第17章「東征、鋼ノ浮城始動」
天を裂く轟音とともに、《鋼ノ浮城》が動き出した。
宙に浮かぶ鋼鉄の要塞。その巨大な影が地上を覆い尽くし、人々は思わず立ち止まり、空を仰いだ。甲冑に身を包んだ兵たちすら、口をぽかんと開けるばかりだった。
「これが……氏治様の新兵器……!」
浮城の司令室に立つ小田氏治は、鋼の床を踏みしめながら進路を指示する。
「目指すは東海道、浜松じゃ。徳川を討つ」
「承知!」
技術頭の佐久間が応じ、各機関が一斉に唸りを上げる。
浮城の内部には、飛竜部隊の格納庫、火薬弾を搭載した投下装置、さらには気圧調整された観測室まで備えられていた。完全なる空中戦艦――それが《鋼ノ浮城》である。
進軍の途中、各地の城は無血開城を選び、氏治の軍勢に協力を申し出た。だが一つだけ、黙して動かぬ城があった。浜松城。徳川家康の本拠地である。
「徳川め……動かんか」
氏治が目を細める。
織田信長が隣で笑う。
「家康はな……石のような男よ。一度構えたら動かぬ。だからこそ、突き崩し甲斐があるというもの」
「ならば、叩き潰すのみだ」
鋼ノ浮城は浜松上空へと到達した。空を覆う要塞に、徳川軍も動揺を隠せない。
しかし――家康は怯まなかった。
「面白い。空を制したか……だが、空は地に落ちる定めよ」
家康は、独自に開発させた兵器を展開させる。それは――
「……火矢砲……いや、違う……これは……!」
地上から突き上がる火柱。まるで火山のように噴き上がる高熱の矢弾が、《鋼ノ浮城》の装甲を揺らす。
「くっ……これが徳川の火術隊か!」
城下町に潜む火薬職人たちを総動員し、家康は《対浮城兵器》と称する火砲を準備していたのだ。
「避けきれんぞ! 被弾!」
浮城の外殻の一部が焼け焦げ、鉄板が剥がれ落ちる。
だが氏治は、眉一つ動かさずに叫んだ。
「いいか、落ち着いて反撃しろ! 飛竜部隊、発進!」
ハッチが開き、十数機の飛竜型飛行兵器が空へ舞い上がる。
「上空から浜松の砲陣を叩け! 家康の度胸、折ってやれ!」
信長が笑った。
「貴様もだいぶ“魔王”らしくなってきたな、小田氏治!」
「違ぇよ。俺は……“最弱”から成り上がった男だ!」
その声が、空と大地に響き渡った。




