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大学青春物語  作者: PAG
2/3

第2章 四人旅と前進(前編)

夏休みに入った大希たち。待ちわびていた旅行の日が早くも訪れる。

初めての四人での旅行は波乱の展開に?!

そんなありがちな展開は起こるのか。旅行は全3編でお送りいたします。

大希

 ついに待ちに待った旅行の日。この日を楽しみにしてたんだ。夏休みに入って10日経ったけど、何もしてねえや。この旅行が終わったらなんか始めるぞ。

「俺ら、早く来すぎじゃないか?」

隣の幸次にそう言われる。

「まあ、遅いよりはいいんじゃないか?」

俺たちは今、出発駅に来ている。俺たちは一旦。そこまで遠くない所に行こうということになった。そのため電車移動である。

「でもまだ二時間あるぜ?そんでこの駅、来慣れててすることねえよ。」

「まあ、良いじゃねえか。俺らで喋ってようぜ。」

そんなわけで、俺らは二時間前から、駅で二人で喋っていた。

「夜、部屋で何する?」

「あー、恋バナとかでいいんじゃね?」

「え、幸次がそれ言うの。てか、二人ですることか?それ。」

「でも他にすることなくね?なんか持ってきた?」

「一応ゲーム機くらいは。」

「じゃあ、まあそれで楽しんだり話したりしようぜ。」

「普通の結論に落ち着いたな。」

旅行の楽しみな話をしつつ、俺らは花音たちを待っていた。

「そういやバイト始めたんだって?」

「そう。那月の紹介で入れてもらった。」

「そうなんだ。じゃああそこのカフェか。確かに似合うかもな。」

「えー、そうか?」

「うん。今度行くわ。」

「それは来てくれ。」

まあ、幸次の見た目ならあそこのカフェはめちゃくちゃ似合うな。もしかしたら女子人気で混雑しそうだな。SNSで拡散しておこうかな。

そんなことをしたら幸次に怒られそうだなと考えつつ、いつ行こうかななんて考えていたら、後ろから肩をたたかれた。

「やっぱり大希だー!!」

後ろを振り返ると懐かしい顔があった。

「あ、透子!」

佐川透子。高校1年のときに知り合い、仲良くなった人の一人だ。高2に上がって以降、そんなに関わりを持てなかったが、まさかここで会うとは。

「えー、何してんの?」

「これから友達と旅行なんだ。」

「そうなんだ。あ、幸次君か。初めましてー。高校でちょっと聞いたことはあったよ。」

「どうも。」

「透子こそ、何してんの?」

「私は今日学校あるからさ。これから行くの。」

「学校。そうなんだ。」

「うん。あ、電車来ちゃうからまたね。連絡後で入れるわー。」

「おう、じゃーなー。」

透子は慌ただしく改札に向かった。嵐のような奴だったな。

「透子さんか。すごい明るいな。」

「ほんとな。」

その嵐が過ぎ去ってから間もなく、待っていた人が来た。

「お待たせー。」

「お、おはよう。あれ、花音だけ?」

「うん、那月に先行っててって、言われて。大希もおはよう。」

「おはよう!じゃあ那月待ちか。花音、ここ座っていいよ。」

「あ、ありがとう。」

三人がそろって、あとは那月を待つことになった。

でも電車が来るまではまだ、30分くらいある。

「ちゃんと余裕もってきて偉いな。」

「え、ありがとう。でもそれより早く来てるじゃん。」

「まあね。でも俺らは良いんだよ。」

なんだか歯切れが悪くなってしまったが、嬉しそうに照れる花音を見て、なぜかこっちまで嬉しくなる。

そうこうしているうちに、那月も到着した。

「お待たせー。」

「おう、おはよう。」

「おはよう。」

「二人ともおはよー。普通に飲み物持ってくるの忘れててそこで買ってたんだー。」

「そうだったのか。」

「へー、飲み物忘れるなんてさすが。」

「なにそれ。言い方酷い。」

