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Let's go to the third world!

「ま、ってなわけで君は自分の能力と過去の記憶を知ってしまった。君には我々能力者の住む『第三世界』に来てもらわなければいけない。それは君自身のためでもあり、他者、君が殺した人々への罪滅ぼしとしてでもある。来てくれるかい?」

やはり、信じられない。

けれど行かなければいけないのなら、仕方がない。

「、、、、、はい。」

「OK。じゃ、早速行こうか。あと、これ。」

綾斗が渡したのは、透き通るような碧の万年筆。金色と碧の装飾が美しい。

記憶を探っても、出ては来なかった。新しいものだろうか。

「これはね、君の母君の神谷舞美さんのものだったやつだ。いつか君が、第三世界にやってくるかもしれない。そう思って、神谷さんはこれを君に託すよう言ったのだろうね。そうそう、君ある世界記録を持ってるんだ。」

なんと、これは新しくゲットした記憶の中でもあまり見なかった、わたしのお母さんの遺品らしい。と言っても、馴染みが無いのでどう反応すれば良いのかわからない。つーか、最後の言葉何?

「確か、百五十八人?最年少多殺人記録だね。おめでとう!」

「そんな血に塗れた記録いりません」

「ま、そうだよね。冗談冗談。」

「そう言えば何歳ですか?」

「ん?15だけど。言っとくけど、呼び捨てでいいから。タメ口でいいから。敬語なんて無駄無駄。」

なんと、わたしの一つ上だったらしい。どんだけすごい体格してんのよ。

わたしがそんなことを考えているうちに、綾斗は神木につかつかと歩み寄っていく。そして、木に一発平手打ち。

「、、、は?」

すると不思議なことに木がみるみるうちに二つに割れ、真ん中に小さなドアが現れた。

ドアはどんどん大きくなっていって、五分もしないうちにわたしが通れる大きさに変わっていった。

先を行く綾斗は長身なので、歩幅も大きい。ぼーっとしているとすぐに置いていかれそうだ。


ドアを通った先には、巨大な白い建物があった。

「これから行くのは、能力者管理省。まずは君の登録を済ませ、『能力命名ノ儀』を行うのが先決。明日は忙しくなりそうだけど。」

入り口にいた黒服の男に、綾斗は呼びかける。

「西寺だ。登録管理庁の長官に用がある。ああ、これだ。」

アヤトは(そう呼ぶことにした)、何も書かれていない銀色の薄いカードのようなものを出した。一瞬、黒服の男数名がギョッとしたような表情を浮かべたが、すぐにそんな表情が消える。そして、ゆっくりわたしを見る。その顔には、なんとも言えぬ恐怖があった。

、、、わたし、何かした?

もちろん、何もしていないはずである。


銀色の薄いカードを受け取った男性が、入口の脇にある部屋へ消えていく。すぐに戻ってきてアヤトにカードを返し、二言三言会話をする。ようやくしてドアが開き、わたし、アヤト、それから案内なのか先程の黒服の男が後ろからついてくる。

数回曲がってエレベーターに乗り、また曲がる。そうやってしばらく進んでいくと、ようやくアヤトが歩みを止める。

「長官室。今からここに入るから。あ、足立さんは帰っていいから。僕は個人的に深南長官と親しいから。ちょっとどころじゃないレベルで変わってるけど。」

手をパタパタ振って、足立さんと呼ばれた黒服の男性はアヤトによって追い払われていく。

「深南長官、西寺です。入ります。例の百五十八人殺しです。」

「入りな。」

例の百五十八人殺し、というと、自分が犯罪者になったような気がする。実際犯罪を犯してるけど。


その部屋は、別にそう広いわけではなかった。大きな執務机と椅子があり、壁には書類を入れる棚がある。いくつもの勲章もかかっているが、少しホコリが付いている。勲章はどうでも良い、ということだろうか。武器類もあり、それらは丁寧に磨かれていてチリ一つない。

