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第1章「火薬と鉄の出会い」

目を覚ました瞬間、九条理は強烈な日差しと、汗臭い布団の匂いに包まれていた。


(……俺は死んだはずじゃ……?)


記憶は確かだった。軍事企業に研究成果を横取りされ、それを阻止しようとして爆発に巻き込まれた。目の前に広がるのは、土壁の粗末な屋敷と、布を巻いただけの簡素な衣装を着た男たち。


「御屋形様! 北条勢、再び侵攻してきまする!」


「うろたえるなッ! 我らが小田軍も応戦すれば……」


(……小田軍? 小田……氏治?)


彼の頭の中に、途端に大量の記憶が流れ込んだ。――これは、九条理のものではない。歴史上「戦国最弱」とまで呼ばれた男、小田氏治の記憶だった。


「マジかよ……最悪のハズレ転生じゃねえか……!」



「素材はある。問題は、再現性と精度……」


理はすぐに屋敷の倉を調べ上げ、村の鍛冶屋に会いに行った。彼の目には、戦国時代の鉄器や火薬が“材料”にしか見えていなかった。


「これが砂鉄と木炭、そして硝石……火薬の初期材料……やれるな」


鍛冶屋の娘・由布は、変わり者の御屋形様に興味津々だった。


「御屋形様は、いったい何を作っておられるのです?」


「未来だ」


「……は?」


「人が鉄で空を飛び、雷で敵を貫く未来。俺はそれをこの時代に作る」



数週間後、理は小さな試作機――**「装甲外衣・零式(アーマー零式)」**を完成させた。


鉄板で覆われた胸部と腕。背中には簡易的な火薬式ブースター。右腕には火縄銃を三連装で組み込み、手のひらのレバーで発射できる。


「動くか……?」


軋む音と共に、理の身体が装甲に覆われる。


重い。動きづらい。だが――


「これで、ただの負け犬じゃない……“兵器”になれる」


その夜、小田領を襲撃してきた北条の斥候部隊。通常なら手も足も出ない数だった。


だが――


ドォン! ドォン!


空に火花が咲いた。鉄の男が、火を噴きながら兵士をなぎ倒していく。


「な、なんじゃあれはぁぁぁぁぁっ!?」


「天狗じゃない! 鉄の鬼じゃ!」


ブースターの噴射で跳ね、銃を乱射し、殴るたびに甲冑が砕ける。


理は戦場を一人で制圧し、地面に倒れた兵士たちを見下ろして言った。


「これが、科学の力だ」


その姿は、まさに戦国に現れた“鋼鉄の魔神”だった。

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