表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
精霊の住処と鍵師 ~精霊大陸物語~  作者: 冬月 雪南
【第一章 始まり】
3/39

【2】マリス・クリムソン


「あの鬼女!!サラマンダーじゃねーか!」


俺の名はマリス・クリムソン。

今もっとも熱い48歳だ。

いや、物理的にもな。


上官でもあり同僚でもあるリリにちょーっと本当の事を言っただけで、絶賛サラマンダーと戦闘中である。


「副官!思ってたより個体は若いようです!まだ環境に慣れてない巣立ったばかりの個体のようです!」


といっても相手はランク上位種、油断してると命の保証はない。


「あまり正面に回り込むな!できる限り視界から外れながら攻撃しろ!・・・まったく人数的にギリギリじゃねーか。」


「あ!副官、司令から多分特別報酬が出ると聞きました!なので一応は警戒・・・」


「あのやろぉぉぉ!!!」


説明しよう〔特別報酬〕とは、魔物盗伐において対象が中型以上の場合、能力に合わせて報酬が増える。

また、状況により素材も貰えるという。


お互い赴任した時は、見た目あんなに美人で何だかもじもじして可愛かったのに今では鬼だ!

少し栗がかった長い金の髪に、癖のあるくるりとしたりすの尾のような毛先、緑の目はまるで宝石。


なりよりスタイルも良く、まわりはざわつきまくってた。


まじで可愛かった、可愛かったのにだ!(泣)

