1/10
1
部屋は薄暗かった。そして少し寒かった。身動きすると鎖の擦れる音がなる。おもちゃみたいな手錠をつけて、私はあまり光の射さない倉庫か地下室のようなところにいる。この仕事を受けたのは、お金がないというのはもちろんあるが、安全だと知り合いに聞かされていたからだ。指定された場所で拘束を受けて一日過ごす。他は一切何もなし。接触も撮影もなし。預かっていた鍵で部屋に入り、自分で自分に手錠をかける。こういう仕事をする時、あまり理由とか意味とかを考えてはいけない。私がそれをする、お金が振り込まれる、以上。何も知らなくても、ちゃんと成立している。社会は動いている。むしろ少しでも変だなとかおかしいなと思うとすぐ駄目になる。大抵のことはこれで失敗する。目を閉じて、眠っていることにする。私は眠っている。時間を、何も刺激しないように過ごすために。