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終わりの時間が来た。のだと思う。部屋の扉が開いて、自動で開くような扉ではなかったはずだが、いつのまにか、気がついたら開いている。出なければならない。私がこの部屋に留まる理由はもはやない。理由がないということは留まってはいけないということだ。家に帰れる、その前に外に出なければならない。外は暑い、でも中よりはマシだ。なんにしろ中にいるより外のほうがマシだ。そう言い聞かせて、私は手錠を外す。途中から意識しなくなってたような気もする手錠を急に邪魔なものとして思い始める。余計なもの不要なもの、私にとっていらなくてむしろあると困るもの面倒に思えるものすぐに外したい。鍵はあるから簡単に外せる。さっきまでなんでもないようなものだったのに、むしろ私の体の一部であるかのような、そんな感じ方もしないくらいの、自然なものになりえていたはずのものだったはずなのに。それは言いすぎかもしれないが、でもどちらにしろ、もはやどうでもいいものだ。役目を果たしたということだ。お互いに。多分。そういう関係性だった。という。私と私にかかっていた手錠。