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27. 夜風

 お風呂でさっぱりした後に、バートンさん特性のしょうが湯にはちみつをたっぷり入れて飲んでいる。

 バートンさんは目を合わせないようにしているし、メアリーも気まずそうに下を向いている。

 カイさんはにっこりして、一緒に同じものを飲んでいる。


 クロードは「寝る」と告げると部屋に戻ってしまった。彼は一週間の週末だけ家に帰っている。バートンさんは、護衛兼料理人なので町まで帰る暇はないらしい。カイさんも朝早くから働くので完全な住み込みということがわかった。


 お風呂後のドライヤーがないために、マーガレットの部屋のベランダで夜風に当たって乾かそうと思ったが、メアリーに止められた。


「部屋の中は蒸し暑いし、少し外に出て髪を乾かしたいなぁと」

「ちょうどいい場所がありますよ」


 そう言って案内された先がキッチンだった。キッチンに少し火が残っていて、夜風が少し感じられる空間のために今の季節は心地がいい。四人で座ってお茶を飲んでいた。メアリーが選んでくれたドレスは、少し緩めのハイウエストワンピース風だった。人前に出るのには、少し緩すぎるお洋服みたいで、そのドレスで涼みに来ていた。お部屋でもよかったのだが、ベランダに出るとメアリーが心配するのでみんなのいるところならということでお許しをもらったのだった。

 

 厚手の毛布が落ちて裸を見られた後だったので、みんな気まずくなっていた。

 空気が読めない人がひとりいるが、それは仕方がない。猫だしな。勝手きままで自分の思うとおりにしか動かない。


「あのバートンさん、メアリー、起きて待っててくれてありがとう。みんな起きてくれていたので、無事に帰ってくることができました」


 まだ畑の中で倒れていてもおかしくなかった。 

 顔を上げた二人とやっとのことで視線が合った。バートンさんは、テーブルに肘を立てて、手で頬を支えていたのをやめると、きちんと座り直す。


「アンナ様が来たら、今度から用心しろよ」


 少し身を乗り出したバートンさんから注意される。


「無事に帰って来れてよかった」


 メアリーが涙ぐみながら、手を伸ばす。彼女の手を握手して握り返すとほっとしたように笑う。


「今度は紅茶を用意しましょうか」

「あとでいいよ。メアリーここにいて。話したいことがあるの」


 お茶の用意をしようと立ったメアリーが座りなおした。


「マーガレットに会えたよ。新月の夜に妖精王と帰ってくる約束をしたよ」

「本当に会えたのか! すごいな! 大胆なことをやったな」

「お嬢様、その手に見えるのは、約束の印ですか?」


 メアリーが目ざとくみつける。


「えっと」


 どう説明したものかとカイさんの方を見る。その視線に気がついた二人がカイさんを探るような目でみつめる。

 みんなにみつめられて、さすがに空気が読めないカイさんでも何かまずいと気がついた様子だった。

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