「あ、ごめん。」

「なんてね。どうしたの幸次、そんな素直に謝って。」

「いや、せっかくの旅行なのにスタートで雰囲気悪くしちゃったかなって。」

「もー、気にしてないから。それにしても幸次はそこまで楽しみにしてくれてるんだ。嬉しー。」

「うるさいな、行くぞ。」

そう言って幸次は一番に改札へ向かった。

「待ってよー。」

那月がその後を追う。

いつもよりテンションが高くは見えたけど、そんなに楽しみにしてるなんて、幸次にしては珍しい。そう思うとこの旅行がさらに楽しくなってきた。

「よっしゃ、俺たちも行きますか。」

「そうだね。」

俺と花音も、二人を追って改札に向かう。

よし、今日と明日の二日間。長いようで短いみんなとの旅行。目一杯楽しんでやるぜ。


幸次

 そうして俺たちは、チケットを取っていた電車の指定席に座った。

今回取った電車は、ちょっとお高めで、ほぼ個室のような座席になっていた。

こんなの乗ったことないな。でも四人でゆっくり楽しめそうで良いな。

「すごいね。ちょっと良いのにした甲斐があったね。」

「本当にね、こんなの一回乗れるかどうかだよ。」

「いいね。」

「だな。ちょっとの長旅楽しもうぜ。」

四人四用の反応をしていると、電車は動き出した。

目的地までの所要時間は四時間を予定している。それまで、話したり景色を見たり寝たりして、みんなでこの時間を過ごす。

改めて、四人で二日間ずっと過ごすって、楽しそうだな。

今更だけど、俺はそう思った。

でもみんなに楽しみにしてるのをバレるのは少し恥ずかしいな。

「さ、この車内で色々楽しむのも良いですが。その前に、ついてからの動きを確認しましょう。」

那月はウッキウキの様子で、今回の旅行の日程を確認する。

「まあ、そこまでガッチガチに予定通り過ごすつもりはないけど。大まかな確認はしときたいよね?」

「そうだね。大半は行き当たりばったりで良いと思うけど、せっかくならみんなで行きたいって言ってたとこは行きたいからね。」

「花音と幸次もそんな感じでいい?」

「うん。」

「もちろん。」

てか、この確認するのって予定立てる時でよかったよな。

なんて野暮なことは言わないけれど、そう思った。

まあ、どうでもいいことだ。今日こうやって話せるんだから。

「ありがとう。じゃあ確認してこう。まずは…」


「到着したら、忘れ物がないかを確認して、電車を降りて駅からすぐ出るよ。」

まだ蝉が元気に鳴き始めている。外は暑くなってきているのに、この部屋はクーラーが効いていて涼しいな。

「駅はゆっくり回ったりしないのか?」

「まあ、今回は。帰りのときに時間があったら周ろう。」

「なるほど。でも駅をゆっくり見たい人とかいない?」

「私は帰りで大丈夫。」

「俺も大丈夫。」

「なら、帰りに行こう。それで、まずは泊まるとこに行こう。先に荷物とか置いちゃいたいから、バスに乗って旅館の近くまで行こう。その後、花音と大希の行きたいって言ってた水族館に。楽しんだ後、夕方くらいだろうから、幸次の行きたいハンバーガー屋さんに行って晩御飯。その後、ここの山で夜景を見てホテルに帰ってゆっくりするって感じで、一日目。」

「旅館から水族館はバスで行けるんだっけ?」

「そう、大体の移動は全部バスで行く感じだから。」

「じゃあ移動は問題なさそうだね。大希、乗り物酔いに気を付けてね。」

「なんで俺!?まあ大丈夫よ。そういう花音は大丈夫か?」

「うん、私は大丈夫。」

「まあ、こん中で不安があるのは大希くらいだな。迷子になるなよ。」

「幸次まで。」

「はーい、じゃあ二日目ね。朝はちょっとゆっくりできるから、油断はしないでね。余裕をもってチェックアウトして、私の行きたい大型ショッピングモールに行くよ。そこで楽しんで駅に戻ってくる。そんで帰ろう。」

