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精霊の住処と鍵師 ~精霊大陸物語~  作者: 冬月 雪南
【第一章 始まり】
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【3】異変

ぴりっ・・・


「・・・・、なんだこの感じ」


空気中の魔力に、負の魔力が混じってる?


マリスは目をつぶると、周辺の魔力から気配を追う。

しかし、中々に見つからない。


「!!副官!街の方です!」


「!!」


いち早く、感知したのはツァイバだった。

感知能力がずば抜けてるとは聞いてはいたが納得だ。

これは、将来楽しみだな。


方角が確定したところで落ち着いて探る。

「・・・・!宿り木の近くだ!しかも・・・数がわけわからん!何だこれは!お前ら!疲れてるだろうが行くぞ!」


「はい!」


街に近づくにつれて、魔物がチラホラと出始める。


「お前ら!できる限り相手にするな!今は、帰路が優先!今倒して浄化までしてたらきりが無い!」


「全員身体強化!」


前日、あれほどゆっくりと進んだ道を半分の速さで駆け抜けた。


早く、早く早く早く!

嫌な胸騒ぎがする・・・この感じはあの時に似ていた。

わけもわからず追い詰めた、あの男が消えた日のように。


街の門に着くと、いつもは5人殆どの門番が倍に増えている。

緊急時の証拠だ。


「おい!何があった!」

「マリス様!」


「それが、急に宿り木から負の魔力が吹き出したかと思ったら大量の魔物が発生しました。」


あの一瞬、肌に感じた違和感はこれか!


「街の様子は!?」


「今の所、街までの影響は出てませんが・・・時間の問題かもしれないと、街の住人は避難のため癒やしの泉周辺へ移動済み、騎士団は3つに別れ、避難地、街、リリア様を含む残りは宿り木に向かいました!」


リリアが出るとはよほどだな。

今連れている部下たちはどちらかというとルーキーに近い。


「よし!お前らは街に1日待機!俺がそれ以上、帰ってこなければ、ランドルトとイースは避難所の守りに、残りは引き続き街のチームに合流しろ!後は頼む!」


「了解です!」


指示を出すとすぐさま宿り木へと向かう。

なんだこの違和感は!

身体強化をしつつ周りの気配を探る。

必死に探るが元よりそこまで感知魔法が得意とは言えないうえ、ざわざわと負の魔力が纏わり付きその違和感を探ろうにも見つからない。


「くそっ!・・・!?」


宿り木まであと少しの所に来ると、違和感が確信に変わった。


(空気の流れが・・・)


先程まで、ふわふわ辺りを漂うと感じた負の魔力の流れが止まった。

と、思うと急激に力が追い風の突風のように流れ始めた。

同時に宿り木のある丘になった緑の平原へと抜けた。


「なっ!!」


いつも、穏やかなこの丘は魔物も少なく薬草の宝庫であった。

緑の草木が生い茂り、丘の頂上には淡く光を放つ大きな宿り木の大木がある。

それが今、光を失い禍々しい色へと変化しようとしている。


「マリス!」


呆然とその光景を眺めていると、聞き慣れた声で名前を呼ばれた。

振り向くと、藍色のローブを着た白髪混じりのグリーンの髪をしたエルフの女性がこちらに駆け寄ってきた。


「カレン様!?」


新人の頃から世話になる治癒チームの元司令であり今は引退して新人育成をしている。

年齢は、人間に比べて3倍~5倍近く生きる種族とあって白髪の混じるその姿は若くても300歳はとっくに越えているだろう。


「何があったのですか!?」


「まだ、わからない。多分これからだ。吹き出した魔物はさほど強くはなく退治はしてるもののキリが無い。それと、浄化できずむしろ宿り木に広がってる。」


浄化できない。

すなわち、負の魔力が集まるばかりだ。


「しかも、その負の魔力を物凄い勢いで宿り木が吸い上げているのだが・・・・浄化しようと吸い上げているのか、はたまた浄化せずに吸い上げているのか・・・どちらにしろ、浄化されずに集まった負の魔力が宿り木に貯まり、結果この見た目だ。」


「!!」


魔力の流れがまた強くなる。

光はもうほとんどなく宿り木は禍々しく黒く染まり始めた。


「あ、あれは・・・」


忘れもしない25年近く前、見たあの絡まる蔦。


「マリス!」

「リリア!これは・・・」

「先程から浄化はかけるものの、まったく効かない!むしろ悪化してる。新たな魔物の出現は止まっては来たが、見てのとおりだ・・・。何が起こるか全くわからない。」


負の魔力が集中する根本からはスルスルと空に向かい細い蔦が数本伸びている。


「あそこか、ためしに俺が的を絞ってやってみる」


マリスは剣を抜くと、浄化の魔力を込めようとした。

その時だった、いつもなら手から剣へと行う魔力操作ができない。

むしろ、込めようとすると穴の空いた風船のように空気中へと放たれる。

もしや、魔法が使えない!?

試しに得意である炎を剣にまとわせてみた。


「マリス!何をしている!」


が、しかし問題なく使える。


「おい!浄化の魔力操作だけができなくなってるぞ!」


その時、急に空気が変わった。

禍々しいその空気は急に寒気を帯びるような冷たいものへと変わる。

先程までふわふわゆるゆると伸びていた黒い蔦がまるで何かを包み込むように絡まりだす。


「く・・・、けが人を優先し森の前まで退避!マリス!お前も引け!」

「馬鹿言うな!!お前だけ残せるかぁぁ!先手必勝!はぁぁ!」


マリスは先程、剣に込めた炎を最大にし蔦へと放つ。

しかし、炎は吸い込まれるように消えた。


「吸われた!?」


一瞬の静寂と共に魔力の動きが止まる。

穏やかな水辺にまるで1粒の水滴が落ちるように、蔦を中心に負の魔力の波紋が全体に広がった。

蔦はやがて蕾になりふわりと花がゆっくりと開きだした。

そして中から、何かが生まれようとしていた。


「あれ・・・は」

「・・・・スハラ。」


そうポツリと呟いたのは先程まで回復指揮をとっていたカレンであった。


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