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精霊の住処と鍵師 ~精霊大陸物語~  作者: 冬月 雪南
【第一章 始まり】
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【16】ベアトリスの魔法

孤児院につくと、すぐさまベアトリス様は治療を始めた。


「よぉーし、準備できたしぃーはじめよっかぁ。

あっ、子供たちはぁ離れてるかぁ別の部屋にいてねぇー。

うーん、1本じゃたりないからぁ、念のためすぐ持ち変えれるようにぃ、あと3本用意してぇ、無くなってきたら持ち変えなきゃだからぁ・・・」


「あのっ、私がやります!私にやらせてください!」


レイチェルはベッドの側に座ると瓶を持ち傷口の近くに添えた。

カタカタと、震える手は心配と緊張からだろう。


「このような感じでよろしいですか?」


「いいよいいよぉー。

そのままぁ、瓶を出来る限りの傷の近くで持っててねぇ。

じゃぁ瓶が魔力で揺れるからぁ、溢れないよう気をつけてねぇ。難しそうならぁ早い段階でぇリリアちゃんと変わって貰うからぁ。肩の力抜いてねぇー。」


「わ、わかりました。」


ぎゅっと、瓶を持つ手にことさら力が入る。

レイチェルとは逆側に立つベアトリスは、そっとその手を包み込むとにっこりと笑いかけた。


「・・・心配しないで。私がいるのだもの。この子は運がいいわ。

さぁ、力を抜いて。いい子ね。」


小さな子を優しく、言い聞かせる母のように。

そう、私がいるから大丈夫。


瓶の解毒薬は魔力を帯びキラキラと光だすと、瓶からゆっくりと光の粒子となりサラサラと飛び出すと、傷口の上でまるで光の雲のように集まりだした。


「・・・いきます。解毒回復(ポイズンリカバリー)


魔法を唱えると、解毒薬の雲からひとつ、またひとつと光の雨が降り注ぐ。


全身に回りきった毒は一気に解毒すると身体が拒否反応を起こし死に至る場合もあり、とても繊細でかつ時間との戦いである。

傷口からは解毒薬とは別に紫色の粒子が浮かびだすと、そちらは身体の上に置いた大きめのトレーへと流れる。

毒の量により分解しきれないものや傷口にある毒はこうして排出した方が治癒師や患者、両方への身体へ負担が少なく薬の節約にもなる。

ただし、高度魔法のため出来る人は少ない。

霧状の毒は最初は傷口からのみ少しずつ排出され、解毒薬が体内に巡りだすと徐々に身体中からも放出する。

それらを治療にあたる人へ影響しないよう、全てトレーへと貯めていく。

かなりの毒量だったのだろう。

放出される毒で禍々しく染まる身体はベアトリスの魔法により輝き、徐々に薄くなっていく。


「リリアちゃん、トレー交換。レイチェルさん、今持つ瓶を片手にそのまま動かないで、もう1本を空いた手で添えて・・・そう、その調子です。

りりあちゃんは瓶が空になったらレイチェルさんから取り上げて、レイチェルさんはまた両手で・・・・・・、そう上手よ。そのままね。」


身体から出る毒霧がほぼ出なくなり、傷口からのみとなった。

傷口からの毒を絞り出すように押し上げると、小ぶりな紫色の水球が出来上がりトレーへと排出する。

ここまで来たら、もう安心だ。


「・・・・仕上げね。治癒(ヒール)


自然回復力(レジリエンス)・向上( ・プログレス)


「・・・・・・ふぅー、治療はおっけー♡

あとはぁ、しっかり休んでねぇ。目が覚めてもぉ暫くはぁ安静・・・」


レイチェルは、瓶を握りしめたまま消えた傷口をぼんやり見つめていた。

冷たくなった指先をベアトリスがふわりと小瓶ごと握ると優しく声を掛けた。


「大丈夫よぉ、顔を見てあげてぇ。あなたも頑張ったわねぇ。」


小瓶をそのままベアトリスに渡すと、恐る恐るメリッサの顔を覗き込んだ。

そこには幾分か顔色が良くなり、規則正しい息遣いが聞こえてくる。

あれ程ひどい顔色で汗を大量にかき苦しむ顔はなく、いつもの寝顔がそこにある。

先程まで毒に侵された、肩や背中をそっと触ると薄っすらと傷はあるもののしっかりと塞がっていた。


そう、生きている。

助かった。


「あ・・・ぁあ、あぁあぁ!」


この数日、とても気を張っていたのだろう。

孤児院に、大人はレイチェル一人しかいなかった。

子供たちのケアに魔毒に侵されてしまった子供、亡くなった子もいる。

そっと背中をさすると、真っ青な顔で向かいに立つベアトリスに何度もお礼を告げていた。


「さてとぉ、リリアちゃんお片付けしよっかぁ。でもその前にぃ・・・。」

「そうですね。レイチェルさん、しばらく私が様子を見ますので眠って下さい。」


「し、しかし・・・」

近くにあるソファーへ横になるように促すと、レイチェルはでもだってと狼狽えて抵抗していた。


「こらこら、遠慮しないのぉー。さっ横になってぇー。」

「えっ!あのっでも・・・」


ニコニコしながら無理やりベアトリスがシーツをかぶせると目を手のひらで遮った。


睡眠(スリープ)

疲労(ファティーグ)回復(リカバリー)


も、問答無用だ・・・・。


「さてとぉ、一通り子供たちを見てぇ礼拝堂にもどるねぇ。

レイチェルさんはぁ、多分2~3時間くらいでぇ目は覚めると思うよぉ。」


「わかりました。私の方もある程度落ち着きましたら、一度礼拝堂に向かうようにします。

ありがとうございました。」


「何言ってるのぉ。これが私のお仕事なんだからぁ、御礼なんてぇいらないでしょぅ。

さぁさぁ、これからぁ子供たちの相手にぃいくわよぅ。リリアちゃん、補佐よろしくねぇ。」


話終えると、先に歩いていくベアトリスの後姿を何となく見つめる。

魔力量・治癒としての技術・支援魔法に簡単な攻撃魔法も使える。

正直言って、王都の前線でむしろ幹部候補として暗躍しても納得する腕前だ。

しかし、彼女は尊敬する師の近くでカレン様の終の地となったこの場所から離れたくないと全ての話を蹴ってフォレストグリーンウッドで生活している。


そして、時たま私の研究を手伝ってくれている。


「もったいない・・・なんて言ったらきっと怒るのでしょうね。」


何となくベアトリス様との今までの事を思い出す。

小さい頃はカレン様がいなければ面倒見てもらったり、遊んでもらったり・・・。

あぁ、あの時もリャン様が途中から来て喧嘩になったな、そういえばあの時はベアトリス様が来て喧嘩に・・・あれ?ベアトリス様(イコール)リャン様と喧嘩の思い出が多いな・・・。


「リリアちゃぁーん!はやくぅ!何してるのぉー?」


「あ!はい!今行きます!」


その後は、ベアトリス様は子供たちの体調や健康状態を確認すると礼拝堂へと戻っていった。

私はというと、久々に大人数の子供たちに囲まれて緊迫した状況の中、少し癒された気持ちで満たされた。

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