「帰りは最終の電車だよな?」

「そう、だからゆっくり観光はできるけど、乗り遅れないようにね。」

「いいね、これでみんなの行きたいところも全部行けるし、余裕あったら追加で行ったりできるな。」

「そうだね。良い感じだと思う。」

「俺もこれでいいと思う。」

「よし、じゃあまあ大まかなのはこんな感じで行こう。決まったらさらに楽しくなってきたわー。」

「だな!」

「だね!」

「そうだな。」

「じゃあ、当日も楽しんで行こー!!」

「おー!!」


決めた時と似たような感じで確認を終えた俺たちは、すっかり街から外れた景色を楽しんでいた。

こっちに来ることは滅多にないから、俺たちは新鮮な感覚で景色を楽しんでいた。

「自然豊かでいいねー。」冬

「そうだねー。穏やかですねー。」大

「二人とも語尾が伸びてるよー、豊かすぎるよー。」

「那月もじゃねえかー。」

そんな感じでふざけて笑って楽しんでいた。

そのうち、電車はトンネルに入り真っ暗になった。

「あーあ、見る景色無くなっちゃった。大希、なんか持ってきてない?」

「那月さん。そういうと思って持ってきてますよ。」

そう言って大希はカバンからカードゲームを取り出した。

「さすが、じゃあ始めよっか!」

「私、このゲーム得意だよ。」

「へー、花音これ得意なんだ。じゃあちょっと頑張らないとなあ。」

「じゃあさ、このゲームで負けた人に旅の途中でやってもらう罰ゲームとか作る?」

「ありだな。」

「うわ、さすが那月と幸次。嫌なこと思いつきますね。」

「それほどでも!」

まあ、俺も勝てる確証はないが、こういうのは罰ゲームがあった方が楽しそうだろ。

そしてゲームが始まった。

宣言通り、花音は圧勝を続けた。本当に強かったよ。

俺と大希と那月で接戦を繰り広げ、三人が1敗で並んだ。おそらく最終ゲームになるだろう。

「花音強いね。」

「ね、言ったでしょ?」

「こんなに強いのね。」

「ここまでとは。」

みんなで花音の強さに驚く。

花音は嬉しそうに、照れながら笑う。


最終戦は熱戦の末、大希が負けた。

なんというか、わかってたよねみんな。なんとなくこういうのってこういうやつが負けるようにできてる。

でも誰が負けてもこの後のこと考えてないよ?

