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47. 友達

 今までは話していたはずの黒づくめのマントの男は、後ろから何か衝撃があったようで、いきなり倒れ込んだ。

 男が倒れた後ろにはメアリーがいた。


「油断大敵です」


 粉々に割れた陶器が目に入る。

 私とマントの男が話し込んでいる隙を狙って、後ろから持ってきた物を振り下ろしたということがわかった。


「メアリー、屋敷にいたんじゃなかったの?」

「真由とカイが走っていくのが見えて、一緒に後を追いました」


 こういうことがあるということが想定されて、あの屋敷は建っている。それをぼんやりと考えていた。


「お屋敷で震えているよりも何かできないかと思って、花瓶をひとつ無駄にしました。でも、彼の頭蓋骨が無事であることを祈ります」


 勝手に侵入してきた人のことまで心配しているメアリーは、どこまでも誰かの気持ちに寄り添っている人なのだと感じた。

 二人の男性がお嫁さんに欲しいと思うのも無理はない。

 粉々になった花瓶が目に入った。

 そしてたくましい。


「一緒にお屋敷まで戻りましょう」


 お屋敷に戻ろうとメアリーと手をつないだ。

 でも、屋敷の敷地内の少し離れた大きな木の下に立っている人が見えた。

 いきなり目の前に現れた妖精を見つけて驚いた。


「どうやら片付いたようだな」


 のんびりした口調で物見遊山といった感じだ。その口調で彼は知っていたのだとわかった。それに気がついたときに少し嫌な気持ちになってしまった。

 マーガレットと二人で手を繋いでいる風景を見た時に彼女の幸せな様子がわかった。素直によかったと喜べるような状況なら、私も手を振りながら走っていっただろう。


「妖精王、まだ新月の夜ではありませんよ」

「片付いたからな」

「妖精王、このことを知っていましたね」

「ああ、だから役に立っただろう」


 何のことだろうと首をかしげていると彼が指さした先にヴァルキュリアがいた。

 あの虹色に輝く衣をバスタオルと勘違いして使用して持って帰ることも想定していたというのだろうか。

 私が持ち帰った白鳥の衣は、ヴァルキュリアの衣であり、それは彼女を従わせるには十分な物だった。

 それを妖精王に返すというのは、違う気がした。

 ヴァルキュリアは、自分の衣を探していた。


「ヴァルキュリア、これ返すわ」


 白鳥の衣を差し出した。


「約束の物だ」


 ヴァルキュリアが差し出したものは、ぐるぐる巻きにされた黒いローブを着た人だった。深く被ったフードをとると悲鳴を上げたのはマーガレットの方だった。

 フードの下の彼女は、三つ編みをして目立たない恰好をしていた。


「どうして?」

「あなたの能力は、あなただけのものではないとお伝えしたはずですが」

「でも、ずっと友達だった」


 友達ということはどこかの令嬢ではないのか。それをこんな風に捕まえて問題にならないのだろうか。


「私はあなたと友達だったと感じたことはありませんでした。結婚すると聞いたときも招待してもらえなかった」


 ああ、そうか。妖精王との結婚式は秘められたもの。見えるものにしかわからない。だから、ひっそりとお友達にも伝えないままだったのではなかったのか。


「それは違うと思う。マーガレットは友達だと思ったから、結婚のことを伝えた。誰も結婚式には出席できない。だから、普通は言うべきではなかったのにそれを伝えたということは、特別だったからではないの?」


 あー、しまった。初対面だったのに黙っていられなくて口を挟んでしまった。


「自己紹介が遅くなりました。真由と申します」


 深々とお辞儀をしてしまった。あっとこれは日本風だった。



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