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112. 騎士の不在

 最初にクロフォード家に来たとき、飾ってある家族写真を見た。

 クロードの母と小さい頃の子ども達の写真、みんな笑っている。

 写真に映っている三人の子どもたちは、今この場所にいる。

 ひとりだけいない存在。

 恋しいと手を伸ばしても抱きしめることができない。


「あとひとり、来ていないよな」


 クロードと揉めながらも毎回足を運んでいた人が現れない。


「カイ、用事があるから来れないと言っていました」

「そうか」


 相槌を打ちながらもバートンは、メアリーの髪を触っている。

 メアリーは、頬を染めながらもそれを許している。

 砂糖がたっぷり入ったお菓子を食べたときのような甘さを感じる。

 幸せの絶頂とは、このことを言うのだろう。

 でも甘い甘すぎる。今の私には目の毒である。


「嬢ちゃんに会う以外の用事がわかんねぇな」

「よくわからないけど、急いでるように見えました、ね?」


 カイの顔を見るだけで、元気が出そうな気がしていただけにがっかりする。

 明日はこちらから出向いてみようと思いながら、懐かしのフェアリーハウスを思う。


「渋っていたが、やっとで動いたか」

「レオポルトさん、それってカイのことですか?」

「うむ」

 

 肯定の返事はもらったが、どこへ行ったのかは何も聞けないまま、食事会が終わってしまった。


「レオポルトさん、カイはどこへ行ったのですか?」

「おまえさんの騎士はいなくなってしまったかもしれんのう。あの時に忠告したじゃろ? 答えは出ているはずだと」


 嫌な汗が背中を流れる。

 カイがいなくなるということを考えたことがなかった。

 何も変わらない毎日が続くと思っていた。

 どうしてそんなことを思ったのだろう。

 両親が突然事故でいなくなり、平穏な日々が突然終わったのを経験していた。

 左手を見ると絆とも言える文様が消えたわけではなく、彼がここに不在というだけだ。

 居ても立っても居られなくなり、席を立つ。


「今から行っても遅いかもしれんがのう」

「クロード、馬車の手配はできない?」

「今からできない。御者は帰ってしまっている。どこに行くのですか?」


 クロードの隣をすり抜けようとして、腕を掴まれる。


「夜も遅い。今からどこかにいくのは危険だ」

「今すぐに行かなければいけないの」

「朝を待てませんか?」

「待てない」


 左手が小刻みに震えだす。

 それが声にも出ていて、動揺しているのが伝わった。

 クロードに両肩を掴まれる。

 

「クロードお願い。きっと今行かなければ、一生後悔する」

「嬢ちゃんが行きたいのはフェアリーハウスでいいか?」

「そうです。フェアリーハウスに行って、カイに会いたい」

「クロード、俺が送っていく。どうせ帰るところだ」

「バートン、おまえはもう少しメアリーの側にいてくれ。今日結婚の申し込みをしたばかりだろう? 俺が行く」


 すれ違いにメアリーを頼んだと言わんばかりにクロードがバートンの肩を叩く。

 バートンもクロードの胸を軽く、手の甲で叩き返す。

 相手の顔を見たのは一瞬で、言葉もなく取り決めが行われた。

 玄関脇にかけてあるフードを私にかぶせてくれる。手を繋がれたまま、外に出た。

 丘の上にある伯爵邸を眺める。

 ここから歩いていくには遠い。

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