第13章「空に落ちる影」
轟音と共に、再び空が裂けた。
小田氏治と織田信長――ふたりの武装は、風と炎の中で交差していた。
「はあああああっ!」
氏治はスラスター全開、機体の出力を限界まで引き上げ、突撃する。
その右腕には、すでに装甲が剥げ、露出した駆動部が火花を散らしていた。
「貴様の力、認めてやろう……だが、我が覇道はここで折れぬ!」
信長の《鬼喰い》が、火薬の爆発と共に唸りを上げる。
刀身が紅く焼け、まるで炎そのもののようだった。
――ガギィィィィン!!
斬撃と斬撃が衝突し、空に巨大な衝撃波が生まれる。
その反動でふたりは弾かれ、それぞれ反対方向へと吹き飛ばされた。
氏治は制御装置を叩き、なんとかバランスを保つ。
「クソッ……機体がもたねぇ……!」
信長もまた、肩を抑えながらスチームを吹き上げていた。
彼の甲冑の関節部は限界寸前。だが、その眼光はなおも衰えていない。
「貴様の科学……美しい。しかしそれだけでは、我が野望は止められぬ!」
「なら見せてやるよ……科学の“応用力”ってやつをな!」
氏治は背部の補助ブースターを強制的にパージ。空中に散った部品が、爆薬を含んだ信号弾へと変化する。
「リモート起爆……!」
氏治がボタンを押すと同時に、空中で炸裂。
炎と閃光が信長の視界を覆う!
「ぬうっ!」
その隙を逃さず、氏治は《アームブレード》を伸ばし、信長の右腕を狙って突撃!
刃が甲冑を貫き――《鬼喰い》が、彼の手から離れる。
「……!」
信長は即座に左手で懐の火薬玉を取り出し、至近距離で投げつけた。
轟音と共にふたりは吹き飛び、再び空に舞う。
が――信長の動きが鈍った。
「お前……」
氏治は気づいた。
信長の甲冑は、先ほどの熱線で熱膨張を起こしていた。そこに信号弾による振動、さらに至近距離の火薬爆発が追い打ちをかけた結果――
「……装甲が、溶けて固まってやがる」
関節が動かない。信長の自由が、空中で奪われた。
氏治は接近し、最後の一撃を構える。
「終わりだ、信長……!」
「……クク……見事だ、小田氏治。そなたの“空”は、我が“地”を超えた」
氏治は少しの間、刃を構えたまま動かなかった。
信長の顔に、悔しさではなく笑みが浮かんでいた。
「貴様の技術……その未来に、我が夢を託すとしよう」
「……言い残すことは、それでいいか?」
「ああ……ならば、潔く墜ちよう」
信長は自らスラスターの安全装置を切った。
身体が重力に引かれ、黒い甲冑が空を滑るように落ちていく。
氏治はその姿を、黙って見送った。
「……落ちるのは、影だけでいい。光は、俺が拾い上げる」
爆風と蒸気の中、氏治は静かに飛竜へ戻った。
信長の兵たちが、彼の落下を目にし、次々と武器を捨てる。
空に、戦の終焉を告げる静寂が戻った。
――信長との決着は、氏治に新たな時代の扉を開かせようとしていた。
(続く)