ちなみにそう思っているやつはかなりいる。


今でも同じ年とは思えないし

相変わらずスタイルもいいし

今だ見合いとか来てるらしいし

怖がられる割にファン多いし

胸とかすごいし・・・いいよな、あの無駄にデカイの。

また戦闘用のために着てる服では分かりにくいのに休日に軽装になると普段と違ってこう、ボディラインが・・・って、違う今は戦闘中だった。


そして、こんなこと言ってんのバレたら今度こそ殺される。


「副官!こちらはなんとかなりました!あとは奥で戦ってる1匹のみです!」


「よし!2人は魔石と素材を!早めに浄化も忘れんな!あと1人は俺と奥に行くぞ!」


魔獣たちの死骸や血は浄化魔法をかけないと、その負の魔力により周辺が汚れて新たな魔物を生む。

浄化魔法は、子供の頃から基礎知識として誰もが使える魔法である。


そして魔力量やセンスによって浄化速度や範囲が変わる。

俺は魔量はあるがセンスがいまいちであった。

だからどうしても、浄化範囲の場所が無数に広がると特定するのに時間がかかりすぎる。


1箇所、2箇所くらいならサイズ関係なく速攻浄化できるが、今日はサラマンダーというそこそこ中型のうえ3匹もいた。

しかも、意外と粘るため血が流れすぎて浄化する場所が無数に広がった。


「ちっ・・・反省するとこだな。」


こういう場合は、リリアのが得意である。

魔力を発動する瞬発力は弱いため時間がかかるが範囲はやたらと精密で特定が早い。

若い頃は、あいつが発動した浄化範囲に対して、力技で俺が浄化した。


「これだけの範囲、一気に浄化出来るくせに何で自分で範囲が絞れないの!?」

と、あきられたもんだ。

そして、当てつけなのか!と怒られた。


だって場所なんて細かいこと無理だ。

ぱっとしてどん!な俺は場所さえはっきり分かれば広範囲もいけなくもない。


むしろどんとこい。


ただその場合、細かい作業特定が苦手だから誰かが特定してくれなければ無理。


「今日の盗伐、あいつのが向いてるんじゃねーか?」


そんな事を考えながら奥に進むと、残りの3人とサラマンダーが見えてきた。


「ふむ、頑張っているがどうにも致命傷になる決定打がないな。打撃が弱いのか・・・。」


3人は奮闘するも、中々に致命傷が負わせれない。

そのため、無駄な血が流れすぎていた。


「ったく、お前らもっと腰に力を入れろ!焦りすぎて技が浅い!」


部下に倒させてやりたいところだが、体力的に見て無理だな。


「全員退避!巻き込まれるぞ!」


声を出すと3人はすぐさま、後ろへと飛び離れた。

と、同時にマリスの大剣がサラマンダーへと振り落とされた。


----------------------------------------------


「よし、浄化も完了したな。」


ちなみに、浄化されず放置された場所や死骸は新たな魔物をある程度生み出した後、その力は無くなり元に戻る。


といっても小さい虫や超小型な魔獣は魔量自体が少ないため、徐々に大地が吸収し自然と浄化される。


そして精霊樹を中心にその速度は変わり、精霊樹に近い地域ほど浄化強く早いため比較的穏やかで魔獣の少ない町が多い。

しかし、それも以前の話であって今ではどこも変わらない。


むしろ精霊樹から離れた地域より、今まで精霊の恩恵を受け穏やかだった地域のが強い魔獣が出やすい傾向にあった。


「さて・・・、今日は遅くなった。まぁ大丈夫だとは思うが朝まで様子見て帰るぞ。」


「はい!」


「よし、じゃぁ準備するか。ランドルト、落ち着いて開けよ。」


「はははははい!」


指名されたランドルトは、今回の編成で一番若い17歳だ。

遠征など、盗伐の荷物持ちは入団して間もない者の仕事だが、これが上手くならないと一人で仕事が任せられない。


ランドルトは深呼吸をすると右手の人差し指と親指を軽く合わせて魔力を込めた。


「おいおい、腕にまで魔力が散ってるぞ。指にぐっと魔力を押し込めろ。酷い事になるぞ。」


「は、はい!」


少しずつ指先を意識して魔力を込めると徐々に合わせた指先へと集まりだした。


指先にある程度、魔力が集まるとゆっくりと合わせた指先を離していく。


すると、指の間に青白い線のような魔力がパリパリと小さな音を立てながら伸びた。


指を開ききったら、次は横へとゆっくりと動かしある程度まで長さを伸ばすと今度はその指を閉じた。


すると、空中に横長な四角い不自然な空間が現れた。


「アイテムボックス展開」


「・・・、まぁ荷物が溢れなかった分良しとするか。反省点は穴が横にでか過ぎるのと、目線より上に展開したら荷物取り出す時苦労するぞ。


ちなみに指先にうまく魔力を集中できずに展開すると中身が飛び出る。


意外と集中力がいるため向き不向きももちろんある。


あとは、術者の魔量で空間の広さが違うため、少ないと大体1メートル四方くらいになる。


そのため、騎士団に入ると新人はアイテムボックスの使い方を教えられる。


魔量が少なくても魔力の込め方やコントロール・展開の速度等、今後の戦い方の訓練にもなる。


もちろん最初は、物すら入れれない程の空間のものもいるが魔量が多少あれば訓練次第で大きくなるし、そもそもこれが展開できないと、よほど武力等の才能がないと騎士として生活するには厳しい。

そのため、入団テストにはある程度の魔量とその伸びしろまで合格リストに必要となる。


これが上手くなると指先一つで空中に丸でもなんでもよくなる。


ようはやり方と慣れで、魔力の込め方さえコントロールできれば自分のやりやすいようにしていくのだ。

ちなみに俺は、指先全部に魔力を込めてズバッと空間を剝ぐように開ける。


以前リリアから


「なぜ、そんな無茶苦茶で展開ができるの?何なの?どうなってるの?」


と、冷たい目で言われたもんだ。


俺から見たら、別に指先でいいなら2本も5本も一緒じゃねーか。

簡単に開けられるようになったらいいわけだし、ようは場数と慣れの問題だ。


「よし!こんなもんだな。」


野営を完成させて、温かい飲み物で一息つく。


「はー・・・、それにしても何で俺にはあんなに冷たいのかね。」

「いやいや、マリス様が余計な事言うからでしょう。」


余計な事とは・・・・?

全員にズバリと綺麗にそろって突っ込まれた。


「ほんと可愛かったんだぜー。」

「・・・マリス様。いくら仲が良くても、そうやってリリア様の昔の事を話すから怒られるんですよ。」

「今いないんだからいいじゃねーか。」

「・・・ランドルトが可哀想なのでやめてあげてください。」

「うっ・・・・、もしや」

「出発前に、呼び出されて釘を刺されてます。」


「『あなたが、今回初めて参加する子ね。頑張りなさい。

それとは別に、あいつが余計な事を言ってなかったか終わったら別件として報告に来なさい。

もちろん道具は準備しておくわ♡』ってすでに言われてます」


以前、リリアのプロポーションがすごいって話になり絞められた。


あの時は練習後に熱いだの言いだして、その場で装備を外したのだ。

汗で濡れてぴったりとしたシャツに、胸当てが外され抑えられたものが一気に晒される。


いや、服着てるからこそやたらと強調されたボディは汗で艶めかしく見え、先程までピリピリとした鍛錬場がやたらと柔らかな空気に変わり、ゴクリと生唾を飲む音が聞こえてきた(気がする)


そんな異常な事態に気が付いてない本人は、鍛錬がきつく座り込んでいた部下に近づき

「大丈夫か?今日は暑いから無理をするな。」

と、手を差し出した。


声を掛けられたやつは「大丈夫です!立てますから!本当に!」と全力で断っていたのだが、リリアが遠慮するなと言わんばかりに部下が必死で両手を振って断っていにもかかわらず捕まえ引っ張り立たせたのだ。


言われるがままよろめき立ち上がると、至近距離に飛び込んだ山は刺激が強く、それはもう凄かったらしい。


ちなみに彼はその後「もう悔いはありません」と医務室に運ばれた。

気が付かないリリアに「大変!」とか言われて抱き抱えられながら。


まぁその後は図らずとも騒がしくなる鍛錬場(ごく一部)


本人が般若のごとく現れた時には、誰が最初に騒ぎ出したのか犯人を問い詰める時などに用いられる嘘を見破る魔導器具を使って事細かく問い詰められた。


・・・・何故か俺を中心に。


そして、2つ名のごとく女神どころか鬼神となったリリアに叩きのめされた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