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精霊の住処と鍵師 ~精霊大陸物語~  作者: 冬月 雪南
【第一章 始まり】
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    案内人フラッド(2)(side:マリス)


「ん?妙に静かだ・・・・・!?全員準備しろ!!なんか始まるぞ!」


これだけ星空が広がっているのに、先程まで聞こえた虫や鳥の声が徐々に聞こえなくなった事に気が付いた。

ぼんやりと光る休息地が妙に目立ちゾクリと不気味さが際立つ。

そして、それと同時に隣にいたリリアがぼんやりとし始め様子がおかしい事に気が付いた。


「リリア?おい!聞こえて・・・ぐぁ!」


その様子に気がついたマリスがリリアの肩をつかもうとした瞬間、バチリとはじかれ軽く後方に吹っ飛び受け身を取って膝を着く。


マリスの声で全員が中心に向かうリリアに釘付けになった。

慌ててリリアの方に向かおうとしたが、ふわふわとした光が少しずつ広がり気が付けば一定の位置から壁のようになり、それ以上踏み込めなかった。


「何だこれ!?」


何もないのにそれ以上進めず、空中をバシバシと思わず叩いた。


「マリス落ち着くんじゃ!それ以上近づくでない!

防御壁の類でもなさそうじゃ・・・」


状況にいち早く気づいていたリャンは、マリスの傍に来るとコンコンと軽くその境目を叩いてみる。


「マリス!無茶をす・・・!」

「落ち着いていられるか!炎刃(フレイムブレイド)!!」


力いっぱい、剣に炎をまとわせるとその壁らしき場所へと切りかかった。

しかし、するりと壁を剣が通ったかと思ったら通った先から魔法が打ち消され振り切った頃にはまとわせた炎はなくかつ壁は何もなかったかのように傷もついていなかった。


「!!???」


壁をすり抜けた!?いやかき消されたのか!?何が起きたのか理解が追い付かず焦りだけが募った。

そんな騒動の中、リリアは一歩、また一歩と歩みを進め気が付くと精霊の休息地にある腰掛の前へたどり着いた。

上を見上げると月は真上にある。

頭上からならいけるんじゃないかと思った時だった。


『「(いにしえ)の王に仕えし聖霊よ」』


聞いたこともない言葉をリリアが口にし始めそれと同時に、同じ言葉を誰かが話しているのがわかる。

耳から聞くというより頭に響くように。

頭がクラクラし意識が飛びそうになるのを必死に抵抗しながらもリリアに何が起きているの必死に考えた。


『「我が声に答え その姿を現し わが身を導き給え」』


『「清き聖なる水の乙女に使えし 水の精霊案内人 フラッド」』


「「精霊!?」」


精霊という言葉に何人かが過剰に反応する。

12年前、カレン様が亡くなった光景を頭をよぎった。

しかしあの時と違って明らかに様子が違った。


呪文を言い終えたのだろうか、ふわふわとした光はリリアの周りを舞い頭上には水のリングができるとキラキラと光を帯びて雨粒が降り注いでいた。

リリアの周りに広がる光景はむしろ神々しく自然や光と一体化したその姿はとても綺麗だった。

その幻想的な光景はまるで絵画のようで、一同が言葉をうしなった。

リリアの体は光で覆われ、長い髪は濡れる事なくふわふわと揺れており目は相変わらずぼんやりとしていた。


「な・・・んだ、これ。」


リリアであってリリアじゃない何者かがふとこちらを向きドキリとする。

相手は周りを確認すると、ふわりと岩の上に立ち上がりくるりと回った。


すると以前、魔生泉と精霊が暴れたせいで荒れて果てていた場所にみるみる草や花が生い茂りだした。

その影響か、周りの木々にも季節外れの花が咲き始めた。


「!!??」

「これは!?」


一瞬の出来事と見た事ない状況にうろたえる大人とは対照的に、学生たちは感嘆の声をもらしていた。


「わぁ・・・凄いですね。」

「リリア様が魔法を使ったのでしょうか?とても美しいですわ。」

「こんなの見た事ないな。」


「・・・・いや、様子がおかしい。」


さすがというべきか、自然と共に生活するエルフであるイシリオンはこの異常な状況に一人冷静に周りを見ていた。


周りがそれぞれの反応を見せる中、リリアを見るとそれと目が合った。

目は普段は緑のはずなのに青くじんわりとひかっているようにみえる。


「・・・青い目。」


どこかで感じた事のある気配を思い出すと、先日の青い狼を思い出した。

本当にあれが精霊ならば、リリアはどうなった!?


近づいて確かめようにも壁が邪魔をしてすすめず、それならば上からと頭上を見上げるとクラリとめまいがし立っていられず片膝を思わずついた。


「あ・・ぁ?なん、だ?」


それは隣にいたリャンも同じだったらしく、うぅっとうめき声をあげると顔を手で覆って倒れそうなのを必死に抵抗していた。


「リャンさ・・・。」

「マ・・・ス、気を・・・つ・・・、さい・・・みん・・・・。」


後ろの状況を確認すると、次々とうめき声を上げながらバタバタと人が倒れて行っている。

魔力抵抗のあるダニエルやサミュエルが必死に倒れまいと抵抗しているのが目に入った。


霞む目をはっきりさせるためにも、自分の両頬を思いっきりバチンと叩くが意味はなく状況は変わらず意識はすでに飛びそうだった。


「あ・・・れは何なんだ。」

「ぬぅっ!これは・・・・・・・マリス、見ておれ。」


その声の方を見ると、リャン様が持っていたナイフを持って難しい顔をしていた。

そして次の瞬間、自分の腕に思いっきりナイフを突き立てようとした。


「なっ!」


しかし、ナイフはキインという音と共に刺さる事はなくその動作のまま止まった。

そしていよいよ限界がきてしまったのか、リャン様が持っていたナイフを落とすとその場で倒れてしまった。

それは自分も同じで座り込むのも限界となってしまった。


意識がぼんやりとするなか、リリアを見やると月に照らされ青白く染まる彼女は神々しく思わずきれいだなとふと思うと意識が途切れた。


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