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117. 来るべき時

 ヴァルキュリアが現れた夜。

 妖精王から渡されたのは、懐中時計。緑色の本物の蔦が這っている感じがして、とても美しい。まるで生きているかのようだった。


「来るべき時が来るまで持っていろ」

「来るべき時って?」

「今はまだ知らなくていい」

 

 この懐中時計の重みが嫌な物に感じられた。

 虹色の衣を取り返すために、ヴァルキュリアが召喚され、畑の真ん中に透明の馬にまたがっていた。

 あの時のように何かが起こるのではないかと勘繰ってしまう。

 アイテム的な物が絡むとき、何かが起こる。

  

「「行こう」」


 バートン、クロードが声をそろえて、真由の方を向き、敵の印である黒のマントを羽織っている。一緒に行くにはマントの数が足りない。

 俯いて下を向きかけたとき、背中を押される。


「おまえにはおまえしかできない役割があるだろう」


 妖精王のつぶやきにも似た言葉に反応をして、黒猫の姿になる。

 猫はどこの路地で出くわしたとしても誰も気に止めない。

 持っていたはずの懐中時計は、小さな金色の鍵の形をした首飾りになった。

 真由の所に走っていくと参戦が認められた。


 アルベルトが「やれ」と口パクをしたとき、その意図がわかった。

 マユが悲鳴を上げる。

 それだけでいい場面で、彼女の勘は全然働かなくなった。

 天井にいる蜘蛛が上から振ってきたら、誰だって悲鳴を上げそうだ。

 そう思って、蜘蛛を狙い、後ろ足に力を入れる。

 猫は自分の五倍はジャンプをする。天井まで十倍はありそうだった。実際に飛ぶと天井まで届いて、蜘蛛を銜えて、そのまま真由に放っていた。


「きゃー!」


 真由の悲鳴が聞こえたことで成功したことを知る。

 あの瞬間から、俺が黒猫でいなくてはならないことの意味と真由の手にある約束の印のことをずっと考えていた。

 レオポルトが自分の所に来て、妖精王の所に行けと何度も促してきた。

 その度に庭掃除に精を出した。猫の模様にトピアリーしようと木を観察をして、ずっと何時間も考えていたこともある。

 試案された物と違って、うさぎ模様に木を切っていたとき、とうとう春の妖精に掴まってしまった。

 無視していたら、春の妖精はどうなっていたことだろう。

 頭の上にキスしたとき、真っ赤になった真由がかわいらしくて、もう一度キスしそうになった。

 他の人が触れられないのをいいことに自分勝手に振る舞った。

 マーガレットにした間違いを再度繰り返した。

 

「俺はどうしようもない人間だな。間違いだらけだ」

「妖精も間違いを犯す」

「それは妖精王、あなたでもか?」

「騒乱を招かないために彼女を人間界に送ったとき、間違いを犯したことを知った。妖精は人間界に長く留まれる者もいれば、留まれない者もいる。コスツス領主が別邸を建てなかったら、命はなかったかもしれぬ」


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