「あのー、幸次。言いにくいんだけど、作者の代弁しないで?」

「那月、心読まないで。」

「いやあの。負けたんだけど。」

「どんまい。」

「花音軽っ。」

「まあ、罰ゲームは旅の途中で決めるわ。」

「おお、わかった。」

ゲームで盛り上がったこともあって、落ち着いたころにはみんなは眠りについた。

まだ始まったばかりだけど、こうしてみんなといる時間は、寝ていようと話していようと遊んでいようと。たのしいな。

今日何回目かの、楽しいを実感して俺も眠りについた。

窓から見える景色は、もうすっかり緑に染まっていた。


花音

 「…。ん!かのん!」

大希の声がして、はっと目が覚める。

「ご、ごめん。ありがとう。」

「なんもだよ。ぐっすり寝てるから起こすのためらっちゃったよ。」

大希は優しく笑う。

気が付くと電車は目的地に到着していた。

一体何時間寝ていたのだろう。

「ほら、二人とも先に降りちゃったから。俺たちも行こうぜ。」

「うん。」

私も荷物をまとめて電車から降りる。

「お、おはよー。」

「おはよー。ごめんね。お待たせして。」

「なんもなんも。俺たちもちょうど起きれただけだったし。」

「そうだぜ!降りれたからよし。」

そうして、私たちは改札に向かった。

改札から少し歩いたところにあるバス停で、10分ほど待った時に、乗るバスが来た。

私たちはそのバスに乗って、15分ほどで旅館に着いた。

「ここまでは早かったねー。」

「そうだな。にしても良い旅館だなー。」

「ほんとうに、綺麗なところ。」

「よし、中に入っちゃうか。」

1泊ということもあって、私たちの荷物はそこまで多くはないけれど、先に旅館に置いて行こうという話になった。

「じゃあ、また後でねー。」

大希と幸次と別れ、私たちは部屋に入る。私たちの泊まる部屋は二階の部屋だった。

部屋に入ると、古き良き感じの部屋で、私たちの気分は最高潮になった。

「良い部屋だねー。」

「中も外もいいって、本当に最高だね。」

那月と一緒にテンションが上がった。

「見てー!窓の外、緑の中に海が見えるよー!」

窓際に、テーブルと椅子があり、その奥にある窓から見える景色は、とても美しかった。

「ここにしてよかったねー。花音。」

「こんな綺麗な景色見れて、良い部屋に泊まれて。来れてよかった!」

改めて、みんなと旅行に来れたことに感謝する。

「さあさあ。ここでゆっくりしたいけど、次の予定もあるから。二人とも合流しますか。」

「そうだね。帰ってきたらまたゆっくりしよう。」

次の予定のために私たちは部屋の外に出る。

もっとこの部屋でゆっくりしたいけれど、まだまだ楽しい予定がいっぱいだから。帰ってくるまでの我慢。

大希と幸次は先に部屋から出ていたようで、一階のお土産コーナーを見ていた。

「二人ともはや。」

「いやー、部屋でもう少しゆっくりしたかったけど、幸次が早めにここ見たいって。」

「そうだったの。お待たせしたかな?」

「なんもなんも。そんじゃ行くか。」

売り場を後にし、私たちは水族館に向かう。

旅館の前のバス停からバスに乗り、乗り換えをして、水族館に着いた。

「意外と早く着いたねー。」

「そうだな。」

ここの水族館は前々からずっと行ってみたかったので、念願と言えるかな。

水族館に入ると、まず初めに大きい水槽がお出迎えしてくれた。

「大きいな。」

「ここの水槽って、日本一の大きさなんでしょ?」

「そうなの。そう考えたらさらにすごく見えるよね。」

三人で話していると、キラキラした目で水槽を見つめる大希が目に留まった。

「大希も来たいって言ってたもんね。」

「おう、花音。そうだね。ずっと来てみたくて。実際に見たらこんなにすごいんだな。」

子供のように夢中に水槽を見ている。でも、その姿がなんだか好きで。また大希のことを好きと思った。

私たちは水槽を優雅に泳ぐさかなたちに見とれながら話していた。

そんな時間がとても楽しい。

そうしていると那月から声をかけられた。

「じゃあ、私見たいものあるから先行ってるね。」

「あ、わかった。ごめんね夢中になってた。」

