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咲く君のそばで、もう一度  作者: 詩門
第二章
44/111

44.隣を歩く人は

 待たせている隊員達の所へ向おうと城を出る。

 空の闇は深くなっており、星が瞬いていた。

 賑やかな街。大切な人と笑い合う人々の中をリナリアと並んで歩く。


「いつここを出るんだ?」

「明日にしようかな。キルにもう一度、会いに行こうと思って。次いつ会えるか……分からないから」

「そうか」


 そうした方がいい。

 会えなくなる。それは突然やってくる。思い出の中でならすぐ会えるのに、この世界ではもうカイトに会う事は出来ない。


 そうだ、会いに行かないと。


 キルがカイトの故郷に眠る場所を作ったと言っていた。ちょうど明日は非番。でも、まだ行くのが少し恐ろしい。


「ヴァンは明日、お休みなんだよね? いつも何してるの?」

「特に何もしてない。本読むくらいだ」

「ふふ、本当に好きなんだね。そうだ! 今度私のおすすめ教えてあげる」


 今度。それはいつだろうなんて、そんな事別にいいのに。ずっと慌ただしい胸が、煩わしい。彼女に気づかれないように、小さくため息を吐く。この気持ちをカイトに話したら、答えをくれただろうか。


「でも、明日はカイトの所へ行こうと思ってる。まだ、会いに行ってないんだ」

「そう。カイトさんきっと、貴方の事待ってるよ。……あの、よかったら私にも場所、教えてもらってもいいかな」

「なんで?」

「私も……カイトさんに祈りを捧げたいの」

「なら、明日一緒に行くか?」

「えっ!?」


 リナリアの喫驚した声、自身も驚いた。今自分が何を言ったのか分からなかった。次第に頭がそれを理解した時、なんでこんな馬鹿な事をと口を押さえるが、時すでに遅しだ。

 

「いいの?」

「いや、明日帰るんだったな。だから別に」

「大丈夫だよ。お昼の前にキルの様子見てから帰ろうと思ってたから」

「なら……その後、正門でいいか?」

「うん。お花、買っていこうね」


 何でこんな事を言ったのか。それは少しでも……過った言葉は考えない。


 正門へ着くと、星空を外で眺めようとする人で溢れていたその流れを避ける様に、入り口の隅で待っている隊員たちの姿が見える。カイリも来ていて、ジュンと笑いながら話しをしているが、他の隊員たちは気まずそうな顔で黙って立っている。ダイヤは……相変わらず。ムスッとした顔をしているアルと目が合う。

 

「あっ!! 隊長!!」

「もぉ遅いっすよ」

「悪い」

「やぁっと、この空気から解放されるぅ」


 けっとダイヤが舌打ちをする。それなら離れていればいいのにとは、待たせていたので言わない。


「それで、どうだった?」

「あぁ、俺も見るよ」

「本当? じゃあみんなで一緒に見れるね!」


 カイリは嬉しそうに、にっこりと笑う。

 ダイヤがリナリアの傍に行く。


「おい、リナリア行くぞ」

「ねぇ、みんなとここで見よう」

「はぁーーーーっ!?!?」


 周りの人が振り向く程の怒号に、耳を塞ぐ。本当にうるさい。


「ざっけんなっ!!」

「お兄ぃは本当にうるさい。なら、私達もご一緒してもいいですか?」

「もちろんですよ。人数は多い方が楽しいですから。ね? 隊長」

「そうだな」


 横目でダイヤを見る。今にも噛み付いてきそうな狂犬の様な顔で、わなわなと震えていた。それを気にせずにジュンが、懐っこくリナリアに抱きつく。


「ね、リナ。今年は何お願いするの?」

「もう決まってるよ」

「けっ、くだらねぇ。星に願って叶うなら俺は、いくらでも願ってやる」

「ダイヤは夢がない」

「るせぇなっ!」


 三人は話をしながら歩き出す。グレミオがその姿を見ながら微笑む。


「仲いいですね」

「そうだね」

「あれ、いいって言うの?」

「アルとカミュンもぉ〜似た様なもんでしょぉ?」

「どこがっ!!」

「違うって、マリーちゃん!!」


 隊員達は楽しそうに話しているが、俺は離れていくリナリアの方へ耳を傾ける。


「そうだ! リナ、誕生日おめでと!」

「ありがとう。ジュンちゃん」

「19になっても、ちっこいままだな」

「もぉ、やめてよ」


 ダイヤは揶揄うようにリナリアの頭をポンポンと叩き、そして人のざわめきに中微かにおめでとう、っと言ったのが聞こえた。

 その光景に思いを馳せた。

 並んで歩く三人に、自身とキルとカイトを重ねて見る。俺達はもう三人で歩く事は、どう願っても出来ない。そしてそれとは別に、これからも彼女の隣を歩くことが出来る二人が……羨ましかった。


 もう、やめよう。


 徒労感のような疲れに、うんざりした。

 今度は騒がしい隊員達の話を、適当に聞く。


「決めたっ! 今日僕はお前が消し飛ぶように願う!!」

「じゃあ俺は、お前の身長がもっと縮んで、ぺちゃんこになるように願ってやるぜ!」

「言ってる事ぉ子供すぎぃ」

「星にはもっと、素敵な事を願いましょうね」


 皆は楽しそうだ。

 はぁ。


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