50. 解決のために
「詳しいことはわからない。無理だと思ったけど解決のために行くよ」
「話が早い」
そう言って喜んだのはアルベルト様だけだった。
止めるようにして私の洋服の裾を握ったのは、マーガレットだった。
「マーガレットは、アンナと話をして、あとクロードとも」
クロード、そう言ったところで妖精王の眉が上がった気がしたのは気のせいにしよう。私は何も見なかった。
「真由、行くのはおすすめしません。しかも私の代わりに」
「マーガレット、今だったら、彼らが掴んでいる事実はひとつだけ。マーガレットが帰ってきた。それだけしか握っていないと思う。マーガレットの代役がいることも知らない。だから、彼らに情報が伝わるその前に叩きたいと思うの。それにマーガレットが行くのは無理があると思う」
ちらりと妖精王の方を見て、もう一度マーガレットを見た。
だって、彼は争いごとを好まない。なぜもっと後になって来なかったのかは疑問だが、彼には彼の信念があって、今だというタイミングでやってきたと思いたい。
何もかも先を見通す目を持っているのかもしれない。
あの衣は、ヴァルキュリアに返却してよかったのかとも思うが、もう少し後で返却してもよかった。しかもヴァルキュリアの衣を私が返却するのが目的だったような気がしてきた。なぜ妖精王が持っていたのか疑問だが、それを私に返却させたのかもしれない。自分があたかも持っていなかったかのように振る舞える。
「ヴァルキュリア、お願い。衣は返してしまったけど、もう少しつき合ってくれないかしら?」
「そのつもりだ。死人が出るかもしれない。だから行く」
嬉しそうなヴァルキュリアの顔。そうだ。彼女は戦った人の亡骸をヴァルハラへ連れていく役目がある。いつもの手順だったら、死人が出てから彼女が召喚される。
今回はイレギュラーな出来事になったが、やる気になっている人を止める必要もない。