「なんも。ほら、幸次行くよ。」

那月と幸次は先に進んでいった。

「もう少しここ見てるか?」

「うん。」

大希にそう声をかけられ、私は返事をした。

この水槽だけでもずっと見ていられるな。

最初の水槽を思う存分堪能したあとは、中くらいの水槽が並んでいるゾーンに入った。

「こんなにいろんな種類の魚いるんだー。」

「ほんとだねー。」

ていうか、二人で水族館周るってこれ。ほぼデートじゃん。

そう思うと余計に恥ずかしくなり、緊張してきた。

「お、花音の好きなウナギいるぞ。」

「ふぇっ。ああ、ほんとだ。」

私がウナギを好きだってこと、おぼえてくれてるんだ。

そう意識すると余計に緊張してきてしまった。

「次はこっちか。」

大希はそう言って先に行った。

「あ、ちょっと待って。」

人が増え始めて、早くも大希を見失ってしまいそう。

その時私は大希の手を握っていた。

「えっ。」

「あ、ごめん。」

「そうだな。人も多くなってきたし。ほら。」

そう言って大希は私に手を差し出す。

それに従って私も、手を握る。

こういうこと、すっとできるのって、やっぱり私のこと何とも思ってないのかな。

そこからの記憶はすごくあいまいだ。でもとても楽しかったことは覚えている。

大希と手をつないで水族館を周り、本当にデートをしているような気持ちになっていた。


「いやー、楽しかったねー。」

あの後は、みんなで集合してイルカショーを見て、お土産を大希に買ってもらった。

今は、有名なご当地チェーン店のハンバーガーショップで夕飯を食べている。

「最後のイルカショーもすごかったな。」

「来れてよかったわー。な、花音。」

「うん、みんなと来れてよかった。」

行ってみたかった場所が特別な場所に変わったことは、一生忘れられない思い出になった。

「お待たせいたしましたー。チキン南蛮バーガーです。」

私が頼んだバーガーが届いた。

「お、みんなのそろったね。それじゃあ、いただきます。」

みんなで手を合わせて夕飯を食べる。

外食は滅多にしないから、久しぶりの外食はとても美味しかった。

やっぱりみんなと食べてるからかな。

「ここのハンバーガーってこんな美味いんだ。」

「ねー。すごい美味しい。」

「このごまだんごも美味しいぞ。」

「んっ、本当だ。」

お店ならではの商品も、どこにでもありそうな商品も、全部美味しくて。もちろん味だってどこのものとも一緒なものはなく。私たちは全部を美味しく頂いた。

しばらく食べに来れないだろうハンバーガーを堪能して、私たちは山へ向かった。

山へ向かう途中のゴンドラは二人乗りだった。私たちは男女に分かれて頂上へ向かった。

「ここの夜景は日本の中でも5本の指に入るくらいきれいなんだって。」

「あ、そうなんだ。それ聞いたらさらに楽しみになってきたよ。」

「花音にそう言ってもらえてうれしいよ。」

那月との二人きりの会話は、朝以来無かったから、なぜか久しぶりな感じがする。別にもっと話してなかったことは沢山あったんだけどな。

それだけこの旅が詰まったものになってる証拠かな。

そう思うと、また楽しい気分になってきた。

「そういえば。どうだった?水族館デート。」

「えっ。ああ、楽しかったよ。」

「えー、それだけー?好きな人とのデートだよー?」

「いやまあ。すごいどきどきして水族館どころではなかったけど。でも水族館もちゃんと楽しんだよ。」

「そう。それはよかった。」

いきなり何を言い出すのかと思えば。でもそれは事実。どきどきはしたけどちゃんと水族館も楽しんだ。だって行きたかった場所だし。

「それに手も繋げたんだ。」

「えっ!!そうなの!すごい進んでるじゃん!」

「でもまあ、向こうは気にしてないって感じで。」

「いやいや。向こうも少しは意識してくれてるって。」

「そうかなー。」

まだ大希の手の感覚が残っていることに、少しのうれしさを感じながら、那月と話を進める。

ていうか。

「なんで那月、私が大希のこと好きだって知ってるの!!」

「いやー、まあ。あんたの姿見てればわかるよー。それにやっぱり好きだったんだー。」

