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81. 意外な伏兵

「カイ、二人をどうやって連れてきたの?」


 小さな声で聞くけど、カイはどうだいというようなドヤ顔をして、猫らしくニャーとかわいらしく泣いただけだった。

 あまりのかわいさにカイだということを置いといて、頭の上を撫でまわす。


「真由、どうしたの?」

「アンナとお母さま」


 抱いていた猫を下におろす。

 左足を後ろに引くと、スカートの裾を少し持ち上げ、相手の顔を見たままでお辞儀をする。アンナは満足そうな顔をする。何度となく一緒に練習したのだ。彼女の顔を見れば、このお辞儀の評価がわかる。


「お父様にご挨拶をと思い、ここまで来ましたが、お忙しいの一言で中に入れてもらえないの」


 会いたいのに会えない。そんな気持ちをこの母だったら、推し量ってくれるはずだ。


「まあ、マーガレット。それはいけないわ。ドアを開けなさい」

「でも、奥様。今、伯爵は」

「いいから、開けなさい。娘が会いたいと言って来ているのよ。それ以上の大事な用事がどこにあるの?」


 いつも会っている親子だったら、これは許されないかもしれない。

 ドアは呆気なく開き、中には予定通りの人物とコスツス伯爵がソファーに座っていた。

 クロードは、ドアの内側に立っていた。


「マインスター伯爵」


 アンナは慌てた声をあげてお辞儀をした。彼女に習って同じ動作をする。

 マインスター伯爵は、打ち合わせ通りにとでも言うように私を見つめるとウインクをする。そういう合図はいりませんとばかりに視線を逸らせる。


「コスツス伯爵、お許し頂けるならマーガレットさんと一緒に庭を散策したいのですが」


 ちょっと打ち合わせ通りすぎる。不審に思われていないか、コスツス伯爵を見る。

 眉を寄せて、娘たちの不作法を非難しているようだ。

 ここまで予定通りだ。

 コスツス伯爵は、仕方がない様子で頷いた。それは肯定と取ってもいいようだ。

 マインスター伯爵と向かい、お互いに丁寧なお辞儀をして、彼の手を取る。ここまで順調に行ったようだ。

 

「真由、あなた、それでいいの?」



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