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122. 王の誕生2

「妖精王の印を持っていてもあいつは人間だ」


 白色とグレーの毛並みのクロウと呼ばれる猫が一歩前に進み出る。クロウに反発したくなるのは、クロードと名前が似ているからだろう。


「妖精王が言うには、人間に変身できる猫が少なくなったと言っていたなぁ。クロウ、お前は変身できるのか?」

「……必要ない。今までそんな条件はなかったはずだ」


 詳しい詳細は聞いていない。これ以上のことはわからない。

 

「昼間は人間の恰好でいて、夜は猫に戻る。それができるのが猫の王の条件だと」

「奴がそれができた……」

「不吉な……」

「百年以来だ」


 百年前にその条件に見合う猫がいた。でも何か不吉だと言われている。

 妖精王は相変わらず肝心なことは話さない。教えてと頼んだとしても何かを引き換えにしないと口を開かない気がした。それはきっと自分が大切にしているものが対象になる。ひどい時は人と引き換えにとか言いそうだから、妖精の前では迂闊なことは言えない。

 周りを黙らせるために黒猫の姿に変身する。

 猫たちの中でもひと際大きな猫の姿は、それなりに効果があったらしく、猫たちはお互いの顔を見回して頷き合った。


「王の誕生だ!」


 一匹が感極まって声を上げる。その声に合わせて、一匹の茶トラが挨拶に来る。


「おめでとうございます」


 それに合わせて、次から次へと挨拶が始まる。

 緊張感のあるにらみ合いからのお祭りモードへの変化の速さに驚いた。

 カイに背を向けて帰る存在が一匹だけ、先ほどのマンチカンのクロウだ。

 クロウが王になることが決まりかけていた時、俺が割り込んでしまった。免罪符のように妖精王の懐中時計を持って現れたのだ。この懐中時計は、苦労せずに手に入れたモノ。それはいつか返還しなければならない瞬間が来るような気がした。

 

「クロウはどんな条件で王候補に選ばれた?」


 先ほどの茶トラを捕まえて聞く。


「奴は体は小さいですが、生まれながらの気品と好奇心の強さ、走ると馬みたいに早いこと。知恵が回る。この三点が重要視されました」


 俺の場合は、妖精王の保証付きといったところだけだ。あの王は、俺に何をさせたかったのだろう。今考えても答えはでない。

 きっと未来になって答えはみつかるのだろう。


「王、彼らはどうしましょう?」


 猫たちに囲まれている人間ふたり。クロードと女性がひとり、女性の方は顔を隠すようにしてフードを被っている。


「人間代表で猫の王の立ち合いに来た者たちだ。放っておけ」

「猫の集会を見た者は、無事に帰れない。それが鉄則です」

「彼らは特別だ。俺の友人であり、命の恩人だ。皆に言い聞かせておけ」


 クロードの隣にいる女性のフードから零れる茶色の髪がなぜか懐かしい気がしたが、その気持ちが何かわからないまま、視線をそらした。

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