第12章「魔王、炎に笑う」
《飛竜》が《雷鳴》部隊へ突撃し、戦場は爆炎と衝撃に包まれた。火薬の山が吹き飛び、地響きが辺りを揺らす。
「これで……終わりじゃねえ!」
煙の中、氏治は飛竜の操縦桿を叩きながら叫んだ。敵陣に雷を落とすかの如き強襲だったが――その中心に、なおも仁王の如く立ち尽くす男がいた。
「――お見事、小田氏治」
黒煙を払いながら現れたのは、織田信長。
漆黒の甲冑に包まれ、片手には長銃。だが、それを使うまでもなく、その眼光一つで全軍を制していた。
「空を制するか……だが、我が野望は地を這うものに非ず」
信長は地を蹴った。
蒸気駆動式の脚部が火花を散らし、信長の姿が一瞬にして《飛竜》の目前へ跳ぶ。
「来たな……!」
氏治は操縦席を開け、スーツ姿のまま飛び出した。
左腕から射出装置を展開し、ワイヤーを放つ――空中の信長を捕獲!
「空に引きずり込ませてもらうぜ、魔王!」
ガシャッ。信長の胸部装甲にワイヤーが突き刺さる。
氏治はスーツのブースターを起動、そのまま信長を空へ引きずり上げた。
「貴様……空を土俵に選んだか。ならば応じてやろう!」
信長が甲冑の背部を展開。内蔵された煙筒が勢いよく噴き上がり、空中での姿勢を制御する。
ガギィィィン!
刃と刃が交錯する。氏治のアームブレードと、信長の名刀《鬼喰い》が空中で火花を散らす。
「やるじゃねえか、信長……お前、本当に人間か?」
「貴様の科学が異端なら、我が野望もまた常識の外にある」
信長は関節部の火薬弾を炸裂させ、一気に間合いを詰めてくる。
氏治の胸部装甲をかすめる斬撃。だが氏治は補助スラスターで体勢を立て直す。
「俺の技術、盗む気か?」
「いや――理解したうえで、超えてやる!」
信長の眼には、恐れではなく明確な殺意と探究心が宿っていた。
その姿に、氏治は心の奥で震える。
「こいつ……本気で俺と、同じ領域に来るつもりか!」
甲冑の関節が軋みを上げ、両者の推進装置が同時に咆哮する。
重力を無視した戦いは、空を焼き、風を裂く。
氏治は頭を回転させる。信長の装甲は高熱に弱い――ならば。
「信長ァ! てめぇ、こいつは初見だろうが!」
氏治はスーツの胸部を開き、内蔵した熱線放射器を起動。灼熱のビームが、信長の右肩を直撃する!
「ぬっ……!」
金属が焼け、甲冑が溶ける。
氏治はその隙を逃さず、再び斬撃を繰り出す――が、信長はそのまま空中で後方回転し、爆煙と共に距離を取った。
「……見事だ、小田氏治。貴様、やはり只者ではないな」
信長の目が、まるで火を灯したように光る。
「お前もだよ、信長……地上戦特化の装備で、ここまで空中に適応してくるとはな」
二人は浮遊しながら睨み合う。
どちらも満身創痍、だが目には一切の迷いがない。
「次で、終わらせる」
「同感だ……勝った方が、この国の未来を担う!」
氏治と信長、二つの意志が、空を割って衝突する!




