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【8:八丈先輩と奄美さんの関係】

「あ、ところで八丈先輩って凄いですよね。帝都大で頭が良くてなおかつイケメンで。講師としてめちゃくちゃ人気あるし」

「彼を目当てに他の教室からこっちに転校希望を出してきた女の子もいるくらいだからね」

「うわ、マジすか? でも奄美先輩もミス帝都大だし、美人で頭いいなんて凄すぎる」

「ミス帝都って誰に聞いたの?」

「あ、八丈先輩が言ってました」

「んもう、八丈君ったら勝手に……」


 頬をぷっくり膨らませてる奄美さん。可愛い。


「美男美女で帝都大同士なんて、ホントお二人はお似合いのカップルですよね」

「え? カップルって?」

「つき合ってるんですよね。聞きましたよ」

「誰がそんなこと言ってたの?」

「いや、えっと……」


 え? あれっ?

 八丈先輩は奄美さんのことを『俺の彼女』って言ってたよな。もしかして内緒で付き合ってるとか?


 言っちゃまずかったか……?

 ヤバ。


「あ、それも八丈君ね」

「えっと……あの、その……」

「やっぱり」

「ご、ごめんなさい」

「ううん。佐渡君が謝ることじゃないし」


 ああ、やっちまったよ……

 あれ? どうしたんだろ。奄美さんが難しい顔してる。


「彼は佐渡君になんて言ったの?」

「えっと……奄美さんのことを『可愛いだろ、俺の彼女』って」

「そっか……実はね、私たちちゃんと付き合ってるわけじゃないのよ」

「え?」


 どゆこと?


「んっと……そうだね。他のバイトの子達は誰も、私達が付き合ってるなんて思ってないんだけど……八丈君が勝手に、佐渡君にそんなことを言うから悪いんだよね。説明するわ」


 奄美さんは困った顔してる。


「つい最近、彼から付き合ってって言われたのよね。それで断ったんだけど、お試しで一ヶ月でいいから付き合ってくれと粘られたの。だからそれは承諾したのよ」


 うへぇ。さすが八丈先輩、押しが強いな。

 俺にはそんな粘りは絶対にできない。


 『俺の彼女』っていう八丈先輩の言葉は、一応嘘ではないものの──


「ということは、正式に付き合ってるわけじゃないと?」

「うん。それでもうすぐ一ヶ月経つんだけど……実は正式なお付き合いは断ろうと思ってるの」

「え? あんなモテモテのイケメンなのに?」

「まあそうなんだけどね。私はああいう俺様系は苦手なのよね」

「そうなんですね」


 あんなイケメン、女子なら誰でも好きになると思ってたけど……そうじゃないんだな。モテない俺には新しい発見だ。


 あ、そうか。奄美さんが行かないカラオケに、女子講師の人たちが気にせずついて行ったのはそういうことか。

 たぶん八丈先輩は、女性陣には奄美さんと付き合ってるって言ってないんだ。


「あ、決して八丈君が悪い人ってことじゃないよ。単に私には合わないってだけだから」

「はい、わかってます」


 八丈先輩を気遣ってるんだな。

 うん、やっぱ奄美さんはいい人だ。


「イケメンだし、女子に大人気の講師ですもんね」

「そうだね。でも佐渡くんだって優しそうで可愛い顔してるし仕事熱心だし。これからきっと人気になるよ」

「あ、ありがとうございます! でもそれは買い被りですよ」


 ──あ、これは社交辞令ってヤツだな。

 一瞬本気にしかけたよ。ヤバいヤバい。


「そんなことないよ。佐渡君を見てたら癒される」

「あ、いやいや! 奄美さんこそ、めっちゃいい人っすよ!」

「ありがと。惚れちゃダメだぞ?」


 うわ、ドキッとした。

 小悪魔かよ!


 こんな高嶺の花に惚れてしまったら、悲しい未来しか見えない。だから惚れるはずもない。


「ところで佐渡君。こんなこと教えたのは八丈君には内緒だよ」

「はい、それはもちろんわかってます。でも八丈先輩は、なんで俺にあんなこと言ったんでしょうね?」

「ん……彼は、まさか自分が断られるとは思ってなかったんでしょうね」

「一度断られてるのに?」

「彼はメンタル強い人だからね。断られたのは何かの間違いだ、くらいに思ってるんじゃないかな。想像だけど」

「うわ、羨ましいくらいのメンタルの強さですね」

「そうだね、うふふ」


 これまたイタズラっ子のような笑顔。

 惚れちゃダメだぞ! ──って自分で自分に言い聞かせないとやられちゃうくらいの可愛さだった。

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