あ、墓穴を掘った。でもそんなに私ってわかりやすかったんだ。

そうわかると、恥ずかしさで火が出そうな花音であった。

「まあ、でも好きってわかったのは最近だし?」

「ふーん。でも好きなんでしょ。ならいいじゃないの。」

「なにそのにやけ顔!」

那月はにやにやしながら話してくる。

二人で笑いながら話していると、ゴンドラはあっという間に頂上へ到着した。

大希と幸次は先に乗っていたので、上で待っていた。

「おし、みんな来たな。」

「それじゃあ行こうぜ。」

頂上までは長かったけれど、那月と話していたらあっという間だった。

ゴンドラから降り、少し歩いたところに展望台の表示があった。

最後の坂を登り終わると目の前にはきれいな景色が広がった。

「わー、綺麗。」

「ほんとだねー。」

「すげー、こんなきれいなんだ。」

「家とかの電気がいい感じにきれいに見えるんだね。」

圧巻の景色に四人で見惚れる。

さすが日本五大夜景と言われるほどに景色は綺麗で、私は鳥肌が止まらなかった。

「この展望台の上からも見てみようぜ。」

山の頂上には展望台があり、さらに上から見ることができた。

展望台に上り、全方位を見ることができるようになると、さらに圧巻の景色が広がった。

「やば、上からだと邪魔な木も無くて、さらに綺麗に見える。」

「だな。それに全方位綺麗に見えるし。」

頂上からの景色も展望台からの景色も堪能した私たちは、みんなで写真を撮って下山した。

帰りもゴンドラで降りるのだが。

「じゃあさ、帰りはまた別のペアで降りない?」

那月がそんな提案をした。

「ありだな。」

「ありだね。」

大希と幸次もそれに賛同して、ペアを決めることになった。

「じゃあ、グッチーグッチーアッタッチ!」

那月の掛け声で、みんなが手を出した。


「ごめんねー。俺で。」

私のペアは幸次になった。

「いやいや!!なんで謝るの!」

ゴンドラに乗ったとき急に幸次は私に謝ってきた。

「まあ、那月の考えはわかってたんだけどねー。大希と一緒にさせてあげられなくてごめんねー。」

「いやいや、気にしないで!別に誰と乗っても楽しいんだから。」

「それなら良いんだけど。降りたら那月に怒られっかなー。」

那月に怒られている幸次を想像して思わず笑ってしまった。

この四人ならだれといても楽しいんだよ。だからみんな気を使わないでほしいな。

「そうだよな。気を付けるわ。」

「あれ、声に出てた?」

「そういうことにしとく。」

「やっぱり心読んでるじゃん!」

久しぶりの感じにまた私は笑う。

そして私は、旅の最中にずっと気になっていたことを聞く。

「そういえばさ、朝女の子と話してなかった?」

そう、朝の駅でのこと。

那月と一緒に行ったけど先に行っててと言われて大希たちのところへ行った。そのときに大希と幸次が女の子と話している所を見た。

大希と親しげに話すその子のことが旅の最中ずっと気になっていた。

「あー、見てたんだ。」

含みのあるような言い方に私の不安は増す。

「別に、ただの高校の時の友達だよ。”とうこ”っていう子らしい。俺は話したことはなかったんだけど、大希から仲の良かったやつがいるって散々聞いてたからな。」

「そうなんだ。同じ高校で大希と仲良かったのに知らなかったの?」

「そうなんだよ。二年に上がってからクラスも離れてめっきり会わなくなったらしくて、だから俺も会ったのは今日が初めて。」

「そうなんだ。」

深く知れなかった相手に対して少し不安な気持ちになる。

大希はその子のことを今どう思っているんだろう。

もしあの頃に好きだったら、今日たまたまあってまた。

「まあ、高校でそんな会わなくなった相手に対してそんなに思い詰めることないって。」

幸次に言われて気づく。

そっか、たしかに好きだったなら高校でもっと仲良くなってるよね。

「そうだよね。ありがとう。」

スッと心のもやもやが晴れた感じがした。

こんなに大希のことで思い詰めるなんて、そんなに私は大希のこと想っているんだ。

改めて大希への気持ちに気づかされた花音であった。

