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食事事情

 村の中央には人が集まっていた。


「ユイファこっちだ」


 タジキさんが僕達を見つけて呼びかけてくれた。


「枯草を集め干すところまでやった」

「そうか」

「マナブはここで待て、私が食事を受け取ってこよう」

「大丈夫、自分で受け取るよ」


 動き出そうとする僕をタジキさんが呼び止める。


「獲物をとった者は座って待つのが習わしだ。ここに座り待て」

「ということだ、私に任せておけ」

「わかったよ」


 ユイファは毛皮の腰巻をひるがえして足取り軽く向かって行った。


「マナブは家は作れるか?」


 家か、そんなことを訊かれるとやっぱりここ以外に住む場所がないのかと気持ちがズンッと重たくなる。


 家はとても簡素な作りだった。想像するに支柱になる木を6本ほど立ててまず四角形を作る。

 壁は支柱を縫うように長い枝をしならせて嵌めこんで壁を作っているのだろう。


 自然にある枝を重ねているだけでなので壁は隙間だらけだった。


 それと屋根は寝床ようの干し草に似たモノがかけられているようだったので材料さえあれば多分同じような家は作れると思えた。


「まだ自分で作った事はないですが、多分作れると思います」

「そうか、困った時は言え、ユイファを頼ってもいい」

「ありがとうございます」

「うむ」


 大きな葉っぱを皿代わりとして料理が3品並ぶ、何かの粉を練って焼き固めたクッキーのようなものと焼き魚、魚と葉野菜が煮込まれたスープだった。


「魚が一度にこんなに食べられることはなかなか無い。これはマナブのおかげだな」


 ユイファが焼き魚の半身を手に取り美味しそうに味わう。


「喜んでくれて嬉しいよ」

「魚の身は柔らかいからな好きだぞ」


 ユイファは手を使って魚の骨を避けて身をほぐし口に運ぶ。


 しゃべりながらも手は絶え間なく動きクッキーを齧り、スープを含んで口の中でふやかすように食べていた。僕もそれに見習って食事を進める。


 確かにクッキーだけだと味がないだけでなく、口の中の水分を根こそぎ奪っていくので飲み込む時に喉に引っかかる。

 スープと一緒に食べないと飲み込むのに苦労しそうだ。


 スープは、ほのかの塩味と唐辛子のような辛味と草の風味のした味の薄いスープだ。辛うじて魚から出た出汁が旨味となっている。


 料理の中で僕が一番美味しいと感じたのは焼き魚だった。


 こちらは昨日食べた何の味付けもしていない魚ではなくうっすらと塩の味と香草の香りで川臭さが気にならなくなっていて普通に美味しかった。


「マナブ、また魚は獲れるのか?」

「獲れるとは思う」

「そうか、今度はいつ取りに行く? 明日か?」

「僕は構わないけど......」

「食材はとらないと明日食べるものがないぞ」


 黙々と食事を続けるタジキさんにも話題を振ってみる。


「普段もこのように村全体で獲物を分けるんですか?」

「いや、自分が食べるものは自分で獲るのが基本だ。だが大きな獲物を捕まえたときなどは今日の様にふるまう。肉はすぐに腐るからな」

「マナブ、もちろん困ってる人は助けるぞ、しかし貰ってばかりだと人はダメになる。マナブが面倒を見ないといけないのは妻と子だけだ」

「それじゃぁ魚を獲りすぎた時はどうすれば?」

「そんなのは簡単だ、マナブの欲しい物と交換すればいい」


 物々交換か、それもそうか頭からその考えが抜け落ちていた。

 ひとりですべてを賄うことなんてできないから得意な事でやりとりをすればいいのか。


 この様子だとおそらく貨幣はこの村には存在していなさそうだ。


「そうだな、マナブが面倒をみたいというなら私を妻にするがいい」

「ユイファ!」

「......冗談だ。父よ、大きな声をださないでくれ」

「びっくりしたよ」


 タジキさんは大きくため息をついて、首を振っていた。


 食べるものは自分で獲らないといけないとなると、夜食べるものが何もないどうしたものか、正直に言うと粗食になれていない僕はこのお昼の量も少なく感じている。

 腹八分目が体に良いとは聞くけど、満腹感を感じられないのは慣れていないので食べ足りなく感じたまま食事を終えるのは地味に辛い。


 ユイファやタジキさんは今回の食事に満足しているようだ。


 普段はもっと節食しているのかもしれない。あのクッキーみたいなのがここの主食なのだろうか? あれを毎日食べるとなるとキツイな。


 お米があるのとないのとではやっぱり食事の満足感が違う。


「ユイファ達は夜の食事はどうするの?」

「マナブは夜も食べるのか? 私たちは朝と昼に食べて、夜は食べない」

「そうなんだ、夜に食べる人はいないの?」

「夜に食べれば、朝に食べるものがなくなる。朝に食べなければ起きてから力が出ない」


 この村はどうやら食糧の備蓄もうまくいっていないらしい。その日、その日を生きるので精一杯なんだ。


 でも魔法のある世界でここまで不便な生活に成りえるのだろうか?

 魚だって魔法ひとつで簡単に手に入った。正直僕なら今日の様に毎日みんなに魚をふるまう事もできると思う。


 ......こんな魔法という便利な方法があるならどうとでもなりそうな気がするのだけど何か問題があるのだろうか?


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