11.道中①
アデルダを出てどれくらい経っただろう?
空を見上げる。太陽は真上にある。
「みんな、もうすぐファリュウスに入るよ」
セラートが地図を見ながら平原の先を指差す。崩れ朽ちた石垣が見えた。昔国境ラインに作られた石垣をすり抜け、俺たちは神聖国に入る。
「順調に来れたし、ここで少し休憩しよう」
セラートはそう言って何もない平原に馬車を停める。俺は周りを見渡し、異常がない事を確認する。ここなら見晴らしもいい。皆馬から降り、馬車の傍へと集まり腰を下ろす。水を飲んだりと各々体を休め出す。カミュンがふぁっと欠伸をしながらだるそうに口を開く。
「神聖国って他国よりちっせーよな? もういっそ攻めて無理やり聞き出したらどうだ?」
「馬鹿じゃないの、戦争でもする気? それにアドニール様がいるんだからボコボコにやられるのがオチ。あっ! だけど隊長がいるから……でも、二人が敵対するのは嫌だな。隊長はどう思いますか!?」
もう俺はアルのこの手の話に関しては、無視する事にした。
「一人でうるせぇな。だけどよ、同盟国っつんならもうちょっと情報流してくれりゃいいのに」
本当にその通り。そうしてくれてれば俺が先ほど嫌な気持ちにならずに済んだ。
「同盟国とは言え自分の国が一番大切だから、より有利に事を進めたいのさ……それに元々仲がいいとは言えないしね。南にある帝国の防衛の為に仕方が無い、っと言ったところだろう」
「それも、今はアドニールさんがいるから必要ないって事……ですかね」
「直接彼の力を見たことはないけどね、光の加護の力はまさに神を彷彿とさせる強さだそうだ」
「実際神聖国でも崇められる存在ですからね。元々精霊を崇める宗教色の強い国ですから」
セラートとグレミオの会話を聞きながら、考えを巡らす。神の様な力とは一体どんなものであろうか。そもそも何故彼だけが他の人とは違う力を授かったか……その力は誰が与えたのか。変な面をつけ、素顔も素性もよく分からない。瘴気の中へ入っても無事。
一体何者なのだろう?
「ねぇ、ヴァン!」
カイリに呼ばれて我に帰る。
「なに?」
「もぉ、昨日瘴気の話! 聞いてなかったでしょ?」
どうやらいつの間にか昨日の話に変わっているようだ。もぉ、っと頬を膨らますカイリから視線を逸らし、隣に座るカイトと目が合う。カイトはどこか憂いた様な目で俺を見ていたが、手元に視線を戻す。セラートが話しかけてくる。
「報告書にも書いてあったけど、瘴気の発生を目撃したそうだね」
「はい。ですが、それでも何か分かったわけではありません」
「うん。でも、幸先いいね。今日も見れるかも」
セラートの発言に皆無言になる。この発言はどうなのだろう。それはいいと言っていいのか、悪いと言っていいのか微妙だ。それを感じたのかセラートが話を変えてくる。
「ところで、私は君たちのことも知りたいな。君たちが優秀なのは分かっているけど、具体的に隊ではどんなポジションでやっているのかな?」
褒められた事が嬉しいのか単純の代名詞カミュンが、鼻息を荒らげ食らいつく。
「俺はこの剣で敵をぶった斬る担当っす!」
意気込んだわりには単純な説明だ。
「まぁ、ホントにそれ以外なんもないけどね。僕の加護は木ですから、基本動きを止めたりとかサポートですか」
「私は〜火だからぁ、これで一発燃やしてますねぇ」
「ええっと、私は水なので、サポート役として立ち回ります。回復とかあと防壁を張ったり」
「私は、範囲の状況を探ったり、探知するのが得意です。あっ! 土の加護です、はい」
グレミオが最後に言い終わると、セラートは嬉しそうに話し始めた。
「なるほど。みんなしっかりと役割があって、それがうまく回っているんだね」
「総隊長はぁ水でしたよねぇ〜」
「そうだよ。この髪のせいかな? 分かりやすいんだ。ちなみにこの子は風の加護だよ」
「えっ、あ、はい」
軽くセラートに肩を叩かれたカイトは、慌てて返事を返している。カイトはさっきから何だか様子がおかしい……調子でも悪いのだろうか。




