お嬢様の様子がおかしい?
「最近のお嬢様についてどう思うですか?ふう、色々ありすぎて何から話せばいいのか……」
アイギス伯爵家で勤める侍女Aは嘆息がちに言った。
「そうですね、まず食事の量がおかしいですね」
―――どういったふうにおかしいのですか?
「量が多すぎるってことよ! 1日で備蓄してた食料全部きれいさっぱり食べ尽くしたのよ! あり得ないでしょ、1ヶ月分の食料よっ!」
―――なるほど、それはすごいですね。お嬢様はいつからそのように?
「兆候もなしに突然よ! 旦那様も奥様も、私たち侍女たちも今でも信じられないくらいだわ」
―――ふむ、他に何かおかしいことは?
侍女は顎に手を当てて考える。
少しばかり考えた後何かを思い付いたような表情になる。
「実はお嬢様ね、部屋で誰かと話してるのよ。お嬢様しかいない部屋で一人でよ………」
侍女は声を潜めてそう言った。
さらに続けて
「お嬢様は気づいてないらしいけど結構音が漏れるのよ………しかもお嬢様が大食らいになられたのも話し声が聞こえはじめてからね……」
―――そうですね、何か関係があるのかも。他に何かありませんか。
「私が言えるのはこれくらいね」
◇◇◇◇◇
「確かに最近のお嬢様は度が過ぎておかしいですな」
執事Bはそう言った。
この執事は彼女が生まれる前からアイギス家に使えている古参の使用人だ。
―――例えば、どういった所が。
「ふむ、まず性格が変わりましたな。今までのお嬢様の時もありますが特に食事の時ですな、食事の時にお嬢様らしからぬ言動や行動をするのです」
―――気のせいでは?
「いいえ、あれは人が変わってるかと思うかのぐらいの性格の変わりようです」
―――ほう、興味深いことを言いますね。具体的にどういった性格になるのか教えて頂いても?
「端的に言うと傍若無人、わがままですね。少なくとも私が今まで見てきたお嬢様はそんなことをする人ではありませんでした」
―――本当に入れ替わっているのかも
「ははは、そんなことがあるわけないでしょう。例え魔法でもそんなことは無理でしょう」
―――冗談です。他にあなたから見て変わったことは?
「特にありませんね」
―――ありがとうございました。
◇◇◇◇◇
「うーん、確かに最近のシスタはおかしいかな」
アイギス伯爵は安楽椅子に座りながらそう言った。
―――具体的にどういった所が?
「ご飯をいっぱい食べてることかなー。でも成長期だからあんなものかとも思うし」
―――そうですか。他に変わったところは?
「私が見る限りではないかな。それよりもうちの娘はかわいいだろう? ほらほらこれは娘が五歳の時に作ってくれたものでね」
―――もういいです。ありがとうございました。
◇◇◇◇◇
「ええ! 最近の私がおかしいですって!?」
見るからにうろたえているのはシスタ・フォン・アイギスだ。
―――少なくとも使用人やあなたのお父様やお母様の間ではそういうことになってますよ。
「そうなのですね………」
―――なぜ先程からチラチラと横を見ているのですか?
「い、いやちょっとほこりが浮いていたので」
―――侍女からあなたが部屋で一人でしゃべっているという話を聞いたのですが
「あ、あの、それは、私独り言が好きなんです!
だからあの、その」
シスタ令嬢はしどろもどろになりながら答える。
「いまはダメです、ダメです」
シスタ令嬢は小声で何かを言っている。
――もしかしてあなたの横に誰かいるのですか?
「いえいえいえいえいえいえ!」
すごい勢いで首をふる。
はた目から見ても動揺しているのがわかるほどである。
―――今日のところはこれぐらいにしておきましょう。
ありがとうございました。