温泉に行きます
『ああ、温泉行きてぇー』
「温泉なら領内にありますよ」
『えっ、行こうぜ!』
キラキラと目を輝かせながらいうキン。
「支度をしてから行きますか」
フットワークが軽いシスタとキンであった。
◇◇◇◇◇
温泉に着いた二人。
着いた瞬間にスッポンポンになる。
もちろん中身はキン。
「ひゃっほーい!」
ドボン!
「うひー、気持ちいい~」
前世以来の温泉だ。
屋敷でも湯船に浸かることができるが、室内であるためあまりキンの好むところではなかったのだ。
実はキンは大の露天風呂好きなのであった。
冷えた体で温泉に入り熱くほてった顔は冷気にさらされている。
最高に気持ちいいのである。
「ああ、気持ち~」
(シスタにも変わってやろうかな~)
シスタにもこの気持ちよさを味わってほしい。
感動を共有したいがために体の主導権を渡そうと思った。
―――だが
この快感を手放したくない考えの自分もいるわけで
(あ~、あとせめて5分、いや10分)
言うなれば朝あと5分だけでも寝ていたいというようなモードに入っていた。
このモードに入ったものは誰であっても我が身かわいさを優先するのだ。
結局シスタに体を返したのは1時間後であった。
◇◇◇◇◇
「あ~、気持ちいい~」
『なっ、気持ちいいだろっ!』
「ええ、本当に」
『なあ、シスタ。この世界に温泉卵ってあるのか?』
「卵はありますけど、温泉卵なるものはありませんわね。なんですの、それ?」
『卵を温泉の中で温めて半熟の状態にするんだよ』
「スクランブルエッグは食べますがそういったものは食べたことありませんね」
『よし、卵取りに行くか!』
◇◇◇◇◇
コカトリスの山に来た。
前回は卵をコカトリス証拠品の討伐の証しとしてギルドに持っていったため食べることはできなかった。
「あんなところに卵があるじゃねーか!」
山頂にコカトリスの巣がありそこに卵があった。
コカトリスはいないようだ。
「卵だけ持ってくか」
コカトリスが現れないため卵だけを持っていくことにした。
いかんせん卵がでかいため両手で持たなければならず山を降りる速度が遅くなってしまうのが難点だ。
「んしょ、んしょ」
山の中腹ほどまで下った。
まだ半分であることを考えると気が重い。
「ふー、ふー、ふー」
温泉に入ったのに汗をかいてしまった。
(まあ、いいか、一石二鳥ってやつだ)
こけー、こけー
キンの耳にニワトリの声が聞こえる。
こけー、こけー
どんどんと音は近づいてくる。
バサッ、バサッ
目の前で翼をはためかせながら降りてくる者の正体。
それは
―――コカトリスであった。
「おわっ、コカトリス!」
(一石三鳥ってところか~?)
どうやらキンが卵を持っているため襲ってきたようだ。
怒っていることがわかるほどの荒々しさであった。
コカトリスが突進してきた。
「うおっ、」
キンは避けた。
「っとと」
「危ねーじゃねえか! 卵が落ちそうだったぞ!」
キンは卵を持っているためあまり俊敏に動けないため後手にまわっていた。
(くそ~、卵を置けさえすれば……)
見渡してみるが卵を安易に置けそうな場所はない。
そんなことを考えている内にもコカトリスの攻撃は止まない。
コケコケー
怒り狂ったコカトリスはくちばしで地面を何度も何度もつついている。
地面にくちばしが突き立つときの衝撃で粉塵が辺りを覆っていた。
(ちっ、コカトリスを見失った)
辺りを見回せども粉塵でコカトリスの姿が見えない。
「おわっ!」
コカトリスが突進してきた。
キンはやっとこさ避ける。
(やろ~、これが狙いか)
辺りに粉塵を舞わせたのはコカトリスの策略であった。
コカトリスはある程度の高い知能を持ち合わせているのだ。
(くそ~これじゃらちがあかねえ)
粉塵が舞い終わる頃にはコカトリスが再度地面をつつき粉塵を舞わせる。
厄介である。
(いいこと思い付いたじゃーん)
キンの頭に素晴らしい考えが閃いた。
それは……
―――天高く卵を垂直に高く飛ばした
当然ながらコカトリスは自らも高く跳躍し卵を手にいれようとする。
高く飛び上がった風圧で粉塵が飛ばされ、辺りに視界が宿った。
キンは鉄パイプを持って構える。
高く跳躍しコカトリスの頭を思い切り叩く、叩く、叩く。
コカトリスは脳震盪を起こし地面に真っ逆さまに落ちていく。
そしてキンは卵を無事にキャッチ。
一件落着である。
「討伐完了」
◇◇◇◇◇
コカトリスの卵とコカトリス本体をようやっと携えキンは温泉にやって来た。
そしてコカトリスの大きな卵をドボンと温泉に入れる。
汗をかいたので自分もスッポンポンになって風呂へドボンと入る。
「ふひ~」
一回目ほどの気持ちよさは得られなかったがやはり風呂はいいものである。
キンは温泉卵が出来上がるまでの間に風呂に入っているのが億劫だったため風呂から挙がりコカトリスの調理お行い始めた。
調理といっても前回と同じで丸焼きにするだけなのだが……
だが丸焼きだからこその旨味がある。
じっくりと中まで火が通るまで待つこと約一時間。
もう、温泉卵も出来上がっている頃だろう。
◇◇◇◇◇
ドンッ
大きな葉っぱの上に殻をあらかじめむいておいた温泉卵と丸焼きコカトリスを置く。
葉っぱは皿がわりにとってきたものだ。
まずはシスタに食べさせてあげようと体の主導権を渡す。
「まあ、こんなにとってきたんですか!?」
『まあな』
「大変だったでしょう…」
『そんなことはどうでもいいから食え、食え』
「そうですね、いただきます」
ガブリとまずはコカトリスにむしゃぶりつく。
安定の美味しさである。
前も食べたためあまり驚きはなかった。
キンと協力してものの30分ほどで食べきった。
ほとんど、キンの尽力の賜物であるが…
さて次はおまちかねの温泉卵だ。
心なしかキラキラと輝いているように見える。
「キン、本当に食べられますのこれ?」
『いっぺん食ってみな、あまりのうまさに飛ぶぞ』
パクリ
温泉卵を食べた。
瞬間、走馬灯のように存在しない記憶が流れ込んで来る。
あまりのうまさに脳がバグを生じさせた。
「決めた」
ポツリと呟いたシスタ
『あん、なにをだよ』
「決めました…」
「コカトリスの温泉卵を私のフルコースに加えます」
いきなりのシスタの変容に面食らうキン。
シスタは恍惚の表情を浮かべている。
コカトリスの温泉卵はシスタのフルコースに決まった!!




