第18章「鉄火の浜松城攻防戦」
浜松の地にて、鋼ノ浮城は怒涛の砲撃を受けていた。
地上から放たれる徳川火術隊の《地対空爆砲》。火薬を超高圧で射出するその砲撃は、空中を漂う要塞にとって脅威以外の何物でもなかった。
「左舷、三番装甲板が破損! 火薬庫に引火の危険あり!」
「直ちに冷却ガスを注入! 飛竜部隊は砲陣の位置をマッピングしろ!」
司令室では、佐久間が必死に指揮を飛ばし、氏治は眉一つ動かさず状況を見据えていた。
「徳川の火力、侮れんな……だが、見せ場はこれからだ」
氏治は静かにスーツのヘルメットを装着し、艦内通話を開いた。
「飛竜部隊、全機、攻撃開始だ。目標は浜松城本丸、ならびに周辺砲陣。――風穴を開けろ」
「了解!」
空へと舞い上がる銀の翼。飛竜型飛行兵器は編隊を組み、高速で地上をなぞるように飛行した。
《ズドン!》《ズガアアァン!》
次々と炸裂する爆薬。飛竜の腹部に積まれた爆撃弾が、徳川の砲座を粉砕していく。
「撃ち落とせ! 一機たりとも通すな!」
家康の命令に応じ、徳川鉄砲隊が火を噴いた。最新式の長銃が空を狙い、飛竜の翼を次々に裂いていく。
「一機撃墜!」
「二番機被弾、脱出します!」
空中で火花を散らしながら飛竜が墜落する。
だが、氏治は怯まなかった。
「よし……これより、私自ら出撃する!」
氏治の乗る《飛竜・改》は、鋼ノ浮城の格納庫から音を立てて滑り出し、勢いよく空へ跳ね上がった。
「行くぞ……家康!」
飛竜・改は従来型よりもスピードと操作性に優れ、上下左右に激しく機動を繰り返しながら、浜松城の真上へ突入していく。
その時だった。
「敵機、確認! 単独飛翔体!」
家康の近くに控える黒装束の技術兵が叫んだ。浜松城の天守の奥、隠された発射装置から、鋼鉄製の一対の翼を持つ飛行機械が姿を現す。
「お前も空を飛ぶ気かよ、家康!」
家康は、静かに空を見上げたまま言った。
「お主の所にスパイを送りこみ作らせたものじゃ、小田氏治……本当の力比べといこうか」
そして、空へと躍り出たのは――徳川四天王のひとり、井伊直政。漆黒の飛行スーツに身を包み、家康のために命を投げ打つ覚悟で、飛竜・改へと突進してくる。
「来たな……!」
空中で、氏治と直政が激突した。
《ガギィィン!》
ブレードとブレードが空中で交差し、火花を散らす。甲冑同士がぶつかる音が、浜松の空に響いた。
「お主……命を捨ててでも主を守るか!」
「それが武士だ!」
叫び、斬り合うふたりの飛行武者。その下で、地上の軍勢が激突を始めていた。
まさに今、浜松城は空と地、両方からの総攻撃に晒されていた。




