治は、天下に名を轟かせる“鋼鉄の武将”として、信長と手を組むことになる。


世界は、変わり始めていた。


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