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8. クロードの秘密

「どうしても聞きたいということですか」


 ドアのすぐ向こう側から声がした。

 クロードは、ほんの少し開けていたドアに目ざとく気がついた。だが、ドアを開けてしまうとマナー違反ということがわかっているのか、踏み込んでくる様子はない。

 メアリーがそんなことは許さないだろう。でも、ドアのすぐ後ろ側までくるとは、メアリーの手には負えない人物なのだろう。メアリーとの信頼関係はしっかりと目にしているからわかっている。


「部屋まで踏み込んでくるとは、マナー違反ではないでしょうか」

「聞き耳たてるお嬢様の方がマナー違反では?」


 やられた。しまった。言い返せない。

 クロードのくぐもった笑い声が聞こえた。

 クロードは性格が悪い。メアリーと比べると雲泥の差だ。

 この人と言い争っても白旗を上げるのは私の方になりそうだ。

 慎重にドアの横に立っていたはずなのに足元をかすめて何かが走っていった。

 びっくりした拍子にバランスを崩して開いたドアに寄りかかる形になった。開いたドアは留まることをしらず、クロードのところへ倒れ込む形になった。膝をついたクロードに抱き着く形になってしまった。


「お誘い頂いているのでしょうか」


 耳元で囁かれ、ひいっという悲鳴と共にドアの後ろに隠れる。

 ネグリジェのままで、しかもこのひらひらした感じのままで、メアリー以外の人に会ってしまった。これはかなり恥ずかしい。穴があったら入りたい。

 見えなかったがメアリーが頭を抱えている姿が目に浮かぶ。


「クロード、出ていきなさい。まったくあなたときたら、本館でも問題を起こしたのに、今回のお相手は、そんなことをしていい相手ではないでしょう」


 メアリーが強い口調で、クロードに向かって怒っているのがわかる。


「無粋なこと言わないでほしいですね」

「あんたはまったく歪んでいるわよ。マーガレット様が遠くに行かれることはわかっていたことでしょう。それをこんな恋愛ゲームのようなことで、心を埋めないで」


 いたわるようなやさしい諭すような声でメアリーは話している。

 マーガレットは遠くに行った? 行方不明ではなく? 

 アンナの話と違ってきている。

 今の話だとマーガレットいなくなるのは、わかっていたこと。そんな口調だった。

 あともうひとつ気がついたことがある。

 マーガレットが遠くに行くことがわかっていたながらもそばにいた。

 そんな風にも聞こえた。クロードはマーガレットが好きだった。そんなニュアンスのメアリーの発言ではなかったか?

 はっきりと確証はないけれど、メアリーのこの優しい声はさっき私の髪をすいてくれたときと同じような声だ。

 やさしい、それでいて思いやりにあふれた声、鏡越しに彼女を見た瞬間わかったことがある。本当に心配してくれている。

 彼女にだから、異世界から来たということを伏せずに話そうとした。メアリーならわかってくれる。辛抱強く最後まで話を聞いてくれる。

 あの時のやさしさと同じようにクロードのことも心配している。


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