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99. クロードの気持ち

 キャルムは、クロードの側にいるように言うし、クロードはキャルムを待てという。どこまで過保護なんだと思うが、攫われかけた身としては、彼らのどちらかといた方がいいのはわかっている。でも、きままにひとりで出歩くことができないのもつまらないと思っている。

 お店の外に出てみたが、窓の外にいるとクロードが慌てた様子で出てくるのがわかった。


「真由、お店の中にいるようにしてください」


 町に出てきても自由は与えてもらえないことの窮屈さを感じていた。

 

「私はどこに行くのも自由だと思っていたけど、誰かしらついてきて、本当の意味での自由はなくなったのね」

「つまらないでしょうか?」

「いいえ、心から心配してもらえて申し訳なく思っているの。自分のために使える時間を私のために使ってもらっている気がして」

「そう思っているのでしたら、ずっと側にいてください。俺が守ります」


 俺というキーワードに心臓が大きく音を立てた。その言葉が私を落ち着かなくさせている。

 今は執事モードではないということだ。プライベートで守りたいと言われている。

 クロードの気持ちがわからない。

 ずっとマーガレットを思っていながらも私に思いを寄せているような態度を取る。

 真っ当に受け取ってしまうと愛の告白のようにも感じるが、お嬢様として守ると言われているとしたら、それは義務感でしかない。

 クロードはいつも一部の面しか見せてくれない。

 表面上の取り繕った彼の姿、でも、ここ何日かは別の姿も見ることができた。


「クロード、その言葉は誤解を招くよ。違う言葉で表現しないと」

「貴方に意識してもらえるように意図的にやっています」


 まともに受け取ってはダメだと思うけど、嘘もなくまっすぐな瞳に惹きこまれそうになる。


「意図的にやっては、クロードによろめく人が増えそうだね」

「貴方にと言いましたが? 他の人はその中には入っていませんよ」


 これは、決定的な一言を聞いてしまった。今までこの手の話題を避けてきた気がする。

 いつも私とクロードの間には、マーガレットがいた。

 お嬢様として守られている位置が心地よくて、無理やりマーガレットを挟み込んでいた。実際に彼も大事にしていたのがわかる。


「クロード……」

「貴方が誰を思っているのかわかっています。でも、今だけは俺だけを見てほしい」


 彼の揺るぎない瞳は、私の心まで透かして見ていそうで居心地が悪い。

 

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