邂逅
「ふあーあ、よく寝ましたわ」
少女はベッドから起き上がり、大きく背伸びをする。
そしていつものように身だしなみを整えるために鏡の前に立つ。
鏡に移った自分の顔を見た少女は目をひんむいた。
今にも卒倒しそうなほどの衝撃を受けたからだ。
「いや、いやよこんなの!いやー!! お父様、お母様ー!」
衝動に任せ少女は部屋から出て今の時間帯であれば食堂にいるであろう父と母の元へと走っていく。
食堂へついたや否や扉を開け、中にいた母にすがり付く。
「お母様、私、私…」
少女はすがり付いたと思いきや泣き出した。
母親も驚いている。
泣き出したことにではなく
その姿に
父も驚いている。
「私、私、なぜこんな姿に!」
「お、落ち着いて。シスタ」
「落ち着いていられませんわ!」
「それはそれで可愛らしいわよ」
母親は顔をひきつらせながら精一杯の慰めを言う。
だが少女は泣き止まない。
「シスタ、昨日のことは覚えていないのかい?」
と父。
「昨日のこと? なんのことですの」
しくしくと泣きながら少女は言った。
「昨日あなたは屋敷中の食べ物を食べ尽くしちゃったのよ。だからそんなおで…でかくなっちゃったのよ」
「いやー!言わないでー!!」
そうなのだ。
平たく言うと少女は昨日の度が過ぎるほどの暴飲暴食でおデブになってしまったのである。
朝起きたときに鏡で見たときの姿はもはや少女本来の美しさの跡さえも残していなかった。
◇◇◇◇◇
部屋に戻ってきた少女は再度鏡の前にたつ。
だが現実はかくも無情である。
朝鏡を見たときと同じ顔、体が写っていたのである。
顔はむくんでパンパンに膨れている。
顔だけじゃなく体型もだ。
どうしてこんなことになったのだろうか。
両親から昨日のことを子細に聞いたが、全くもって見に覚えがないことである。
聞けば使用人にも見られていたと言う。
『うお、なんじゃこりゃ! 浮いてやがる!』
少女の耳にどこからか声が聞こえた。
辺りを見渡してみるが誰もいない。
『本当になんだっつ~んだよ。なんで浮いてやがんだ~?』
心なしか上から聞こえたような気がした。
上を向いてみる。
すると…
金髪のガラの悪そうな少女、いや女性がふよふよと浮いていた。
―――凝視。
金髪の女性も少女の方へ顔を向けた。
「ええええええええ――――――――!!!!」
『ええええええええ――――――――!!!』
二人の声が重なった。