その後は行きの那月と同じようなことを聞かれ、水族館でのエピソードを話しているうちに麓に着いた。

そういえば、幸次と那月側の話聞いてないな。旅館に着いたら那月に聞こうっと。

今回は私達が先に乗ったので那月と大希を待つ番だ。

意外とゴンドラとゴンドラの距離があったようで、少し待っている時間は長かった。

まあ、幸次と話していればあっという間なんだけどね。

「そういや、花音はこういう時に那月に嫉妬とかしないの?」

「そうだね。あんまりしないかも。元々の性格もあるだろうし、那月だしね。」

「そうか。じゃあ那月以外なら嫉妬するのか今度確認しないとね。」

「まあ、それはしてもしなくても。」

確かに、私って嫉妬とかしたことないな。私って冷たい人なのかな。

少し不安になった。

「でも、学校のときの、二人で忘れ物取りに行ったときとか、さっきの透子さんのことは気にしてたよね。あれは嫉妬とは違うのか。」

「あー。どうなんだろうね。私でもわからないや。」

幸次の困ったような心配しているような。でも笑っている顔に、私も笑って返す。

そうこうしているうちに、二人の乗っているゴンドラも下に着いた。

「お待たせー。」

「もう那月がずっと喋り続けててまいったよ。」

「なんだとー。」

「まあまあ。みんな着いたということで、早く帰ろうぜ。」

「そうだねー。」

幸次の発言で二人の喧嘩?は収まりみんなで旅館へ戻る。

帰りのバスの中、幸次は那月にずっと何かを言われていた。

幸次が言っていた通り、那月に叱られているのかな。

そう考えたら少し面白くて笑ってしまった。隣の大希には不思議な顔をされたけど、まあ黙っておこう。

そうこうしているうちに、バスは宿の最寄りに到着した。


那月

 「ぶわー、疲れたー!」

宿に着いた私たちは、すぐにお風呂に入り部屋でくつろいだ。

「今日一日動きっぱなしだったもんねー。」

今布団に入ればすぐにでも眠れそうだ。

でもすぐに寝ちゃったらもったいない!まだ8時半だよ。これはまだまだ花音との二人部屋を楽しまないと!

「まあ、ゆっくりお茶でも飲みながら話そうよ。」

「そうね、なにも持ってきて無いし。」

おしとやかな花音にはすごく似合うゆっくりお茶でも飲もうよという言葉。

なぜかそこにテンションが上がる。


「お風呂も広かったねー。」

広縁で、椅子に座りお茶と少しのお菓子を広げて、夜の景色を見ながら話す。

夜でも海が見え、緑も踊っている。

「すごかったよね。いろんな種類もあって。また来ても楽しめそうだよ。」

「明日の朝も入ってみる?」

「起きれたら入ろう!」

起きれたら。は自分で言っても信用できないけど、花音との約束だから起きれそう。

「そう、ずっと思っていたんだけど。私たちもそうだけど、那月も幸次と二人で水族館回っていたでしょ?そっちこそ何もなかったの?」

花音に不意に聞かれて私は少し驚いた。

「なんで?何かあったって、私たちに?」

「うん。那月は私のことを思って、二人で行ってくれたのはわかるけど。二人の方はどうしてたのかなー?って。」

別にやましいことは特になかったけど、花音にすべてを見透かされているようで、少し震えていた。

正直、まだみんなには幸次のことを好きって知られたくない。

それに、まだ確定してないし。

そう那月は自分に言い聞かせる。

「べつに、二人で普通に歩いてただけだよー。あとは花音たちの方いい感じに来てるねーとか気にしてたくらいかな。」

「あ、そうなの。てかそんな時まで私たちのこと考えないでよ!」

恥ずかしがる花音はとてもかわいかった。

こんな子に好かれるなんて、前世でどんな徳を積んだんだ。大希よ。

「でも水族館はちゃんと楽しかったよ。だから気にしないで。」

これは本音だった。

「そっか。ならよかった。」

私のことを気にかけてくれていたのに気づけて良かった。こう言わないと、ちょっと落ち込んじゃいそうだし。

でも楽しかったのは本当だから。


「ほら、幸次行くよ。」

「あいよー。」

大希と花音を二人にするために、私は幸次を読んで先に行くことにした。

でもこれは私の策略でもあった。

これを口実に私も幸次とデートができる!

