48. エイヴァ
「マーガレットが二人? また私は騙されたの?」
小さくつぶやくような声は、狼の吐息で飛んで行ってしまいそうなほど柔らかな藁の家のような脆さを感じた。このお嬢様は、話を聞くのが苦手な人で自分の世界にこもってしまう。そんな方なのかしら?
「マーガレット、名前を呼んであげて。彼女、そうしないと自分の世界から戻ってこない」
「エイヴァ」
その名前を呼ばれた瞬間、彼女の瞳が焦点を帯びてマーガレットをとらえた。
「結婚式に呼ぶことはできないけど、結婚したら会うことも難しくなるけど、手紙を書くと約束をしたわよね? 何通か出したのにあなたに届いていないの?」
「手紙? マーガレットからの手紙?」
まただ。焦点が定まっていない。何かおかしい。
「マーガレット、これ以上は彼女に伝えるのは難しいかもしれない」
妖精王が囁くように彼女に伝えた。
エイヴァの瞳には、マーガレットが映っているのに、自分がどこにいるのかもわかっていないようだった。
「薬だろうな。しかもよくない方の薬を処方されている。こんなにも自分を保てないということは」
バートンさんがひとり、ひきずるようにして黒いローブの男を連れてきた。
エイヴァの表情を確認して、焦点が定まっていない瞳を見て確信したようだった。
「何を処方したのか教えてもらおうか」
「私は何も知らない」
「知らないとは言わせねぇよっと」
男の顔を殴るとメアリーが痛そうに顔をしかめた。
「バートン、それ以上はもうやめて」
バートンの腕にしがみついてもう一度殴ろうとしている拳をおさめさせた。
その様子を見て、メアリーをずっと見ていた男は言った。
「あんたみたいな人が俺にもいたら違っていたのかな」
「エイヴァさんに処方された薬、教えてもらえますか?」
メアリーが尋ねると彼は言った。
「幻覚剤だ」
「幻覚剤の種類は?」
「わからない。わからないが即効性があるものでずっと幻覚を見るものだ」
「彼女とはどうやって知りあった?」
バートンさんが尋ねると黙りこんでしまった。




