お茶会
シスタは今他の家のご令嬢たちと庭でお茶会をしている。
テーブルの上には飲み物とお菓子がおいてあり、テーブルの周りを囲むように複数の貴族令嬢が座って談笑している。
シスタの家は伯爵家であるためそれに近しい階級の家の令嬢が来ている。
すなわちそれ相応のお菓子も揃えられているわけだ。
横を見てみるとお菓子を見ながらダラダラとよだれを垂らしているキンの姿が見えた。
もし無理矢理にでも体に乗り移られたらたまったものではないだろう。
他の令嬢に変に思われてしまうのではないかとシスタは心配する。
「キン、あとで私の部屋でお菓子をあげますから今は我慢してください」
と小声でキンに言った。
聞こえているのやら聞こえていないのやら
虚ろな目でお菓子ばかりをジーッと見ている。
キンもむやみやたらにシスタの体に乗り移ったりはしないだろう、そこまでの分別はあるはずだとシスタは思いたかった。
―――だがその期待を裏切るのがキンという人間である。
『もう我慢できねぇ!!』
「あっ、ちょっ!」
キンがシスタの体に乗り移った。
―――そして
取られる行動はただ一つ。
―――一心不乱に目の前のお菓子を食べ尽くすのみである。
バクリッ
「うまいっ!」
あまりのうまさにブーストがかかる。
もう止まらない暴走車となってしまう。
「うまっ、うまっ、うまっ、うまっ」
テーブルの上にあったお菓子がみるみる消えていく。
周りの令嬢はただただポカーンとしている。
無理もないことだ。
「ふう、ゲフー」
キンが役目を終えたためシスタに体の主導権を返す。
タイミングが悪いのである。
「あら、私は……」
目の前の惨状。
つまりはお菓子がなくなったテーブルの上。
周りの令嬢たちの唖然とした表情。
シスタが察するには状況証拠が揃いすぎていた。
◇◇◇◇◇
あのあとシスタが他の令嬢にいいわけをしたが他の令嬢達は信じず、シスタへの心証が悪くなったように思われる。
実際に後に令嬢間で暴食令嬢なるあだ名をつけられることになったのであった。
◇◇◇◇◇
「キン、私の体に勝手に入るのやめてもらえます?」
シスタは少し起こりぎみの口調だ。
『ん、じゃあ許可とったらいいのか?』
「そういうわけではありませんが………」
「少なくともむやみやたらに私の体に乗り移らないこと! いいですね!?」
『お、おう……』
さしもの不良少女、キンもシスタの迫力に押されぎみである。
キンはシスタを怒らせたらやばそうだと思った。
これからはほどほどにしようと心に誓うのであった。