長官は、三十代くらいの女性。ショートカットだ。

ニヤリと笑って、アヤトにこう言う。

「結構時間かかったね。そんなんじゃ宵部隊に推薦はできんよ。まあ、舞美の娘だから難しいのかもしれないけど。自己紹介がまだだったね。私は深南楓。一応ここの長官ね。」

「君の母上の同級生らしいよ。」

「あ、よろしくおねがいします。」

普通に少し前までわたしがいた世界では、長官なんて六十代七十代くらいの人がやっていた。それを三十代くらいでやっているのだから、相当すごいのだろう。

「早速になるけど、まずは手続きを済ませとこう。あれ、意外とめんどくさいから。ってな訳で、アヤト。」

「仕事ならいりません」

「いやねえ。少しは私の睡眠時間のためにも手伝ってくれると嬉しいんだけど。そんなんだったら、推薦を「手伝います」」

「私は何も言ってないよ。ほら、これ。」

数枚の書類だった。深南さんが投げた書類を、アヤトは華麗にキャッチ。そのまま猛スピードでどこかへ消えていった。


深南さんの纏う雰囲気が真剣なものへと変わっていく。

「さて、と。祐奈ちゃんだっけ?済まないね。コーヒー飲む?」

「大丈夫です。」

「そうかい。、、、まず、これ書いてもらおう。」

個人情報を書く紙らしい。すぐに書き終えた。

「正直ね、私としては貴女の問題はとても大きすぎると思っているの。他国からいつ狙われるか分からないからよ。他国の能力者は、貴女を捕まえるよう指示が出ているはずだから。だから、殺されはしない。けれどその代わり、殺人を行うだけの機械として貴女は扱われる様になるはずよ。それは望んでいない。でしょ?」

「はい。」

機械は嫌だ。絶対に。

「でもそれは、この国でも変わらない。」

冷たく伝えられた。


「どこへ行っても、強力な能力者は兵として使われる。それは保証するわ。」

ショックだった。

新しい土地で、わたしとしては数十年前に流行ったと言われるライトノベルのスローライフを目指したい。けれど、それは無理なようだ。

「舞美はね、貴女よりもっと恐ろしい能力を持っていた。『死の波紋』は、言わば殺すためだけにある能力だった。全容は流石に明かせないけれど、そうは言える。だから、傷ついていた。正直、貴女の殺した百五十八人が『たかが百五十八人』と言えるレベルよ。そんな舞美はね、こんな言葉を言っていたの。」

たかが百五十八人。そう言えるレベルの能力。正直、どんなものか想像できない。それ以前に、想像したくない。

「何ですか?」

「ええと、確か、『結局ね、わたし達みたいな能力者が人を守ろうと思っても、それはまた違う人の命を奪ったり体を傷つけたりしなければ実現できないんだよ。誰も傷つけずに人を守る。そんなの絵空事だもん。自分でこれだけ人殺しといて何寝ぼけたこと言ってんだ、ってことなんだけどさ。能力者はそういう運命なんだよ。』だったっけね。あの時の舞美は、だいぶ壊れてた。何度ナイフで腕を刺してたっけ?まあ良い。能力者である以上、面倒事は向こうからやってくる。それをただただ受け身で待つだけじゃあ、他の人が困る。だったらさ、自分から人を守ったりしてみようよ。それくらいしか、悲しいけれど今の私達能力者にはできないんだ。」

新たな情報で、頭がパンクしそうだ。

「人を守りな。それは、巡り巡って自分を守ることでもあるんだから。自分の精神を壊さないための盾だよ。それに、きっと舞美も人を守ってあげられる人になったほうが喜ぶよ。ただただ受け身で死ぬよりはいいよ。」

人のために、人を殺す。あまり正直気持ちのいいものではないが、自分は守りたい。受け身のまま、死んで行きたくはない。

わたしは決心した。

「分かりました。人を守ります。」

そう思った瞬間、わたしは服に染みができているのが分かった。気づかないうちに、何故か泣いていたようだった。


「ふふ。能力の命名は私がしよう。そうだねぇ。なんだろ。」

深南さんは、考え込んでいる。

「あの、能力に名前をつけると何があるんですか?」

「、、、、あちゃ~、知らないんだった。能力に名前をつけると、自分で操れるようになるんだよ。危険な能力なら必須だね。」

なるほど、いきなり能力が暴走しだしたら大変だ。納得した。


「よし、決めたよ。」

「何ですか?」

「能力名はーーー」

「ダサいですね、、、」

「ま、使えりゃいいんだよ、極論」

そして深南さんは、机の棚から小さな金のリングで大きな碧の宝石のついた指輪を渡した。

「これも、舞美の。舞美がくれたんだけど、あげる。」

「何でですか?」

「なんとなく、よ。」

「、、、、、ふえっ?!」

わたしは、深南さんが不思議な人物であることを確信した。

そしてさっき、アヤトが言っていた言葉を思い出した。

「長官室。今からここに入るから。あ、足立さんは帰っていいから。僕は個人的に深南長官と親しいから。ちょっとどころじゃないレベルで変わってるけど。」

頭を抱えたくなった。

その瞬間。

「今すぐ逃げなさい。私の能力が、三分後の危険を予測した。アヤトがいるはずだから、一緒に退避しな。慣れなよ。こういうのは、」

そう言った深南さんが、すぐさま碧のボタンを押す。

え、奇襲?やばくない?











風見祐奈、

能力名「空の使徒」。




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