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精霊の住処と鍵師 ~精霊大陸物語~  作者: 冬月 雪南
【第一章 始まり】
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【6】決断と葛藤


「はぁ!?総司令を降りる!?」


「えぇ、カレン様の部屋から大量の精霊に関する資料が出たの。

昨日、手続きが終わったわ。」


「お前・・・でもよ、いや、うん・・・・」


何とも情けない顔してるわね。

まぁ、予想はしてたけど折れる気はない。


「情けない顔するんじゃないわよ。あと、顔も近いし唾を飛ばさない。

何も騎士団を辞める訳じゃない、最前線から引くだけよ。

・・・カレン様の残した資料を元に今後、起こるかもしれない自体に備えるだけ。

魔王となった者を鎮めるためには精霊の力は不可欠。

せめて、各王の住処や祭壇に目星は付けないと、事が起きてからじゃ遅いだろうからね。」


「でもよ、お前みたいな腕のやつなんてそう居ないぞ?むしろ、これからだろ。年齢も考えろよ。」



平均寿命が160前後と言われるこの時代、40代なんて現役真っ只中だ。

むしろ年配の熟練者からみたら、ひよっこそのものである。

なのに、隠居とも言えるこの発言だ。


「まぁ、引き継ぎもあるし多分、本格的に交代するのは1〜2年先になるだろうね。

・・・次の総司令はあなたを推薦したい。」


「お、俺!?」

「私が推薦しなくても、候補には上がるでしょうに。」

「お、俺はでも・・・」


複雑な顔しながら腕を組み、下を向く理由は一つしかない。


「・・・、あと言い方は悪いけど住処探しと一緒にソフィアについても情報を探すわ。」


「!!??」


ソフィア・セラドン


マリスと同郷の彼女は、彼の幼馴染であり結婚も控えていた恋人であった。

式も決まり幸せの絶頂だったはずの2人に悲劇が襲った。

一度故郷に挨拶へ行くと見送った彼女の乗車した乗り合い馬車が魔物に襲われた。

そして、彼女は行方不明のままとなっている。

生存した者の証言で大型の飛行魔獣に連れ去られた事が発覚。

生死は正直絶望的である。


皆、必死に探したが手がかりもなく唯一残ったのは彼女がいつも着けていた青い宝石の片方のピアスのみ。

今は、マリスの剣の鞘の装飾に埋め込んである。


魔獣の生息地には行ったものの何の手がかりもなく、結果その近辺や飛行魔獣が休息や生息しそうな場所、迷宮までも片っ端から探し始めた。

しかし、何も見つからず気がつけば15年の月日が流れた。

仕事が忙しくなった今でも年に数回、長期休暇や休みのたびに情報を探しているのを知っている。


「はぁ・・・。」


深いため息をつくと、執務室にある大きめな来客用のソファにドカッと座り両手で顔を覆った。


「・・・・・・。」


しばらく重苦しい沈黙が漂う中、マリスは腰に着けていた剣をテーブルに置き、その鞘に収まる青い宝石を見つめた。


「・・・お前くらいだよ。今でもそんな事言うやつ。最初はそりゃ死に物狂いで探したさ。」


「・・・知ってる。」


「もう15年だぜ?」


「それもわかってる。」


「諦めろとは言わないのか?」


「・・・あなたが諦めてないでしょう。それに住みか探しは、今まで行けなかったような土地や迷宮奥地にも行く事になると思う。騎士団でも新たなチームを作る動きはあるしね。」


「・・・3日だけ、時間が欲しい。」


「わかった。3日後の執務が終わり次第答えを聞くわ。」


マリスは、鞘についた宝石をそっと撫でると剣を鷲掴みにし素早く部屋から立ち去った。

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