そんなよこしまな気持ちで私は幸次と先に進む。

「那月は水族館好き?」

「そうだね。まあ人並程度には。」

「そうなんだ。いいよね、水族館って。なんか時がゆっくりに感じれるっていうかさ。」

「わかる!すごい落ち着くよね。」

「そう。だから俺も来るのは好き。」

幸次も水族館好きなんだ。じゃあ四人とも好きじゃん。来てよかった。

そして私は幸次といろんな魚を見て回った。

特に変わったことは無かったけど、一緒に水族館を回ったという思い出は宝物だ。


振り返れば本当になんの変哲もなかったな。でも良いか。

そして私たちは、今日の話や明日の楽しみなこと、大希をどうやって意識させるかなどを話した。

この時間はとても楽しかった。ずっと続いてもいいくらいに。

でも、結局私は眠くなって、そこでお開きになった。

時間は23時を回ったころだった。


花音

 那月と一緒に布団に入ったけど、どうも眠りに付けない。興奮が覚めてないからかな。

私は那月を起こさないように、そっと布団から出る。

「少し、夜風に当たってこよう。」

部屋の戸を静かに閉めて外へと向かう。

私は外に出て、海を見たくなったので海へ向かった。

海へはそう遠くなく、歩いてすぐに着いた。

浜辺のそばにあるベンチに座って、海を眺める。

夜風は優しく吹いていて、波も穏やか。

私はその風景に釘付けになっていた。

ありきたりなのは、ここに大希も来て一緒に過ごすってものだけど。

そんな出来上がった作品みたいな流れは無いよね。

ザッザッ

後ろから砂利を踏みしめる音がした。

振り向くとそこには大希がいた。

「あれ、花音!」

「大希。どうしたの?」

私は思っていたようになって、びっくりしたけど、悟られないように落ち着いて聞いた。

「うん。なんか寝れんくて。花音も?」

「うん。一緒。」

大希は隣に座る。

夢かなぁ。

と思ってしまうくらい、好きな人との起きて欲しいイベントがたくさん起こる。

沈黙が波の音と夜風の音でより一層際立つ。

でも、この沈黙すら心地いい。隣に大希がいるってだけで、楽しい。

大希も、嬉しいって思ってくれてるかな?

そう思い少し大希の方を見る。

大希は景色を見つめている。その横顔もまた花音の気を引き付ける。

大希はその視線に気づいて私の方を向く。

「?どうした?」

「んーん、なんでもないの!」

大希は不思議そうな顔で、また景色を見る。

その姿は、花音の勇気を出すには十分すぎた。

きっと、今を逃したら今後言うタイミングは無いかも。

「ねえ、大希。」

「ん?」

「あのね、私。」

ここまできて、言葉に詰まる。やっぱり私には無理だ。

しばらく話せずにいると、大希が話し始めてくれた。

「俺さ。今日みんなと来れてよかった。だって、友達と旅行なんて滅多にできないし。」

「そうだね。」

大希のおかげで空気が少し軽くなった気がした。

わたしはまた、伝えたいことを話す。

「だからさ。大希にはすごい感謝してる。あの日、声をかけてくれたおかげで今の私があるから。」

初めて二人が出会った日を思い浮かべて、私は話し続ける。

大希は優しい目で、うなずきながら私の話を聞いてくれる。

「大希と仲良くなって、幸次とも話すようになって。那月と仲良くなれて。那月と仲良くなれたのも、大希があの日声をかけてくれたからなんだよ。」

「え、そうなの。」

大希は驚いた顔で言う。

「うん。那月とは高校は一緒だったんだけど、話したことなくて。でも大学で見つけて、高校一緒ってとこから話すようになって、仲良くなれたの。その最初の話しかけるのを勇気出せたのは、私が大希に声をかけてもらったからだよ。」

「そうだったんだ。でもそれは花音が一番頑張ったことで、俺が感謝されることはしてないよ。」

「んーん。そんなことないよ。全部大希のおかげだよ。ありがとう。」

「そっか。ありがとう。」

大希はきっと、その重大さに気付いてないと思う。実際、私が大希と仲良くなれたのは大希が声をかけてくれたから。那月に声をかけようと思ったのは、話したいからはもちろんだけど、声をかけてもらったから、今度は私が別の人にそれをしたいと思えたから。

まあ、言葉にするのは難しいから言わないけど。本当に感謝してる。

その気持ちを伝えられただけで、今日は良いかなと花音は思った。

「大希で良かった。」

そうつぶやく。恥ずかしくて大希の方は見なかった。

どんな顔をしているかな。もしかしたら気持ち悪いって思われたかな。

色々な考えが花音をむしばむ。

夜はまだ長い。二人はまだ、波を見ている。

旅行の地は函館をイメージしています。実際の地をモチーフにオマージュして物語としています。

さあさあ、大希と花音の進展はありそうですね。ここからどうなるのかが楽しみであります。

自分も旅行に行っている気分になりながら書いています。楽しいです。

大希と花音のいい雰囲気はさることながら、幸次と那月も少し関係が進んだのではないでしょうか?

この先の話にご期待ください。

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