勘のいい侍女
最近のお嬢様はおかしい。
どこがおかしいかというと基本全般である。
確かに元のお嬢様の時もある、だがある日ぱったりとお嬢様では考えられないような行動や言動をとるようになったのだ。
この前は屋敷に備蓄してあるすべての食料を食べ尽くしたし、お嬢様は誰も気づいてないようだと思っているがフルプレートの鎧もなんに使うかわからないが購入していた。
だが私は知っている。
私は侍女という職業上よくお嬢様の身の回りの世話をしているためお嬢様の違いによく気づくのだ。
本当に人が変わっているようだ。
―――いや、本当に人が変わっている?
その考えには思い至っていなかった。
入れ替わっている可能性もある。
その可能性を考慮したら今までのことも説明できる。
ではお嬢様はいまどこに?
もしや身代金目的の誘拐?
犯罪グループのメンバーが伯爵家の内情を探るために入れ替わった?
考え出せばきりがない。
そこで私はお嬢様を尾行することにした。
本当のお嬢様かどうかは分からないがお嬢様と呼ぶことにする。
幸い私は侍女である。
例えお嬢様にばれたとしても侍女という性質を利用していいわけを考えればいい。
不敬?
いやこれはお嬢様を助けるために必要な行動なのだ。
故にこれは不敬ではない。
早速行動に移そう。
◇◇◇◇◇
まずは朝食でのお嬢様の様子を見よう。
変わってからのお嬢様は殊更に食事への興味が強まったように思う。
前まではあまり食には興味がなかったように思われるのに一体何があったというのだろう。
「おはようございます、お嬢様」
朝食を食べに来たお嬢様に挨拶をする。
「おう」
やはりおかしい。
お嬢様はこんな言葉遣いはしない。
お嬢様は席につく。
そわそわとしている。
それほどまでに食事が楽しみなのだろうか。
「お待たせしました、お嬢様」
執事が料理をテーブルに運んでくる。
すごい量だ。
お嬢様たっての希望で朝食のメニューを増やしたのだ。
料理が到着したやいなや
バクリ
お嬢様はどんどんとその小さな口に料理を運んでいく。
あの体のどこに入っていくというのだろうか。
バクバクと貴族令嬢とは思えないような形相で食べ進めている。
お嬢様の変わりように私以外おかしいとは思えないの?
この家に古くから仕える執事にもそれとなく確認したが思春期故の変化だろうと結論付けていた。
あまりにも楽観的な結論だ。
思春期の変化という安易な結論で説明できることではないだろう。
お嬢様はものの30分ほどでテーブルにところ狭しと並べられていた食事を食べ尽くしていた。
するとお嬢様がさらにスイーツを要望し始めた。
ありえない、まだ食べるというのか。
これまたものの見事に完食した。
お嬢様は満足したように椅子に背を預けている。
どうやら食事はやっと終わったらしい。
◇◇◇◇◇
食事を終えたお嬢様は自分の部屋に入っていった。
私は扉に耳を当てて中の様子を確認する。
実はお嬢様はよく部屋の中で独り言を言っているのだ。
独り言なのか、誰かと話しているかは分からないが話していることは確かだ。
私はここにお嬢様の変わりようを説明する鍵があるのではないかと思う。
やはり何かをしゃべっている声が聞こえる。
誰かと会話している?
やはり誰かいるのだろうか。
「そこにいるのは誰ですか?」
お嬢様から声がかかった。
ばれている!?
気配を消していたのに。
いや、そんなことよりもどうやって弁解するか。
「どうしたのですか? 姿を見せてくださる」
もうダメだ。
扉を開ける。
「あなたは……」
「お嬢様、すみません」
「なぜ、このようなことを」
お嬢様は問いかけてくる。
「すみません、お嬢様。それは……」
「言ってください」
お嬢様の気迫に押される。
このような顔は初めてみる。
「…お嬢様の様子がおかしくて、様子を伺ってました」
「様子を伺っていた? 扉に耳を当ててですか?」
「それは…!」
「だって、お嬢様が人が変わってしまったようで……
だって、だって心配で……」
「わたしは、わたしですよ」
そういってお嬢様は私の頭にコツンと頭をぶつけた。
これは……
「わたしはわたしですよ」
私が伯爵家に侍女として召し支えられて中々仕事がうまくいっていなかった時に塞ぎこんでいた時、
お嬢様が私のもとにやって来て頭をコツンと私の額につけてきた。
そして大丈夫、大丈夫と私を慰めてくれたときの……
ああ、あなたは本当にお嬢様なのですね
「わかりました?」
「ええ、お嬢様はお嬢様です」
勘のいい侍女が陥落!
めでたしめでたし。
これでシスタがキンと入れ替わっていることに気づかれる可能性がまたひとつ減った。
一件落着!!




